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第12話『人獣』①

 カイゼルと別れた優は研究室へ戻った。咲が待っていて、すぐに栄養ドリンクと軽食を出してくれた。SINOBIスーツの着用がエネルギーの消費が激しい事に気付いての配慮のようだった。優は入れるものを入れると、またソファでぐったりとした。


 咲も通信で風間と速水学長の正体を知ったようで驚いていた。怪しいと思っていた風間がまさかカイゼルだったとは。そして、速水学長がウォーグに殺されていたとは。戦っている相手が人間じゃないのは承知しているとはいえ、知っている人間が殺された事実はやはり二人にはショックであった。


「咲、すまない。スーツの補修を急いでくれないか」

「もう~。あれだけの戦いをしてきてまだ戦う気満々なんですか?」

「そりゃそうさ。一応はウォーグにも通用したのだからな。まだまだやれる実感が湧いた」

「懲りない人ですね~」


 呆れ顔の咲だが、流石に優の性格は把握してきたと見えて、不平を言いながらも対応してくれていた。


「結構派手に壊されましたね」

「すまんな」

「大丈夫です。このくらいなら応急処置出来そうですよ。先輩は休んでいてください」


 優は準備良く寝床を用意しておいてくれた咲に感謝するしかなかった。そして、安心して眠りに就いたのだった。



 目が覚めた時には頭も身体もスッキリしていた。少しはSINOBIスーツに慣れてきたのではないかと思い、優は自分のやってきた事が間違いではないように感じて安堵した。目覚めたのに気付いたようで咲が近付いてきた。


「起きたんですね」

「ああ。ありがとう。だいぶスッキリした。新スーツに身体が慣れてきたんじゃないかな」

「何だか調子良さそうですね。良かった。先輩の身体がずっと心配で……」

「もう大丈夫だ。心配掛けたな。で、スーツは?」

「直しておきましたよ」


 咲がスーツとマスクを手渡してくる。優はその場で装填してみて、感触を確かめた。


「うん。完璧だ。さすがサポーター」

「でしょ。私だって努力してるんですから」

「大したもんだ。よく修復してくれている」


 優はスーツを触りながら見回す。完全に直っている。それを確かめると、出口の方へ足を進めた。


「ちょっと先輩! 何処へ行くんですか」

「ちょっと学長室跡を見に……な」

 引き止められた優は苦い表情を見せた。


「勝手に行かないでくださいよ」

「じゃあ行ってくるから頼むな」

「あっ」


 優は有無を言わさずドアを開けて外へ出た。咲に言えば止められるのはわかっていた。だから、あえてさっと抜け出る方法を選んだのだ。


 事務局等の周りは相変わらず警備が厳しくなっていた。来る前に調べたが、ネットニュースにも「N工業大学長室で爆発事件、詳細は不明」と上がっており、警察が群がるのも無理はない。


 例によって優はスーツを纏い、透明になって警官の群れを潜り抜けて上層を目指した。エレベーターのあたりは警官が沢山いた為、今回は階段を使った。各階に一人立っている程度で、階段付近の警備は甘かったのだ。厳粛な顔で立っている警備員も透明な姿で通り過ぎる優には気付かなかった。優は階段を飛ぶように駆け上がった。スーツの効能か、普段であればトレーニングのような階段上りも、さほど息切れする事もなく最上階まで辿り着いた。


 最上階は酷い有様だった。あのウォーグのエネルギー波で天井は破壊され、壁も崩れてボロボロになっていた。


「ん?」


 優は歩を進めて異変に気付いた。警備員が倒れている。優は透明のまま近付いた。警備員はぴくりとも動かない。暴行でも受けたようで負傷しており、心臓は止まっていた。



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