ルーピ
アフリカの中央部のとある所に
ルーピ という少年が住んでいました。
ある日、お父さんが銃弾に倒れます。
家族の暮らしを助けようと
一人都会に出ます。
ぼくはルーピ 10才。
父ちゃんは 外国人の大農園のおやしきでガードマンの仕事をして働いていた。
門の小屋は、ぼくの家より りっぱだった。
父ちゃんが大金持ちの外国人に ヘラヘラしているからって、ときどき学校でいじめられた。
いまでも忘れられない。
あの日、 母ちゃんが けっそう変えて学校にやってきた。
「おやしきがおそわれて 父ちゃんが死んじゃった」
そのまま 母ちゃんは くずれたんだ。
父ちゃんが働いていた、農園のだんなさんも殺された。一家は、自分の国に帰ってしまった。
村で そう式を出してくれて、父ちゃんは 土にうめられた。
なんでだろう?
自分の国なのに、一日中働いても 生活も苦しい。
ぼくらは いつのまにか 外国人に支配されていたんだ。
「だから ここんところ ゲリラさわぎが多くて、広い墓地も もういっぱいだ 」
村長がそういった。
ある日、とうとう母ちゃんが とほうにくれた。
干ばつで 明日のごはんのトウモロコシも もうない…。
井戸が干あがって 遠くまで 水くみにいかなきゃならない。
その日 ルーピは とうとう家を出た。
「母ちゃん ぼくがなんとかするからね、町へ出て 働いてお金を送って 楽させてあげる。
父ちゃんの形見の バンダナかりとくよ」
夕日を目指して 出発した。
一晩中 歩いて もう一日歩いて やっとたどりついた。
夜は疲れて その辺で 眠った。
朝起きると、でっかい町におどろいた。
さっそく 新聞売りの仕事にありついた。
花の首かざり売りの仕事もしたし、自動車のガラスふきもした。
ルーピは仕事が早かった。
暗くなると 倉庫のやねうらで こっそり眠った。
ある時、生まれてはじめて カメラを見た。
「やあ、キミ名前は?」
「ルーピ」
カメラマンのリイドさんと すぐ友だちになって、いろんな話をしたんだ。
「じまんじゃないけど ぼくが母ちゃんと4人の弟や妹を やしなっているんだよ。
チップをたっぷり、はずまなきゃ! 」
リイドさんは笑って
「じゃあ、安くていいホテルを 案内しておくれ」
「まかせてよ!」
ホテルにつくと、フロントまで カバンをはこんだ。
「部屋まで、運んでおくれ。たっぷりお礼するから」
リイドさんは、お風呂に お湯を入れると、入らせた。
ルーピがあわのお風呂につかっていると、リイドさんはパンツもシャツも バンダナもみんな洗濯をしてくれた。
「ねえ、ぼくえふやけちゃうよ。」
「だめだ、100数えてからだ。」
あっという間に100数えたので、リイドさんはびっくりした。
服が かわくまで 二人で昼寝をした。
その夜 ルーピはテラスで、夕ごはんをたっぷり ごちそうになった。
「ルーピ、君は 頭がいい。学校に行かないのに どこで 覚えたんだい? 」
「どこって、仕事で覚えた。 お金もらうから」
「じゃあ、うで時計をプレゼントしよう! 仕事できっと 役に立つ」
「ぼくに? うで時計? ほんと? バンザ~イ。ありがとう! 」
「ちゃんと うらがわに ルーピと名まえ ほってもらったからね」
そして、あのホテルに ときどき リイドさんからのプレゼントが 届くようになった。
名まえ入りのTシャツ、アルファベットの絵本、辞書…。
一人で勉強して 読み書きも うまくなった。
今では、ルーピのことを 通り中のみんなが知っていた。
リイドさんのおかげで、ラッキー続きだった。
一度 盗まれた時計も おまわりさんが 見つけてくれた。
「でん池 交かんしといたよ ルーピ」
「ありがとう」
◇ ◇ あれから 5年がたった。◇ ◇
リイドさんが お嫁さんをもらって 新婚慮旅行でこっちに やって来た。
「あれ、カメラは? リイドさん」
「今日は ちがうんだ」
「じつは、ルーピの本で 賞をもらってね」
「本?」
「君は 元気ではじけそで 太陽みたいな 少年だったよ」
それは、あの日の ルーピの写真集だった。
ほこらしげに 笑っています。
あれから 背丈が 15センチも のびたんだ。
「新婚旅行先は、妻が ぜひ 君のふるさとを 案内してほしいってね 」
「オーケー、まかせといて」
さっそく ドライバーの交しょうです。
ルーピは、今では 町で 一番有名な ガイドになっていた。
ひどいデコボコ道を車で、3時間もゆられると、すっかり緑の別世界。
「父ちゃんが 死んだ所は 今では広いトウモロコシ畑になって、あの白いおやしきはとうになくなっているんだ」
二人とも 黙って 食い入るように 見つめていた。
久々に帰ると 母ちゃんがちゃんと待っていてくれた。
「母ちゃんには ちゃんとわかるんだよ」
弟や妹たちも大きくなった順に 働きに出て、家もりっぱになった。
母ちゃんはまだ、外国人がニガテだった。
母ちゃんは 写真集をながめると あのころにもどってほほ笑んだ。
それでも ニワトリをしめて ごちそうをお客さんにもてなした。
リディアさんが とつぜん切り出した。
「ここに ルーピの お父さんからあずかった、手紙があります」
みんな びっくりした。
「私は、リディアって言って、お父さんのヤディさんから、ご家族の話をよく聞いていたの」
それは、へたくそな英語で書いてあった。
「父ちゃんは 字が読めなかった はずなのに」
母ちゃんがつぶやいた。
「ルーピ 読んでおくれ」
ルーピへ
ハワードさんの ところで 英語を
おぼえたよ。
父ちゃんの カタコトの 英語に
りディアおじょうさんが つづりを
教えてくれた。
父ちゃんは 貧しくて 学校も行けなかった。
だから ルーピには
ちゃんと 学ばせたい。
えらくなって この国を 良くして おくれ。
もしもの時は 母ちゃんと
弟や妹たちのことを たのんだよ。
父ちゃんのヤディより
「あなたのお父さんのヤディは、いつもニコニコして ご家族の話をよくしてくれたの。だから…」
「リディアは イギリスの本屋で ぐうぜん ルーピの 名前を見つけたんだ」
そしてリイドさんと 文通をはじめたそうだ。
リイドさんも泣いていた。
母ちゃんとリディアさんは 泣いてだき合った。
あの日、リディアさんの父さんも 殺されたのだから。
愛する人を 失うと誰だって つらいもの。
「平和が いいよね…。 来てくれて ありがとう」
母ちゃんが 言った。
おしまい
真っ赤な夕日に一人少年が、ふるさとを出て行く。
そんなイメージが最初に浮かびました。