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50/50

50:顔は違えど、その手は同じ




「電波障害と停電から復旧したようです……ドラゴンは穏やかな状態ですが、スタジオの安藤さんこれは事態が収束に向かったと考えて良いのでしょうか?」



 壊れかけのヘリを地上へ降ろした異七木テレビの中継班はドラゴン達の見えるビル屋上からその様子を映す。ドラゴンの交尾が終わり、それと同時に異七木全域の電波障害、停電は治まった。



「まぁ交尾が終わったんでしょ? だったら収束したと考えていいでしょう。けれど、これからはドラゴンの交尾には警戒する必要があると思いますね。ドラゴンがどれぐらいの頻度で交尾をするのかは謎ですけど……頻度によっては対策が必要なんじゃないですかね……? でもねぇ、半魔体の研究って人員も予算もまだまだ不足しているので、今のままでは十分な対策は難しいかもしれませんねぇ」



 安藤は遠回しに自分たちに金を寄越せ、投資しろとニヤついた顔で言った。



「いやねぇ? スタジオの皆さんは私がね? ドラゴンが交尾するかもって言ったらそんなわけないでしょって馬鹿にしたでしょ? きっとスタジオだけでなく、テレビ見てた人の大勢がそう思ってたんじゃないですか? でも私の予測は当たっていた! これはつまりねぇ? 専門家である私の判断が必要ってことなんですよ」



 安藤に煽られた異七木テレビのキャスター陣の顔つきは苛ついていて、安藤に対する不快感が隠せていなかった。実際、安藤は人格的に終わってはいたが、ドラゴンの行動予測を当てて見せたのは事実で、半魔体における判断で、安藤ではなく常識的な対応を他の者が行った場合、多大なる犠牲が発生する可能性は高い。



 問題は安藤自身がこのドラゴンの行動予測に関して、自信、根拠を持った上での発言ではないということだった。しかし、傍から見ればそんなことは分からない。専門家と言われているのだから、きっと色々な判断基準があるんだろうと、人々は勝手にそう思い込む。



 安藤としては人々のそういった心理を利用して、半魔体研究に大量の金、リソースを使わせるのが狙いだった。殆ど詐欺のような立ち振舞、安藤は実際に成果を上げられるとは思っていない。しかし専門性のない奴らならいくらでも言い包められると安藤は高を括っていた。



 けれど、誠実さに欠ける男の思惑通りに、異七木は動いていく事となる。この件をきっかけに異七木全体が半魔体研究、半魔体災害対策に大量の資金、人員を投入することとなる。そして、その流れに乗じて他の異七木の企業、組織も半魔体研究や半魔体関連ビジネスに力を入れ、利益を上げていく。半魔体ベンチャーの流行、それは過去の異七木では起こらなかったムーブメントだった。




◆◆◆




「紹介状の患者? カウンセリング希望って……私に? 私はカウンセラーじゃないのだけど……」



 異七木の心療内科、ヒウサギクリニック。最近、異七木の転移が起こる少し前に出来たこのクリニックにはあまり患者がいなかった。



 このクリニックを経営する女医、火兎恋鞠ひうさぎ こまりは優秀で、やってきた患者をすぐ自立にまで立ち直らせた。それは精神的な病気の治療というよりは彼女の才能を活用したアドバイスによるものだった。



 火兎は元々、プロファイリングを専門とする科学捜査官だった。対象の心理分析を行い、行動パターン、動機の推測をすることで数々の事件を解決に導いてきた。火兎はこの経験から患者達に職、環境の向き不向きや、改善点の指摘等をすることができた。



 若く優秀で、容姿も優れた彼女は周囲からの期待も大きかったが、その優れた容姿が良い方向に作用しなかった。



「ねぇ、いいでしょ? ちょっと遊ぶだけでいいんだからさぁ」



 気色の悪い小太りの中年男、火兎の上司であるその男は、火兎に対してセクハラ行為を行った。火兎はこれを拒絶、上に報告を行った。しかし──



「いやぁ、そのまぁ彼をどうこうするっていうのは、自分には難しくて……済まないが、こういう結果になってしまった……その、君の地元ならまだいいかなって……」



「え……? 異動? 異七木で……一人で対処しろと? セクハラをしてきた奴はお咎めなしで、私は仕事場まで奪われるんですか!? 私、なにか悪いことしました? 事件だって、他の人よりずっと……解決してきて……私、何のために……」



 火兎を狙った上司は警察上層部の血脈、特権階級だった。火兎に対するセクハラ行為はもみ消され、火兎は逆に圧力をかけられた。



 火兎は警察に絶望し離職した。鬱を発症し、しばらくの休職生活を送っていた。そんな火兎は自分のように疲れてしまった者をどうにか助けたい、そんな気持ちから心療内科を経営することにした。しかし、彼女は未だ、誰にも助けられてはいなかった。



 患者達を助けて、助けて、それでも自分は救われないまま。人の役に立てているという実感はあるものの、もやもやとした、満たされなさを抱えていた。




「えっと、浪川さん。カウンセリング希望とのことですが……うちは専門のカウンセラーがいなくて、私も専門ではないので……正直ご期待に沿えるかどうかはわからないのですが……」



「ああ、その。別に名目はなんでもいいんですよ。自分はただ、あなたの噂を聞いて、あなたなら頼れるかもしれないと思っただけでして……その、僕は……最近話題になってしまっている、聖浄学園の理事長でして……」



「はい、それは知っていますが……それがどうして私に」



「その不快に思うかも知れないですが……火兎先生の過去を聞いたんです。昔、犯罪心理のプロフェッショナルで、警察にいたと。僕は……犯罪に巻き込まれた……この気持ちは、きっと普通の医者には理解できない、そう思っていた所で、あなたの噂を聞いたんです。すみません……あなたに嫌な過去があったことを理解していても……僕はもう、限界で……」



 そんな時、痩せ型の男が、クリニックの患者としてやってきた。



 浪川藤五郎/クラックタイルが。



 犯罪を起こす張本人は、弱った男のフリをして、泣いてみせた。追い詰められた、助けられるべき存在を演じた。



「わかりました。そういうことでしたら、ここでゆっくり治療していきましょう」



 クラックタイルは、表の顔で、魔の手を伸ばす。





 可哀想にも種類があるけど、フィクションの場合はそこにリアリティってあったほうがいいのか、ない方がいいのか、迷うとこではあります。皆さんはどっち派?



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