15話
初めてワイバーンを倒してから5年、俺はまだ探索者を続けている。…もう20歳なんだから結婚してもいい頃合いなんだろうけど、忌子故結婚相手がいない。一生独り身になる予定でございます。幾ら稼いでいようが、この白髪は呪われていると思われているため、自分以外のアルビノを見つけない限り、結婚相手が見つかることなどない。アルビノなんぞ確率的にはものすごく低いはずだ。近くにいる訳もない。
ただ、ここの騎士たちとは仲良くやっている。あれからワイバーンもちょくちょく狩りに行っているし、騎士たちとも駄弁っている。騎士たちにとっては、忌子より『雷帝』の方が何故か強いらしく、普通に接してくれている。亜竜魔銀の装備も揃ったのにも関わらず、いまだにワイバーンを狩りに行くのは、半分駄弁りに来ているといっても過言ではない。稼ぐだけならミスリルゴーレムが一番稼ぎがいいからな。
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ステータス
名前:トルステン
HP:170/170
MP:24688/24688
スキル
・剣術Lv100
・盾術Lv41
・雷魔法Lv100
・回復魔法Lv100
・索敵Lv83
・気配察知Lv74
・地図作成Lv17
・鑑定
・アイテムボックス
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今の俺のステータスはこれだ。転生前に考えていたビルドのほぼ理想形だと思う。MPは伸びる限り伸ばし続ける予定だが、剣術も魔法も頭打ちだ。100より上のレベルは存在しないからな。一種極まっているといっても過言ではない。…でも剣術や槍術のLv100なんぞゴロゴロいる。それこそワイバーンを狩っている騎士たちの多くはLv100に到達している。魔法の方は解らんがね。
今ではミスリルゴーレム相手に剣と盾で完封できるぐらいには、剣の実力も盾術も十分と言ったところなんだ。…そうなんだよ。停滞期なんだ。いまさら騎士にったってなるつもりもないし、かといって金稼ぎ以外に探索者としてやることはほぼ全てやってしまった感がある。…商人の護衛なんて道も無くはないが、あまり気も進まない。
やることなくなっちゃったんだよな。迷宮制覇してから最強目指してやって来たんだけど、それも頭打ち、新しいことやるにしたって思いつかない。そんな時だった。騎士団から話を聞いたのは。
「スタンピードですか?」
「ああ、このヴェストベリ迷宮から30日位西に言った街でな。フォルクマール無限迷宮ってのがあるんだ。その迷宮は終わりのない迷宮って言われててな。少し前の情報だが、確か56層目まで調査が終わってたっつう話を聞いた覚えがある。そこの迷宮でまたスタンピードが起きたんだと。38年ぶりって言ってたぞ。」
「どういう条件でスタンピードを起こすんです? そんなに詳しくなくて。」
「なんでも、一定期間にそれなりの数を倒さないといけないらしくてな。ここの迷宮は俺たち騎士団が資源採取に潜ってるからスタンピードなんて起きたことないが。無限迷宮にはここからの支援も行ってるんだぜ? 何せ此処での亜竜魔銀やなんかを多数融通してまで潜ってるんだ。それなのに最下層までたどり着かねえなんて言っているから、相当デカい迷宮何だろうさ。」
「ふーん。」
「おっ! 『雷帝』殿は興味がおありで?」
ニヤリとこちらを見る騎士。ああ、正直に言おう。興味がある。無限迷宮とまで言われた迷宮。きっとマッピングのし甲斐があろうさ。
「興味があるし、行ってみるか。」
「流石だなあ『雷帝』殿は。…まあ先に、周辺に散らばった魔物の処理からだろうがな。迷宮に近寄れやしないから。」
「直ぐに蹴散らして迷宮に入って見せるさ。」
「そうか、行くのか。…寂しくなるな。」
「迷宮の攻略が終わったら、また帰ってくるさ。」
「おおっ! 大きく出たな『雷帝』殿。まあいいさ、それまで俺も現役かどうか解らんがな。」
なじみの騎士と別れを告げ、迷宮を出口の方へ向かって歩く。新しい迷宮、スタンピードの起きた、まだ誰も攻略していない迷宮。まだ俺も20歳だ。寿命が終わるまでには攻略して見せる。ここから西だったな。さっさと行って、マッピングと洒落こみますか。




