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第8話『見守る気持ち』①

 胸高鳴るような気分と緊張、その両方が咲の心中にあった。迫川先輩の父がマインズと名乗るウォーグの手下になっており、先輩自身が戦っている事を知られてしまった為、家を出なくてはならなくなったのだ。一先ず向かう事になったのは咲のアパートだった。


「すまんな」


 先輩はそう言ったが、咲は嬉しくもあり、不安も感じていた。何せ広い迫川家と違い、1LDKのアパートだ。部屋も別ではなく一緒になる。二人の距離もより近くなる訳で緊張しない筈がない。


「あの……先輩、私の部屋、1LDKしかないんですけど……」


 一応そうは言ってみたものの、先輩は「すまんな。迷惑を掛けて」としか言わなかった。咲と同じような心配はしていないようだった。もっとも今は父親の事でショックも受けているだろうし、切迫した状況であり、先輩がそんな事に気が回らないのは当然かも知れない。これでは咲の方が能天気と思われても致し方ない。


 とはいえ、深刻度は低いのかも知れないが、急に生活環境が変わるのはやはり切実な問題ではあると思う。嬉しい半面、緊張度が増すのは相応にストレスを感じる。


 もう外も真っ暗な中、二人は咲のアパートへ着いた。荷物は車に色々と積んで来たが、ここだって風間には知られているかも知れず、あまり安全とは言えないので、ひとまず必要な荷物だけ降ろした。


 二人でリビングの小さなテーブルを囲んで座ったが、やはり狭い感じがする。先輩もやっとそういう状況に気付いたのか、何だか落ち着かない様子だ。


「明日、家を探してくるよ。ここだって安全かどうかはわからないからな」


 と言ったのも案外照れ隠しからかも知れない。心なしか先輩が照れているように見えなくもない。一緒にいて、少しそういうのはわかるようになった。


 さすがに二人共疲れてしまい、食事はすぐに食べられる物で済ませ、順番にシャワーを浴びた。家で風呂に入るのとは違い、狭いアパートではこういうのも気になる。先輩は先にシャワーを使うように言ってくれたが、待っているのも待たれるのも何だが気恥ずかしい。


 その夜は少し今後の話をした後、咲は自分のベッドで、迫川先輩は床に寝袋を敷いて寝た。一緒の寝床に入ろうとは、咲も言い出せないし、先輩も言わなかった。


「先輩、大丈夫ですか?」

 咲は落ち着かず尋ねたが、

「ああ。心配するな」

 先輩はそう答えるだけで、すぐに寝息を立てて深い眠りに落ちたようだった。一方、咲は二人で狭い部屋にいる事が気になってよく眠れなかった。


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