表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/105

決戦! 魔王ガダム四天王――水のリーディアス


「来るぞ! 兵は下がれ! 後は私たちに任せろ!!」


 ジェスタの勇ましい叫びがレーウルラ海岸に響き渡る。

すると、彼女の声を打ち消すように、目の前で海が割れた。


 そして圧倒的な気配を放ちながら、青く禍々しい法衣のような衣装を纏った怪物が上陸してくる。


「私の精鋭軍団を退けたか……称賛! 見事な武だったぞ!」


 鯨のような頭をした怪物は、紳士然とした拍手をしてみせる。

一見隙だらけにみえる。

 しかし怪物から放たれる邪悪で、強大な気配はジェスタ達をその場へ縛りつける。


「ははっ! 奴さん、随分余裕だねぇ……」


 アンクシャはいつもの余裕を装っていた。


「相手は水……我はいかずち! 負けない!」


 デルタは竜牙剣を構え、鯨怪物を睨みつける。


「……」


 ジェスタは敵へ鋭い眼差しを送ったまま、静かにレイピアの鋒を向けた。


「私とり合うつもりだな? 承認!」

 

 鯨怪人の背後の海が白波をあげて、荒れ狂う。

 いつの間にか空を覆っていた黒雲が、轟をあげ始めている。


「魔王ガダム四天王が一人! 水のリーディアス! 貴様らに葬られし同胞! そして我が盟友、土のファメタスの恨みを晴らさせて貰う! DIAAASS!!」


 鯨怪人――【水のリーディアス】は、独特の咆哮を上げた。

波が高い城壁のように立ち昇り、海岸にいる兵や三姫士たちへ襲い掛かる。


 リーディアスからの想定外の攻撃に、兵や三姫士たちはただ逃げ惑うのみ。しかし津波はすべてを押し流そうと、もうそこまで迫っている。


 その時空から人影が降り立った。

彼女は勇ましく押し寄せる津波に立ちはだかり、得物の大楯を力強く突き出す。


「ステイ・ヴィクトリア神よ! 神の奇跡を! 我らを守る、壁を与えたもう!」


 可憐な少女の声が響き渡ると同時に、彼女の持つ大楯のスリットが開いた。

 盾に封じられし、大いなる力を秘めた魔眼が開眼し、障壁を展開する。

 広がった障壁は海岸全てを覆い、巨大な津波を受け止め、押し返す。


「お待たせしました、三姫士の皆さん! 津波が落ち着くまで私が防ぎます!」


 剣聖リディのもう一人の弟子。黒の勇者バンシィの妹分――盾の戦士ロトはそう叫ぶ。


「皆さんは、この隙にリーディアスを! くれぐれも力を出しすぎて、アイツに“アレ”を発動させないよう気をつけてながら戦ってください!」


「承知した! 行くぞ、アンクシャ、デルタ!! ここでリーディアスを倒し、戦いを終わらせる!」


「おうよ!」


「ガァァァ!!」


 かくして三姫士達は、それぞれの武器を手に、リーディアスへ突っ込んでゆく。


「白兵戦か。承認! お相手致す!」


 リーディアスは禍々しい偃月刀を呼び出し、構えた。


「ビムサーベルっ! はぁぁぁっ!!」


 ジェスタは風の魔力を纏ったレイピアを繰り出す。

目にも止まらない速さの連続刺突がリーディアスへ襲い掛かる。


「見事な剣捌き! 称賛! しかし、未熟っ!」



 対するリーディアスは剣舞を舞うかのように偃月刀を振り回し、ジェスタの連続刺突を軽々といなしていた。


「くそぉぉぉ!!」

「未熟! 未熟! 未熟! その程度の私と渡り合おうなど――!?」


 リーディアスはジェスタを突き飛ばし、脇から迫った光弾――アンクシャの放ったメイガ―マグナム――をあっさりと偃月刀で両断してみせた。


「勇敢! 称賛! しかし、貴様も未熟っ!」」

「うわっ!! デルタ、今だぁー!!」


 アンクシャはリーディアスの放った水流に吹き飛ばされながら、叫びを上げる。

 刹那、頭上に眩い輝きが迸り、リーディアスを照らし出す。


「愛の力を源に! 邪悪な空間を断ち斬る! 雷ッ! 斬空龍牙剣! ガアァァァァ!!」


 デルタは紫電を帯びた龍牙の大剣を掲げつつ、リーディアスへ切り掛かる。

しかしデルタの最大攻撃であるそれさえも、リーディアスはあっさりと偃月刀を掲げて受け止めた。


「おお……礼賛! 貴様はこの中で最強の戦士と見た! 名を聞こう!」


「デルタ・ウェイブライダ・ドダイ! 我、最強の戦士!」


「感謝デルタ・ウェイブライダ・ドダイ! そして敢えて言及! 現状の貴様は未熟っ! 最強を名乗る資格なし!」


「グガァァァーッ!!」


 リーディアスの闘気が衝撃波となって、デルタを思い切り突き放した。


「た、立て……! アンクシャ、デルタ……! まだ倒れる時間ではないぞ……!」


 ジェスタはレイピアを杖代わりに立ち上がる。

体はボロボロ。しかし、翡翠色をした瞳に浮かぶ闘志はまだ衰えていない。


「こんな時までうっせぇな、引きこもり姫が! 僕がこの程度でやられるかって……あいてて」


 アンクシャはよろよろと立ち上がるも、すぐさま地面を強く踏み締める。


「我は強い! 剣は折れども、我が闘志はお前如きに折らせはしない!」


 デルタもまた折れた龍牙刀を構え直した。


「倒れるには時期尚早! もっと私を楽しませろ! DIAASS!!」


 かくして三姫士とリーディアスの2回目の闘争が始まった。


「我は行く! お前を倒し、あの山へ!! アイツのいる辺境の地へ! そこで子をなす!! 我がウェイブライダー竜人一族繁栄の……いや、我が想いを遂げるために!!」

 

