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6話

 あれから何年も経ち、俺は12才になった。孤児院でも忌子のような扱いをされていたが、今日でそれも卒業だ。今日から俺は探索者になるんだ。ようやくと言った感じだが、12才にならなければ探索者になれないのだから仕方ない。それに、孤児院の中でも訓練だけはできていたし、魔力量を増加させることは毎日行ってきた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ステータス

名前:トルステン

HP:135/135

MP:14768/14768

スキル

・剣術Lv35

・雷魔法Lv22

・回復魔法Lv68

・索敵Lv49

・気配察知Lv33

・鑑定

・アイテムボックス

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 これが今の俺のステータスだ。他の孤児たちのステータスも覗き見ていたが、俺よりも強い孤児はいなかった。あっても剣術Lv10程度だったから、やはり才能の有無が関係しているのだろう。ただ、HPに関しては、俺よりも高い奴らがいたが、それは生まれ持っての体格だったりするのだろう。俺の体は12才と考えて、極めて普通だと言わざるを得ない。それが、HPにも関係しているのだろう。


 魔法に関してはかなり伸ばしたつもりだ。ただ、回復魔法の伸びが悪くなってきたように感じている。才能ブーストがもう機能していないのかもしれない。しかし、この大量のMPのおかげで無理やりにでもレベルを上げていけていた。HPの100倍以上のMPなんて普通の子供ではあり得ない数値だろう。これならば探索者でも食いっぱぐれない探索者になれるだろう。


 孤児院を出て、探索者組合にやってきた。組合の建物は街のど真ん中にある迷宮の隣だ。迷宮も初めて見たが、周りと違いすぎて異彩を放っている。何かの遺跡じゃないのかと思うような石柱の門構えに、真ん中に階段付きの穴。何とも不思議な空間だ。中はもっと不思議なんだから本当にどうなっているんだろうね、迷宮というやつは。


 それはさておき、探索者組合に入る。探索者組合の建物も、石造りの立派な建物だ。目の前に受付らしきカウンターがあり、左手の入り口付近には階段があり、それが壁沿いに90度曲がって伸びており2階に続いている。その階段の下の壁には依頼表だろうか、皮紙がたくさん掲示板に張ってある。右手には長椅子や机が置いてあり、駄弁っている他の探索者が多くいた。右の奥の方には扉がたくさんあるが、誰も入っていっている人を見ない。…何のための扉だろう。あんなにたくさんある意味はなにかあるんだろうか。あの密度だと、1部屋がかなり小さいような感じを受けるが、細長いのだろうか。


 まあ、なんにせよまずは登録だ。目の前の受付らしきカウンターに向かっていく。


「すみません、探索者の登録をお願いします。」


「ああ、登録ね、これに名前を書いてくれる? 名前も書けないようならこっちで書くから読み書きぐらいは出来るようになりなさい。」


 何とも雑な対応だが、まあそんなもんかと思うようにする。渡された皮紙の端切れに自分の名前を書く。読み書きが出来ないのは恐らく農民出の探索者の事なのだろう。その点孤児院では騎士になる為という名目で覚えさせられるからな。


「書けたのね。ということは孤児院出身か…。…はい、これが探索者証よ。首に掛けてなくさない様に。それと、この袋は探索者になった人に贈るプレゼントよ。後は簡単な説明をするわ。――――――」


 金属の板にトルステンと書かれている。これが探索者証か。何か魔道具に通していたが、名前を移すだけなのだろうか? それで、簡単な説明を聞いた。本当に簡単な説明だった。殺しはダメだの、盗みはダメだの当たり前のことをつらつらと言われた。さすが底辺の職業。盗賊と探索者の違いを教えられているようだ。もっと探索者ランクの事なんかを教えて貰えるのかと思ったが、どうやら探索者にランクなどないとのこと。しいて言うなら、迷宮の何層まで潜ったという事で強さを図っているようだ。ランク制度が無いのは悲しいな。そういうのに憧れていたんだが。因みにプレゼントといわれた袋は細長の、小さいサンドバックになりそうな袋だった。これにドロップアイテムを入れろってことなのだろう。


 登録を済ませて早速迷宮に向かおうとしたとき、3人組の男たちが声をかけてきた。


「おい丁稚。お前登録したてだろ? 俺たちに付いてきな。迷宮がどんなところか教えてやるよ。」


「そうだぜ。いきなり丁稚みたいなやつが潜っても死ぬだけだからな。俺たちが教えてやるよ。」


 にやにやと近づいてきた3人組を見て、「うわーテンプレかよ。」とか思ったが、他の探索者がどんな風にやっていっているのか気になったので付いて行くことにした。鑑定した結果では、剣術や槍術がLv15といった感じで特出するものが無かった。


