47話:大怪獣SEX
「グルルルオオオオオオオン!!」
──ドシャアアアアン!!
空を飛んでいたアーモンドが水のドラゴン、サフィアに地上へと叩き落され、大地が落下の衝撃でめくれ上がる。
「あらら、アーモンドまけちゃったか……これで決着だな。けど……頑張った甲斐はあったみたいだな」
不知がそう判断したのは、サフィアが倒れたアーモンドに寄り添い、その顔をペロペロと大きな舌で優しく舐めていたからだ。サフィアはアーモンドを認めた。
「ど、どうやらドラゴン達の戦いの決着がついたようです!! これはなんでしょうか……? なにやらドラゴンの様子がちょっと、あれ? あ、これ、ちょ!! あーダメダメダメ!! カメラ止めてカメラ止めて!!」
上空からヘリでドラゴンの様子を中継していたレポーターが慌てふためく声が響く。無理もない、何故ならアーモンドとサフィアによる大怪獣交尾がそのまま唐突に始まってしまったからだ。
──ドゴン、ドゴォン!!
「なっ、アーモンドお前! いきなりそこまで!? 仲良くなるの早すぎないか?」
『ははは、まぁお互い気が合ったんだろうね。お前と雪夏もドラゴンだったら楽だったかもねぇ』
「ば、馬鹿を言うなよクロムラサキ!」
顔を赤くする不知を見て、クロムラサキはクスクスと笑った。
「けど、これは……まずいんじゃないか? アーモンド達の交尾の衝撃でさっきの空間の歪が大量発生してる……爆発音が……」
──パゴォン、パゴォン!!
「ちょっと雪夏達に連絡いれとくか、電波障害が起こるかもって──あ、手遅れか、これ……」
不知がドラゴンの交尾のせいで電波障害が起こるかもしれないと、スマホで雪夏に連絡しようとするが、スマホは電波がどうこう以前に、電気的な機能を停止していた。
「そうか……二匹とも発電ドラゴンだから、電気的なエネルギーに強く干渉するのか……この感じじゃ異七木全体が停電だな……これから停電が起きたら、原因はドラゴンの交尾のせいかもってなるのかな……?」
──ズガァアン!!
「グオオオオン!?」
「ヒイイイイイヤッハアアアア!! この時を、待っていたぜえええええ!!! 隙だらけだぜ!」
とんでもなくうるさい人の声と、火薬爆発の音が同時に響いた。
「なんだあいつはっ、魔力が込められた爆発……? 魔導具化したロケットランチャーか……? あいつ、アーモンド達を狙ってるのか! 確かに今は隙だらけだもんな……狙い時か」
不知は目を凝らし状況把握に務める。そうして分かったのは、体力の火器、それもおそらく魔法的な魔改造のされたものを大量に装備した金髪アフロの男が、アーモンド達発電所ドラゴンを攻撃したということだった。
「オラオラオラオラッ!! 随分と大人しいなぁ! そりゃ山みたいなお前らが、子孫を残そうってなったら一大事だよなァ! 力をそっちに使いすぎたか!! これは勝ったなァッッ!!! ハハハハハハハ!! ハーーーーーッハハハハ!!」
金髪アフロが大量の火器を乱射し、アーモンド達を攻撃する。以外にもその攻撃はアーモンド達に確実にダメージを与えていた。
「──ッ、そんなダメージが通ってる!? そうか……結局半魔体だろうと、人間だろうと、魔力量に依存した身体強化、防御能力の強化の仕組みは変わらない。交尾のために大量の魔力を消費したアーモンド達は今……防御能力が著しく低下しているんだっ!」
『不知、このままじゃまずいぞ!!』
「言われなくても分かってる!! 行くぞ、クロムラサキ!!」
「ハハハハ! これはどうだぁ? ワガハイの秘蔵の必殺残殺し極限魔導兵器!
──邪霊器・ダークスパイラル=アドミラルアンサーッ!!」
金髪アフロが懐から赤黒いキューブを取り出すと、キューブに魔力を注ぎ、キューブの魔法、転移魔法を起動させる。
男の眼前、何もない空間に穴が空き、そこから巨大な大砲のような機械が顕現する。その大砲はただの機械、魔導具ではない。その魔機械は”生きている”
生物的な肉と機械、そして赤と黒の魔力光が入り交じる融合物、それは鼓動を響かせ、鼓動と共に脈動する。
『ゲハハハハハァ!! ワレこそが生命絶滅大将であるッッ!! 闇の螺旋で存在ごと消えるがいいィ!! エアアアアアアアッ!!!』
それは言葉を発した。魔力で思念を飛ばし、魔力は大気を威圧することで、大気を従わせる。大気は振動し、人外の声を空間に響かせる。脳髄まで響き渡るかのような不協和音で奏でられる声は、ドラゴン達の殺戮を命じられるまでもなく即決していた。
邪霊器・ダークスパイラルの砲身がグチャリと二つに分かれ、その機能を開示する。闇の魔力弾を撃ち出す魔導レールガン。
──ゴゴゴゴゴ、フォーーーーン!!
