表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/57

第3話『銀の戦士』③

 優も驚いたし、咲が一層強く彼の腕を掴んだのも無理はない。スマホの画面には優が最初に倒した怪物の姿が写っていた。


「これ……お二人も見た事があるでしょう?」

「これって、何かの特殊メイクか何かですか」


 優は黙っては相手に主導権を握られると思い、あえて写真の対象について尋ねる形を装った。しかし、こんな写真を持っている者がいる事に内心驚きを隠せず、暑さ以上の汗が額や背中を流れるのを感じた。


「本気で言ってるんですか? 本当は知っている癖にフェアじゃないですな。私も情報を出しているんだ、そっちも本当の事を話して下さい」

「貴方は私達に何を言わせたいんですか? それに貴方がそれを知ってどうするんですか? 名刺はもらいましたが、探偵とだけ示されても信用出来ませんね」


 優は不信感をぶちまけた。風間はそれでも全く怯む様子もなく笑った。


「あっはっは。そうか。確かにそうですね。私が信用ならんから知っていても喋れない、そういう事ですか」

「笑い事じゃないでしょう」


 優は相手を睨み付けた。しかし、風間は全く動じる様子がない。


「これは失礼。では、少し私の方の手の内も明かしましょう。まず、この件に関して、私に依頼主はいません。私の好奇心で嗅ぎ回っているだけです。いや、亡くなった方もいるので、好奇心なんて言うと失礼になりますね。写真を見せたような生き物が人を襲っているのであれば、放っておけないでしょう。どんな生物なのか、どう対処したらいいのか。そういう話になってくると思いますが」


 風間は真面目な表情で話していた。話を聞いている限りでは、優と思いは似ているのかも知れない。ただ、優には両親を失ったという背景がある。風間が「好奇心」で動いているのであれば、やはり相容れない思いはある。


「この写真ですか? 例のこの大学での殺人事件を調べてたんですが、その時、偶然見掛けて撮る事が出来たんですよ。私は自分の目で見ているので、謎の生き物が存在すると確信しています。だから、その情報を集めたいんだ」

「貴方の思いはわかりましたが、私も彼女も見ていないものをどうお話しろと?」


 優は本当の事を話さないと決めた。今の段階でこの男に真実を話すのは危険であるように思えたのだ。


「そうか。あくまでとぼけようと言うんですな。じゃあ、ちょっとこっちへ来て下さい」


 風間は二人を手招きして前へ進む。駐車場から少し行った辺りの薮で、人気はなかった。そこにスコップが刺さっていた。優はそれを見て思わず声を揚げそうになった。


「今からここを掘りますが、ちょっと見ていて下さいね」


 風間はスコップを手にして土を掘り返し始めた。優の焦りは最高潮に達した。咲もここが何なのか理解したようで、震えているようだった。風間はスーツの上着を地面に置き、よいしょよいしょと声を出しながら地面に穴を開けていく。彼の額からは汗が流れていた。


「そろそろかな」


 数分掘るとスコップに何か当たったようで、風間が二人を手招きした。そして、勢い込んで掘り進めると、中から黒い物体が姿を現した。昨日、優が倒して埋めた怪物だ。


「これ、知ってますよね? 埋めたのはあなたの筈だ」

 風間がスコップで死骸を指す。

「見ていたのか」

 優はさすがに観念した。


「申し訳ない。彼女が第一発見者となってから、少しお二人の様子を探らせていただきました。迫川さん、あなた……」


 風間が言い掛けた時、駐車場の方で何かが砕けるような破壊音と叫び声が揚がった。これには優も風間も即座に反応し、すぐに駐車場が見える位置まで移動した。白昼堂々二体の怪物が駐車場で暴れて、群がっていた人間を襲っていたのだ。


「出ましたな。今度は二体か。こんなに明るい時間から人を襲うとは……」

 風間が笑みを浮かべながら言う。

「風間さん、彼女を連れて遠くへ逃げてくれないか?」

「は?」

「あなた、俺が何をしているかわかってるんだろう。だったら集中させてくれ。彼女を守りながら二体を相手にするのは無理がある」


 優が頼み込むと、風間はしばらく黙って見ていたが、

「わかりました。話も後で聞かせてもらいましょう。ご無事を祈ってますよ」

 と返事をした。


「桜花、今言った通り、相手が二体だ。集中して戦いたいんで、風間さんと逃げてくれ」

「先輩……」

 咲は心配そうな顔をしているが、

「風間さん、頼む」

 と優が強い口調で言うと、風間と一緒に駐車場とは逆の方向に走り出した。




 二人を見送った優は、再度駐車場を見下ろした。暴れる怪物達は逃げ惑う人々に襲い掛かっている。


「さてと……最初から全力で行くぜ。装填っ!」

 優の身体がスーツに包まれ、銀色の戦士と化した。マスクを付けた彼は、スーツで強化された走力を駆使して、一躍、駐車場へ駆けた。


「マッハパンチ!」


 優は駐車場に踊り出るやいなや、女性の身体を食い千切らんとしていた怪物の後ろ頭に必殺のマッハパンチを繰り出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