 デルタは龍牙刀が半分に折れていようとも、勇猛にリーディアスへ切り掛かる。


「マジか!? デルタも……だったら負けてらんないねぇ! 巨人の山へ真っ先に飛んでって、エッチなことわかるようになったバンシィをメロメロにすんのはこの僕だ! いけ、EDF!! 鯨野郎を蹂躙しろォォォ!!」


 アンクシャの呼び出したEDFが魔法爆雷を放ち、リーディアスを翻弄する。


「シェザールや、護衛隊の皆がバンシィを探し出してくれたんだ! ここで死ぬわけにはいかん! 私は彼らの気持ちと、自分の想いへ決着をつけるために、生き延びねばならんのだ!」


 ジェスタは光の翼を背中に現し、稲妻轟く黒雲へ向けて舞い上がる。

刹那、4枚の翼が黄金の輝きを放った。

 降り注ぐはずの黄金の燐が、ジェスタの呼び起こした風によって、レイピアへ集まってゆく。


「覚悟ッ! ムーンライトバタフライッ!!」


 魔を滅ぼすレイピアを突き出し、ジェスタは急降下してゆく。

すると目下のリーディアスは、不敵な笑みを浮かべた。


「称賛……しかし礼賛までほど遠し。未熟! DIAAAAASS!!」


 リーディアスはどす黒い瘴気が渦巻く偃月刀をジェスタへ投げ放った。

 空中でジェスタのレイピアとリーディアスの偃月刀がぶつかり合い、拮抗状態に陥る。


「くうぅぅぅっ……!!」

「善戦……しかし、これで終焉。まずは貴様からだ、妖精剣士!」

「――っ!?」


 偃月刀がレイピアをへし折った。

 その衝撃で、空中のジェスタは大きく身体を開いてしまう。

 鋭い偃月刀の鋒が、ジェスタの胸骨に触れる。


「タイムシフトッ!!」

 

 その時、世界の理が一瞬だけ破られた。

 ジェスタの胸骨に触れていた鋒が、後退してゆく。

同時にジェスタも3秒前のレイピアを突き出した姿勢へ戻ってゆく。


 魔力の充填を終えた盾の戦士ロトは、左手に真っ赤な炎を携えながら飛び出す。


「灼熱ッ! フレイムフィンガー!!」


 炎で肥大化したロトの左腕が、停止したリーディアスの偃月刀を掴んだ。


「ブラストエンドッ!」


 停止した時の中で、偃月刀が爆散する。

 ロトは額に冷や汗を浮かべつつ、それでも静止しているジェスタを見上げた。


「リメンバーミー! ジェスタさん! リーディアスの武器は破壊しました! 安心して突っ込んでください!」


 鍵たる言葉がロトの声を魔力の波に乗せた。

可視化された音の波が、空中で停止したジェスタの中へ溶けてゆく。


【リメンバーミー】――時間停止の中であっても、ロトの声を伝える補助魔法である。


そして再び時が流れ出した。

 

「はあぁぁぁぁ!!」


 ジェスタはすぐさま黄金に輝くレイピアを構え、急降下してゆく。

 

「驚愕……!? 何が起こって……DIAA……!」


 ジェスタのレイピアが、リーディアスの腹へ突き刺さった。

 腹を貫かれたリーディアスは、状況が掴めず、ただただ悶え苦しむのみ。


「これが私たちの力だ! 思い知ったか!!」

「お、おのれ……おのれぇぇぇ!!」


 黄金の燐粉がリーディアスの身体を、光の粒に変え始める。

 その時――


「うわぁぁぁ――!!」

「DIAAAAASSSS!!」


 突如、傍から砂浜を割りながら強力な輝きが迫り、ジェスタとリーディアスを吹き飛ばす。


「よくここまでやった! 褒めて遣わすぞ、三姫士そしてロトよ! あとは余に、白の勇者ユニコン=ネルアガマに任せよ!!」


 ようやくレーウルラ海岸に姿を見せた白の勇者ユニコンは、断崖の上でふんぞり返っていた。

すでに彼の鎧のあらゆる箇所から、真っ赤な輝きが漏れ出している。


「あのバカ! 何も知らねぇのかよ、クソがぁぁぁ!!」


 アンクシャはユニコンへ向け杖をかざし、魔力の充填を始める。


「愚か!! やめるっ!!」


 デルタは龍牙刀を構えつつ、翼を開いてユニコンへ向かって飛んでゆく。


「だ、ダメ……今、それは……!!」


 力を出し尽くしてしまったロトの声はユニコンには届かない。


「消えよ! 邪悪なるものよ! 大陸最強たる余、自らが生み出した必殺剣! デストロイアエェェェッジ!」


 ユニコンは嬉々とした様子で、真っ赤な魔力で肥大化した聖剣をリーディアスへ振り落とす。


「DI……DIAAAAASSSS!!!」


 聖剣に両断されたリーディアスの断末魔が、響き渡る。


★次回2章最終話です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