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第12話『人獣』④

「カイゼルさん!」

「苦戦しているみたいじゃないか」


 やって来たのはカイゼルだ。既に銀の戦士となっており、戦う準備は万端のようだ。優は正直な気持ち、かなり安堵感が強くなった。目の前のゴリラは結構な強敵であり、彼の力を借りられれば、俄然こちらが有利になるのは間違いないからだ。


「助かります。なかなか手強いですよ、今までになく知能を持っているんで……」

「ついに人間を改造したのか……」

 カイゼルの問いに優は頷いた。


「お前がカイゼルか。不意打ちとは汚い真似をしてくれる」

 起き上がって来たゴリラが、品定めでもするようかのような口調で呟く。

「お前たちに汚いなんて言われるとは心外だ。おしおきしてやるぜ、来な」

 カイゼルは手招きするような仕草を見せる。


「ふざけるなっ」

 ゴリラは憤怒の表情を浮かべて向かって来るが、

「知能があっても冷静さを失えば野獣に等しい」

 カイゼルは軽やかな動きで猛攻を受け流す。その鮮やかさは優も見とれる程であった。


「いいか、こういう相手にこそ、冷静に立ち回る事が必要だ」

 カイゼルはゴリラをあしらいながら優に諭すように言い放つ。まさにお手本のような戦い方で、現代の忍者となった優が目指すべきものだ。


「おのれっ」

 ゴリラの大振りのパンチにカイゼルがカウンターの右ストレートを浴びせた。ゴリラの巨体がもんどりうって後方に転がっていった。


「一気に行くぞ」

「はいっ」

 カイゼルの合図に優が頷く。二人は起き上がろうとしているゴリラに向かっていき、同時に飛び蹴りを繰り出した。カイゼルが全身を輝かせて放つキックと、優のマッハキックのツープラトンキックだ。


「そうはいかん」

 そこへ突然出現した者がある。優の父・マインズだ。いきなりゴリラの背後に現れ、標的となっている奴の肩を掴むと、一緒に消え失せた。対象を失ったツープラトンキックは不発に終わり、優とカイゼルは着地した。


「それを食らったらおしまいなんでな……」

 二人の後ろにマインズとゴリラが姿を現す。以前と同様、瞬間移動したのだろう。狭い室内で四人が対峙する。すかさずゴリラが飛び掛かってくる。カイゼルが前に立ってそれを受け止め、ボディに強烈な蹴りを見舞った。


「やはりお前が邪魔だな、カイゼル」

 今度はマインズが近寄って来る。機先を制してカイゼルが右ストレートを放つが、マインズはそれを受け止めた。


「頑張るんだな、優」

 そう呟くと二人の身体が消失した。またも瞬間移動を使ったのだろう。カイゼルが何処かへ連れ去られてしまった。ボロボロの室内に残ったのは優とゴリラだ。


「独りぼっちだなぁ……あいつがいなければお前は何も出来まい」

「そんな事はない。今から俺がお前を倒してそれを証明してやる」

 ゴリラの挑発に優が反発する。言葉の通り、先程までとは異なる自信が芽生えていた。


「ぬかせぇ~っ」

 ゴリラが襲い来るが、優はこれを腕と足運びで受け流した。


「さっき、カイゼルが教えてくれた。俺はお前の強さに驚き、自分をも見失っていた……」

 呟きながら優は華麗にゴリラの攻撃を捌く。ゴリラの圧力は相当なものだが、優は風のようにそれを受け流している。


「忍者の目指すべき動きがこれだっ」

 優はゴリラが繰り出してきた右ストレートに頭から突っ込み、寸前で剛腕をかわすと同時に右腕を振り抜いていた。ボクシングで言う、ライトクロスカウンターだ。優の一撃は見事にゴリラの顔面を捉え、後方に吹き飛ばした。

「カイゼルが教えてくれた。冷静に勇気を持って戦えば、決して負ける事はない」 


「調子に乗るなぁっ」

 ゴリラのダメージはさほどでもないようで、起き上がってきた。


「今の感じで締めをマッハパンチにすれば勝てる!」

 優は戦い方に手応えを得ていた。冷静に相手の攻撃に対処し、決めるところを決める。これがしっかり出来ていれば、多少パワーやタフさで上回る眼前のような相手にも対応可能なのだ。

「自分を見失わない事……まさに忍の極意だ」



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