1話
前回より短め、さっくり風味。
自由に転生させてくれるって言われると、どうしようか迷うよね。
そんな感じです。
「ようこそ、我が領域へ。此度の件については申し訳なく思っておる。外なる世界の神からの余波により命を絶った諸君らへの詫びとしてこちらも考えておる。そうよな、まずは今の状況から説明しておこうかの。――――――」
真っ白な謎空間に人魂のようなものが幾つも漂っている。その先に女性のような巨人がこちらに語りかけてきている。目の前の存在が言うには、自分は女神なのだとか。どうやら俺は死んでしまったようだ。そして、俺たちの死んだ理由が、別世界の神の悪戯によって引き起こされた災害によって死んだそうだ。確かに、俺たちは修学旅行で沖縄に行っている最中だった記憶が残っている。そして、飛行機に乗ったことまでは記憶にあることから、飛行機の事故によって死んでしまったのだろう。その事故が神の悪戯だったという顛末なのは解った。そしてそれが禁忌なのも解った。だが、その見返りとして別の世界に転生させるというのは、よく解らなかった。
いや、転生させてくれるのは嬉しいし、よくある物語なんかの典型例だとは思うが、いざ自分がとなれば、はいそうですか、とはならないだろう。しかも記憶も今の状態のままで転生させてくれるというではないか。何か思惑があるのかと考えてしまうのは、ひねくれ者だったからだろうか。しかし、一応女神様の言っている範囲内で考えると、善意100%のような感じを受ける。…まあ、貰える命だというし? 転生するのは物語の主人公みたいで楽しそうだし、前向きに考えるとしよう。理解できないことは難しく考えても、足りない頭は満たされないのだ。
「――――――。そういう訳で、記憶を持ったまま、転生させることとする。ただし、自分や他人の名前に関しての記憶は消させてもらった。これは、異世界でたまたま転生者同士が会ったときに、誰かわからない様にするためだ。過去、それで不都合が起こったこともある為の処置だ。故にそのあたりの事は気にしない様に。そして――――――」
今の発言から、なんか他にも転生させた実績があるみたいだが、それはまあ、良いとしよう。確かに自分の名前やクラスメイトの名前も出てこない。顔は出てくるんだけど、不思議だ。不思議なのは、今の状況が一番不思議なのだが。
「――――――。以上が転生までの経緯だ。次に諸君らの行く世界だが、見てもらった方が早いだろう。ここに、世界の監視用の天球を置いておく。確認したいものは各自で確認しておくように。」
そういうと女神様の真下くらいに大きな球が現れた。あれが、俺たちの行く世界なのだろう。後でじっくりと観察しよう。どんな世界に転生するのか気になるし。
「そして最後に、諸君らの転生後の才能を選ぶように。身体的な特徴や、産まれる身分なども決められるようにしておいた。選ばないという選択肢もあるだろう。選ばなかった場合は、こちらで操作させてもらう。その他詳しいことはこの本にまとめておいた。それを読めばある程度の情報は書いてあるつもりだ。では諸君、転生先の体を決めるように。決めたものから転生の手続きを行うものとする。」
女神様がそういうと、目の前に画面が現れて、手元? に本が降りてきた。さっきの話だと、目の前の画面がステータス画面で、この本が転生先の世界のルールブックみたいな感じだろうか。まるでTRPGみたいな感じだな。…産まれや才能を決めて生きるのだからまんまTRPGか。前世ではそれなりに嗜んだ。クラスメイトなんかと一緒に様々な冒険に出かけた(?)ものだ。それがリアルになっただけで、やることは一緒のようなものだ。こうして、転生先の内容をまとめるべく、本を開くのだった。