第11話『正体』③
優は風間の言葉が信じられず、目を見開いて速水を見た。既に立ち上がっており、壁にぶつけられたダメージなど微塵も感じさせない。
「くっくっく。さすがだな。すぐに我の正体を見破ったか」
「お前のニオイはすぐにわかる。強烈な悪のニオイだ」
「いいニオイだろう? 忘れられない良い香りの筈だ。ふんっ」
速水は気合一閃全身からオーラを発し、人の皮を脱ぎ捨てた。速水学長の顔が歪んでひしゃげて破裂して、中から姿を現わしたのは、風間の指摘通り、あのウォーグだった。
「ウ、ウォーグ……速水学長が……」
優の全身に緊張感が走る。新スーツを纏ったとはいえ、まだウォーグ相手に通用するかは自信がなかった。それと速水学長と接していた時間が何度かあった事を考えると、知らなかったとはいえ、戦慄を覚えた。
「風間……あんたは……」
「それも気付いてなかったようだな。安心しろ、奴がウォーグでも簡単に好きにはさせん。ハッ!」
掛け声と共に風間の姿が光に包まれる。銀色の輝きの中から姿を現わしたのはカイゼルだった。
「やはりか……。そうでなければ我の正体など見破れぬわな」
「敵を欺くにはまず味方からってな。が、ちょっと引っ張り過ぎて失敗だったようだな」
カイゼルが優の方を見て言う。
「酷い……ですよ、こりゃ。けど、これで勝ちの目も見えて来たかな」
優は立ち上がった。ウォーグを前に恐れおののく気持ちが強かったが、心強い味方が隣にいる事がわかり、勇気が湧いて来た。
「そういう事だ。行くぞっ」
「はいっ」
優とカイゼルは身構えて同時にウォーグに飛び掛かった。ここ数回の戦いで呼吸が合うようになったのか、自然と身体が動いていた。
「小癪な……」
ウォーグは豪拳を振るって来るが、二人はそれをかわし、脚に腹に攻撃を命中させた。新スーツがカイゼルの動きを把握し、完全に同調していた。
「ぬうっ」
ウォーグの攻撃を的確に避け、二人は次々に攻撃を加える。ついにはカイゼルの放ったミドルキックがどてっ腹に入り、ウォーグの身体を吹っ飛ばした。
「くっくっく……」
ゆっくりと起き上がったウォーグは笑っていた。
「何が可笑しい」
「確かに大した連携だ。我にここまでやるとはな。だが、もう通じぬ」
「強がりを言うなっ」
カイゼルの叫びと共に再び二人の連携が繰り出される。確かに攻撃は命中した。しかし、ウォーグは優の右ストレートを顔面に食らいながらその腕を捕まえた。
「お返しだ」
ウォーグはそのまま怪力で野球のピッチャーが投げるかのように優の身体を投げ飛ばした。勢いには抗えず、優は頭から壁に激突した。
「くうぅっ……」
何とか立ち上がる優。
「オイ、大丈夫か」
「何とか……」
「気にせず行くぞっ!」
「おう」
再度、二人の攻撃が寸断なく繰り出される。カイゼルの蹴りが胸板を捉え、少し遅れて優の前蹴りが腹に入ったが、先程と同じくウォーグは食らいながらも蹴り出された優の脚をキャッチした。
「言った筈だ、我にはもう通じぬと」
ウォーグの剛腕が優の顔面に入った。脚を掴まれている為、逃れる事が出来ない。
「放せっ!」
カイゼルが飛び蹴りを放って来て、ウォーグは優を放してそれをかわした。だが、優のダメージは深刻だった。今の一撃でマスクが破壊されたかも知れない。
「ううっ……」
優はよろめきながら何とか立ち上がる。
「そういう事か……」
「カイゼルさん、何故、俺の攻撃が……」
「奴はお前の攻撃を食らってもいい覚悟で受けているんだ。俺の攻撃と比べて一撃が弱いと判断してな」
「ご明察……。さすがカイゼル、その通りだよ。お前の攻撃は弱いのだ。確かに連携で我に当てる事は出来ても、我ならばそれを受けた後に捕らえる事は容易い」
ウォーグが優を指差し、蔑むように言い放った。そしてゆっくりと近付いて来る。
「下がってろ。これ以上は危険だ」
カイゼルが前面に出て、優を庇う。しかし、優はあえてその前に出た。
「いや、やらせて下さい。ここでやらなきゃ何の為に新しいスーツを開発したのか、意味がない」
「しかし……」
「もう一回合わせます。お願いします!」
優の言葉にカイゼルは頷く。
「何をごちゃごちゃ言っている。次で終わりだ!」
ウォーグが距離を詰めて剛腕を振るって来る。カイゼルと優はもう一度動きを合わせて連携を取る。カイゼルの蹴りがウォーグの豪拳を払い、優が顔面にパンチを入れんとする。ウォーグは笑みを浮かべていた。また優の攻撃を食らいながら捕まえるつもりなのだ。
「ナメるなっ! マッハパンチ!」
優の一撃が瞬間的に爆発的な速さでウォーグに命中した。予想だにしない攻撃で、ウォーグを壁までぶっ飛ばした。
「考えたな。しかし、そう何度もやれないだろう……」
「ええ。でも、やれる限りは奴にぶちこんでやりますよ」
「そういう捨て身の発想、嫌いじゃないぜ。ならば、お前が壊れる前にケリを付ける。剣で行くぞ」
「はいっ」
優はレーザーブレードを取り出し、青白い光を発出させた。確かに剣ならば受けられる事もない。同様にカイゼルも己の刀を抜いた。それはまさに刀と言うに相応しい刀剣で、優のレーザーブレードと違い、しっかり剣の形状をしており、そこに銀色のオーラが漲っていた。
二人は同時に飛び掛かり、剣を振るう。受けてはならない事がわかっている為、さすがのウォーグも下がりながら剣先をかわしている。
「こいつは面倒だな……、しかし!」
ウォーグは一度後退すると、腕をクロスするように合わせた。そして、その十字を解くと同時に赤いオーラを発した。
「ぬおおおっ!」
禍々しい赤いオーラがウォーグの身体を中心として渦を巻く。
「マズい、下がれっ」
カイゼルの指示で優は後退しようとするが、
「もう遅いわ!」
ウォーグの全身から赤いオーラが噴出され、二人の身体は吹っ飛ばされた。二人の身体だけではない、建物そのものがオーラの威力で破壊され、二人は宙から落下した。




