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第3話『銀の戦士』⑤

「下がってろ」


 新たに出現した戦士が優に言う。優は、腹を押さえながら後退する。


一歩前に出た戦士は二匹に相対した。岩石型は先程同様、岩の弾丸を放ってくる。しかし、戦士は全ての弾丸を腕で薙ぎ払い、足で蹴り払い、ものともしなかった。それどころか、同時に間合いを詰めており、拳が光ったかと思うと、優が撥ね飛ばされた岩の頭を打ち砕いてしまった。


「す、凄い……」


 優はその破壊力に驚き、思わず感嘆の声を漏らした。岩石型は無機質な身体構造だったのか、血のような液体は一切出なかった。顔がなくなり、うろうろと動く岩の塊をよそに、戦士はカメレオン型に向かう。するとカメレオン型は忽然と姿を消した。


 戦士は立ち止まり、周囲を見回す。だが、岩石型がうろついているだけで、カメレオン型は完全に消失していた。だが、間違いなくいる。目には見えなくなったが、優にはマスクの性能で生体反応は感じられた。


 突然、戦士に何かが当たったようで打撃音が響き、彼は一歩後退した。目視は出来ないが、戦士が見えない攻撃に襲われている。おそらく舌なのだろう、死角から何かを伸ばしてきて、何度か戦士の身体を弾いているようだった。


 ダメージはさほどないようだが、戦士に打つ手はないように見えた。優は自分ならば熱源感知で相手を捉えられる自信があった。なので、攻撃に出ようと足を踏み出したが、


「動くな。俺がやる」


 銀の戦士はそれを制止した。動こうとしたのを察知された事に優は驚いた。次の瞬間、戦士は何もない中空へ突き上げるように拳を繰り出した。


「フギャッ」


 カメレオン型の叫びが響き、姿を現した。奴はこの一撃を食らい、数メートル上空に跳ね上げられた。着地した戦士は踏ん張るような構えを取り、落ちてくる相手を見据える。


 彼は次の瞬間、飛び上がって下から蹴りを放った。全身が発光して銀の光が伸びて行き、眩いばかりに空中に線を描く。その線に貫かれるかのように、キックはカメレオン型のどてっ腹を貫通してその肉体を花火のように粉砕し、空へ上がって行った。カメレオン型の身体は、戦士の身体を覆う銀の光に飲み込まれ、死骸一つ残さず消えた。


 何m上がって行ったのか、空中で銀の弧を描いて、戦士は着地した。そして、頭部を失いうろうろしている岩石型の身体に近付き、パワーを集約したのか右脚を光らせ、いわゆるかかと落としを決めた。この一撃で岩石型は木端微塵になった。生き物ではない、岩の塊が辺りに散らばった。


 凄まじい戦闘に優は戦慄を覚えた。あの硬い岩石型の頭を一撃で砕いたのに始まり、透明のカメレオン型を捉えたのは、優のような機械に頼ったものではなく、おそらく相手の気配を察知した動きであると推測された。そして、空中で相手の身体を破裂させる程の飛び蹴り、それも下からの勢いでだ。優の纏っているスーツとは、パワー・スピード共に次元が違う事を実感させられた。


 戦士は優に向き直り、近付いて来た。戦っている最中に雲から現れた日光が、彼の身体に反射して全身を輝かせていた。


「あ、ありがとう。助かりました」


 優は歩を進めて近寄り、頭を下げるが、相手はそれには応えず、脇を通り過ぎて行こうとする。


「ちょっと待って下さい」

 優は相手の腕を掴み引き留めようとする。

「何だ」

「何で無視して行こうとするんです。助けてもらった礼くらい言わせて下さい」

「必要ない。そして、もう関わるな」


 戦士は優の手を振り払った。そして背を向けて去って行こうとする。優はその前に立ちはだかった。


「どうしてそんな事を言うんですか。俺も貴方と一緒に戦わせて下さい」

「俺と一緒に……戦う?」


 戦士は首を傾げる仕草をした。そして、高い声で笑い出した。


「俺と一緒に戦うなんて無理だ。確かに普通の人間以上の能力を発揮できるようだが、相手はこの星の生物の能力を遥かに凌駕しているんだ。君では無理だ」

「そんな……俺だって戦えます! 現に二体を倒してます」

 相手は冷たい態度だが、優は食い下がった。


「知能もないような下っ端の野獣をな。それは確かによくやった。だが、今の二匹程度に苦戦しているようでは、知能を有する敵が出現した時には、君の命はない」

「俺は命なんて惜しくない。そして、絶対に諦めない!」


 優は宣言した。戦うと決めてからその意志は変わっていない。戦士は中世の騎士のようなマスクをしている為、表情は読み取れないが、しばらく優の顔を見ていた。


「命が惜しくない……と言ったな」

「はい」

「だったら、今、この場で俺に力を見せてみろ。俺が認めたなら望み通り、一緒に戦ってもらおう」


 戦士は正対し、右半身を前傾するような構えを取った。殺気と言うのか、それとも闘気とでも言うのか、優にも凄まじい迫力が感じられた。この強者にどう立ち向かえば良いのか。全く答えは出ないが、今は力を示す為に立ち向かうしかない。


「そういうことならば……行きます!」



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