第4話『忌まわしき過去』⑥
優は地面に尻を突きながら、爆炎の中から銀の怪人が立ち上がるのを見た。ふらふらとしており、今の一撃で相当なダメージを負っている事は間違いない。若干、身体の輝きも弱くなっているように見えた。
優は動揺していた。自分が背後にいた為に、銀の怪人は彼を庇って攻撃を食らってしまったのだ。自分のせいで……。しかし、
「オイ! 俺が今食らったのはお前のせいじゃねえ。だから気にすんな!」
乱暴な口調だが、銀の怪人は日本語でそう言った。『お前』というのは、間違いなく優の事だ。
「そして、俺は絶対に負けねえ。心配するな!」
銀の怪人は叫ぶとまた身体の輝きを取り戻し、一躍、ウォーグに飛び掛かった。また、銀と赤の光がぶつかり合う。優には赤い光の方が強い輝きに見えたが、どっこい銀の光も小さいながらも負けずに輝いているように映った。その証拠に、一度銀の輝きが強まったかと思うと、ウォーグの身体が吹っ飛ばされていた。
「す、凄い……」
圧倒的に不利な状況からの盛り返しに、優は鳥肌が立っていた。何より先程のセリフといい、痺れるカッコ良さだ。
銀の怪人は手招きするような仕草を見せ、ウォーグを挑発する。これに怒ったのか、ウォーグは吠えて突進する。銀の怪人はそれを闘牛士のようにかわし、後頭部にソバットを食らわせた。そこからは怒り狂うウォーグをまるで子供扱いだった。次々に攻撃が決まり、ついには膝を付かせた。
「やられてからまた強くなる、こんな凄い戦士がいるのか……」
優は半ば感動していた。一度はやられたかと思ったところからの大逆転を見せる、目の前の怪人に憧れの気持ちすら抱いた。
「俺にも……こんな力があれば」
「グルゥァァッ!」
ウォーグが瞬時に立ち上がり、また襲い掛かる。またも目にも止まらぬ速さで二つの光が激突する。勢いは完全に銀の怪人に移っており、時折、弾き飛ばされるのは赤い輝きであるウォーグの方だった。
そして、一際大きく銀の光が瞬いたかと思うと、ウォーグが10mも吹っ飛んだ。相当強烈な一撃だったようで、ウォーグは仰向け状態のまま、起き上がれない様子だった。
再び銀の怪人が倒れた相手に何やら言葉を浴びせる。ウォーグは降参の意思を示しているのか、両手を広げている。怪人が身体から発する銀の光で優にもその様子が見える。
「%$#)”¥!!」
もう一度キツい口調で言うと、銀の怪人は右手にオーラのようなものを発生させた。剣状になったそれは、ウォーグ目掛けて振り下ろされた。命乞いは受け付けず、とどめを刺す気のようだ。しかし、オーラの剣が達するより前に、
「ゲハハハハ~ッ」
ウォーグは高笑いしたかと思うと、広げていた両手を地面に叩きつけた。すると地震のような大きな揺れが山を襲った。もちろん銀の怪人の一撃はこれで中断された。
「な、何だっ」
優のいる辺りも激しい揺れを起こし、立っていられなかった。
ウォーグは「グゥアァァァァァ~ッ!」と叫ぶと、再び全身から赤いオーラを発し、それを自らの周囲に解き放った。またしても高熱のエネルギーが肌で感じられ、優にもこれはヤバいとわかった。このままでは巻き込まれて死ぬ! 赤い閃光が目に飛び込んでくる。