「わかりました。よろしくお願いします。」


「ああ、任せておけって。」


 こうしてなんとなくで、めんどくさそうな3人組に付いて行くのだった。


 早速迷宮に入ってすぐに男が言った。


「1層はゴブリンでドロップは魔石だけだ。だから2層に行く。2層にはレックルボアっていう猪が出るんだ。そいつらは魔石の他に猪肉を落とす。だから、それ狙いで2層に行くんだ。」


「わかりました。」


 以外にも丁寧に教えてくれたことに驚いたが、その道の先にゴブリンがいた。男は舌打ちをしながら「ついてねえ」と言いながらゴブリンに向かっていき、思いっきり袈裟斬りにしたかと思うと、他の槍使いの2人が、後ろに下がったゴブリンの喉や胸を突いた。倒れたゴブリンがポンッといった感じに紫の煙を残し消えていったかと思ったら、今までゴブリンのいた場所に拳大の大きさの紫の石が残されていた。


「おっ、ついてないと思ったがラッキーじゃねーか。おい丁稚これを袋に入れておけ。これが魔石だ。」


 そういうと、俺に魔石を渡してきた。丁稚と言っていることから、荷物持ちに連れてきたのはわかりきっていたけどな。まあ、素直に従っておこう。そうして何度かゴブリンとも戦いながら2層に向かっていった。


 ゴブリンと戦うこと数回、魔石を落とさない時もあった。大体半々といった感じだった。そんな感じで順調に2層に着いた。2層も1層と同じく洞窟タイプの迷宮だった。迷宮には色々なタイプがあり、他にも色々あるらしいが、ここの迷宮は確認されている限りでは洞窟タイプとの事だった。そして2層では大人の膝丈くらいの高さの猪がいた。


 戦闘はあっけなかった。突進してきた猪を回避すると猪が急ブレーキをかける。そしてその隙に男3人で袋叩きにして倒していた。こんなに楽勝ならば3層にも行かないのかと思った。一応質問してみたが、


「ばっか、お前。マッドゴーレムは面倒なんだ。何処にあるか判らねえ核を攻撃しないと倒せねえんだ。剣や槍でも倒せない訳ではないが、時間がかかる。それにドロップも旨くねえ。行くだけ無駄だ。大人しく2層で猪狩りをした方が儲かるんだよ。」


 そう言っていた。…強くなろうという意識が全くない。多分農民出の探索者なのだろう。騎士になる為にといって孤児院で教育をされた探索者であれば騎士を目指して辛くとも下へと向かうだろう。そんな向上心がある探索者は、ある程度の強さになれば騎士になってしまうのだろうな。多分何層を攻略できれば騎士になれるといったものがあるのだと思う。恐らくそれが10層なんだろう。孤児出身の探索者が10層までの情報しか知らないというのは、10層でドロップアイテムを得られれば騎士に推薦されるというのがあるのだろう。


 そんな訳で、危なげもなく猪狩りをしていた。俺は見ているだけだが、長らくこの狩りをやっているのであろう、動きが洗練されていた。…もう少しスキルのレベルがあってもいいと思ったのだが、彼らの才能の無さと、向上心の無さがスキルにも反映しているのだろう。もったいないとは思わないが、もう少し頑張ればいいのにとも思う。まあ、この探索者たちはこのレベルで満足なんだろうな。


 猪を狩り続け、3時間程だろうか。俺の荷袋が5割程埋まったころ、リーダーであろう男がもう引き返すということを言った。まだまだ袋に入るし、身体強化のおかげでまだまだ荷物を持つことが出来る。なのに何故もう帰るのだろうか?


「あぁ? もう十分狩ったろ? これで2,3日はのんびりできるぜ。なあ?」


「ああ。さっさと酒でも飲みに行こうぜ。」


 なんということだろうか。時間にも荷物の量にも余裕があるし、3人の探索者たちの体力もまだまだ残っていそうだったのにもう帰るのか。…これでは強くなれないはずだ。というより、2層までで生活できてしまうのが問題なんだろうな。俺はこうはならない様にしよう。少なくとも20層のミスリルゴーレムは拝んでやろう。そう思い直すことにした。


 帰り道の途中、行きには無かった物を見つけた。宝箱だった。


「おいおい、今日はついてるじゃないか。宝箱だぜ。おい丁稚、あれが宝箱だ。あれの開け方を教えてやるからちょっと見てろ。」


 そういうと、宝箱の前ではなく後ろに回り、後ろから蓋を開けた。そして、開けた瞬間、後ろにダッシュした。何をしているのだろうか。


「あれは罠を避けるためにやっているのさ。前から開けると矢の罠にかかるかもしれねえ。開けた瞬間に毒ガスにやられるかもしれねえ。それを避けるためにああやるんだ。」


 ああ、なるほど。ああやれば、ある程度の罠を回避できるのか。このパーティについてきて初めて役に立つ情報だった。少なくともあの通りにやれば、罠にかかることは無いのだろう。…爆発する罠だったらどうするのかは知らないが、無いのだろうか。


