第7話ー④『愛の力?』
どうしてこんな事になったんだろう。怪物に襲われる事になったのは勿論だけど、あの迫川先輩と同棲しているなんて本当に信じられない。とんとん拍子に話が進んで行き、いつの間にか一緒に暮らしている。そもそも接点なんて全くなかった。
とはいえ、この道を選んだのは私自身だ。怪物に遭遇した時は本当に怖くてとても一人でいる事は出来なかったし、先輩を頼るしかなかった。必然だったかどうかはともかく、どうしたって今に至るのだと思う。
先輩といる今の状況を後悔はしていない。ただ、あまりに急展開過ぎて自分でも驚いているだけだ。運命……なんて言い過ぎのようにも思うけれど、もしかしたらあるのかも知れない。工学系の大学へ進んだ時点で、こうなる事は決定付けられていたのかも……
こんな風に思うのも、今起こっている事があまりに劇的過ぎるからだろう。宇宙からの怪物が出現して、先輩が自作のスーツを纏って戦い、私を守ってくれている。まるで映画のような展開で、何だか夢を見ているようにすら感じる。工学系女子らしからぬ少女漫画的な発想かも知れないが、先輩との出会いには運命的なものすら感じるのだ。
いや、運命なんて言い方はまどろっこしい。正直な胸の内を言えば、私は先輩の事が好きになってしまったのだ。傍から見るとただ気難しく厳しそうに見えた迫川先輩にあんな背景があったなんて。先輩と共に過ごして色々な話を聞く内に、私は惹かれて行ったのかも知れない。話を聞いて、私が支えなければと思ったのは間違いない。
だって、先輩の境遇は過酷過ぎるし、一人にしておいては危う過ぎる。理解する人がいて、助けてあげないと、先輩は自らを追い込んで行ってしまうだろう。私はそれを止めないといけない。同じ時間を共有する内にそんな感情が芽生えてきたのだ。
勿論、そんな使命感に駆られての気持ちばかりではない。先輩の優しさや温かさに触れて好きになり、恋愛感情が湧いて来たのも事実だ。先輩は私を巻き込みたくないようだが、私はむしろ巻き込まれたいし、先輩の役に立ちたい。そして、先輩が暴走しないよう、ブレーキをかけてあげたいとも思う。先輩には誰か傍にいる人間が必要で、それが私なのだと感じている。
愛の力、そんなものが本当にあるのならば、私はその力で先輩を助けたい。いや、愛の力はある、それが今の私の原動力になっているのだから!
各人物の呟きはここまでで、第8話から通常の展開に戻ります。