砲身にエネルギーがチャージされるまで、音と動きは同時だった。
しかし、赤黒く光る弾丸が放たれるその瞬間に、音は置き去りとなる。闇の回転力が込められた魔弾は、触れる存在全てを零へと戻し、零を超えてマイナス存在、虚無物質へと作り変える。
その魔弾は、その威力が消えるまで、触れる全て、世界を改変していく。魔弾が過ぎ去った大気はマイナスの存在となり、まだマイナスとなっていない大気を食いつぶし、侵食する。穢された大気もまた、大気だけでなく触れる世界を穢す。リバーシの如く表を裏に変えていく。
──ガギィイイイイイイイイイン!!
魔弾は止まる、主の意思を完遂することなく。
「──邪魔はさせん。無粋な真似をするなよ悪党、こいつらは愛を育むのに忙しい──馬の代わりに、俺が貴様を蹴り殺してやろう」
ドラゴン達に襲いかかる邪霊器・ダークスパイラル=アドミラルアンサーの魔弾を受け止め、砕いたのはナイトメア・メルター。
不可思議なことにナイトメア・メルターは世界を改変し、負の存在へと汚染する魔弾を受けても、一切のダメージ、影響を受けていなかった。
「な、なにぃいいいいいいい!? アドミラルアンサーの魔弾を受けて、死なないだとッ……き、貴様はッ、ナイトメア・メルターだとッッ!!!? ぐぬうううう!! なんということだッ!! こんなワガハイ好みのカッコイイヤツが、ワガハイと敵対し、立ち塞がるとはッ、なんたる不運、あまりに不幸過ぎる!! 馬鹿なのかァッ!!」
「う、うるさ……お前の来世はきっと防災スピーカーだな……お前の呼び出したそれは、まさか邪霊を魔導兵器化したのか? とんでもないものを作ったものだ、マイナスの螺旋の力で世界を闇へと改変するとは……」
「なにッ!!? これの凄さが、見ただけで分かるのか!! 貴様は天才であるワガハイ、ナンゾー・ハポン・アンダルシアの並び立つ知性を持っているッ、そういうことだな!」
「目を凝らせば魔力が見えるからな、構造も自ずと分かる。俺も受けてみてなんの影響がなかったことに驚いた……どうやら俺は闇の魔力への耐性があるらしい。つまり、その闇堕ちレールガンは、俺には効かない。そういうことだ」
「はぁ……? 貴様、人間じゃないのかッ……? 闇への完全耐性? そんなものを人間が持てるはずがないッ! まさか……存在するというのか? 世界を破壊せず、正物質世界と共存する闇の魔力を持つ、生まれながらの闇人間がッ……ダークマンがッ!!」
「だ、ダークマンて……俺が言うのもなんだが、そのダサい呼び方はやめてくれ……ふむ、お前はどうやら闇の魔力や、邪霊に関する知識の最先端を行っているようだな。殺すのは勿体ないかもしれないな……加減の効く程度に弱ければ、お前は死なずに済むかもな」
「な、なにィ!? 見くびるなよッ!! ック、こんな馬鹿にされたままじゃ終われないよなァッ! アドミラルアンサーッ!!」
『当たり前だナンゾー! ワレらの力、この不遜なる者に分からせてやろうではないか!』
「おう! ゆくぞ、アドミラルアンサー! ──ダァアアアアアアアアクゥ! フューーーーーージョンッッ!!」
「な、一体何を!?」
新たなダサいあだ名に困惑したナイトメア・メルターの隙をつき、ナンゾーとアドミラルアンサーが互いの魔力を絡み合わせる。
二人は赤と黒のオーラに包まれ、互いの存在を混ぜ合わせていく。混合が進むにつれ、オーラは薄くなっていき、オーラが完全に消える頃、そこには両腕がレールガンのガイドレールと化した、レールガンの化け物がいた。
「どうだああああァ!! これが新たなるワレハイ! ナンゾーアンサーだ! なんてこったァッ! こんなにも力が溢れるのかヨォぉオッ!! 痺れるじゃねぇか!! こりゃあ、生命絶滅が捗るってもんよォ!! サーツサツサツサツッ!!!」
「なん……だとッ!? 邪霊の魔導兵器と融合して化け物になった? しかも笑い方まで変に……お前、いやお前達そんな化け物になってしまって、複雑に絡み合ってしまって、元に戻れるのか……?」
「元に戻るゥ? 戻れるわけないだろうガッ!! 完全に新しい存在だゼェッ! そもそも! 元に戻る意味あるか? ないよなァ!! 今のワレハイがァ! 極限の最凶なんだからなァッ!!」
「なんてヤツだ……マッドっていうのはこういうことを言うんだな……」
『不知……あいつはさっきまでとは違う……』
(分かってる……俺にもヤツの魔力構造が見えるからな……純粋な感情から、闇と融合し、共存、いや吸収された。自分の……人間の魂を分解して、改造パーツにしたんだ。正の世界からの干渉を低減し、反対に負の世界の力の干渉力を上昇させる変換器に……闇の力では俺を倒せないから、闇の力を膨大な物理干渉力に変換して俺を倒す気だ!)
『つまり……お前の膨大な魔力による馬鹿げた防御力を、効果的とは言えない物理火力で強引に突破しようというんだね。なんという脳筋戦法……けど』
(ああ、元が戦闘兵器、レールガンだからな。魔導兵器の元となった素材がどの程度の完成度だったかはわからないが、元々かなり高い物理火力があったはずだ。それが膨大な魔力エネルギーで強化……俺にダメージを通すだろうな)
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