「っと。これは鉄の盾か。良いな。なかなかの金になるはずだぜ。」


 中身は鉄の盾だった。鑑定してみても何の変哲もない鉄の盾だった。それでも鉄には変わりない。10層のアイアンゴーレムのドロップアイテム級のお宝なのだろう。帰りの足取りが行きよりも軽そうな男3人組を見ながら探索者組合に帰っていった。


 組合に帰ってきて、受付で手続きをし、右奥の部屋に案内される。この多くの部屋は、ドロップ品を見られない様にするためのものだったのか。誰がどのくらいの金を稼いできたかわからない様に。そして中で換金する。計11400デルだった。魔石が8個で300×8デル、猪肉で800×5デル、鉄の盾が5000デルだ。そして俺の取り分はたった400デルだった。


「丁稚には銅貨で十分だぜ? 何もしてねえんだからよ。」


「しかし、これでは安宿に泊まったら無くなってしまいます。」


 安宿、大部屋で寝転がるだけの宿。何人でも文句は言わない。汚くても文句は言わない。盗みがあっても文句は言わない。それで300デルだ。個室を借りるのであれば2000デルからでないといけない。それに飯を食ったらそれこそ400デルなんてすぐに無くなってしまう。


「ばっか、宿になんて泊まるんじゃねーよ。これから暖かくなるんだから裏路地で寝るんだよ。そんで金を貯めて武器を買うんだ。3か月もすりゃあ武器が買える。そんでパーティを組んで個室を何人かで使うんだ。そうすりゃお前さんも立派な探索者だ。わかったか? それじゃあな。」


 そんな訳で3人組の男たちは酒場がどうのこうのと言いながら帰っていった。正直、丁稚で稼げる額があまりに少ないことにも驚いたが、猪肉の額が想定以上に儲かりそうだった。5㎏程度の重さで800デルは確かにいい金になる。依頼掲示板を見ているとよくわかる。マッドゴーレムの粘土の依頼では1つにつき500デルとなっている。他にもコボルトの犬肉は300デル、ワプスの蜂針は100デル、バットの蝙蝠牙は200デルと1つ当たりの値段が安いのだ。その分軽かったり、小さかったりするのだろうが、戦闘回数を考えればレックルボアの1戦闘当たり800デルは確かに優秀だ。ドロップ率なんかを加味しても2層が一番お金になるのだろう。


 また、7層のストーンゴーレムからは石材が取れて、これが2000デルとなっているのだが、石材の重さを舐めてはいけないだろう。多少小さくても重いから2000デルと高額なのだと思う。後は物理武器では倒しにくいのもあるのだと思う。8層のヴィーゼルからは白皮がとれる。これは服に使われている皮だ。1つ当たり1500デル、ここも行けるのならば美味しい狩場なのかもしれない。9層目のテネルディアは茶皮と鹿角を落とす。それぞれ1200デルと400デルだ。茶皮は皮紙に使われている。それなりの面積が採れるため、多少安く紙として出回っている。鹿角は魔道具なんかに使われているようだが、そんなに需要がないのだろう。9層で400デルは渋すぎる。


 10層のアイアンゴーレムからは鉄が取れる。そのまんまだな。掲示板価格では4000デル。これも資源としての価格なのだろうが、いいお値段だ。そしてアイアンゴーレムが倒せるならば、騎士団に入隊可能になる。ここまで行く奴は騎士団に入るんだろうな。孤児たちの出世場所だ。しかし、剣でアイアンゴーレムが倒せるのだろうか? …もしかしてアイアンゴーレムを倒せる武器を騎士団への入隊の試金石にしているのか? それはそれで悪辣な方法ではあるが、効果的なんだろうな。


 11層以下のドロップ品についての常設依頼は無かった。そりゃそうか。潜らないもんな、そこまで。しかし、掲示板を見ていると、殆どが常設依頼だな。指定依頼としては20層のミスリルゴーレムから採れるミスリルが張ってあった。なんと1つ当たり20000デル出すと書いてある。ま、潜れないからこその値段なのか、貴重だからこその値段なのかはわからないが。


 …時間は昼過ぎ、街で野宿とか嫌すぎる。もう一潜り行ってきて、自分の魔法がどの程度通用するのか確かめに行こう。剣はないから剣の腕の確かめようが無いが、正直魔法だけで何とかなると思う。まだまだ午後はこれからだぜ。


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