第二話 おべんと持って、ギルドへ行きましょう!!
初回からとんでもなく時間が空いてしまいました。
家を出た時よりも、荷物が少し重くなった。クルミは持っていく物は少ないほうがいい、と言ったのだが、パン屋を出てからというもの、街の人たちが、やたらと物をあげたがるので、これを断れなかったのだ。
ともあれ、ギルド行きの列車に間に合った。少し早めに家を出て正解だったというものだ。
ギルドにつくまで二時間ほどか。
まだお昼前なので、四人掛けの座席を独り占めできた。心地よく光が差し込む、窓際の席に座り、おしりが包み込まれるくらい、ふかふかのシートに身体を預ける。列車の揺れも気にならない。
ぐぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!
一安心したせいか、盛大におなかが鳴ってしまった。さっきミルクパンを食べたのに。思わず赤面してしまう。自分の他に人がいなくてよかった。
「んふふ・・・。」
クルミは自分の空腹を感じて、にんまりと笑う。
「ではでは・・・」
カバンからお弁当を取り出す。駅で買ってきたのだ。
「いただきます。」
シートにもたれかかり、甘辛く焼かれたヤギの肉を一口食べる。
甘い脂が口いっぱいに広がって、とてもおいしい。
視界にはお弁当。それと朝から続く晴れやかな空。遠くの山までくっきりと見える。
15年前の戦争でこの辺りの地形もガラリと変わってしまった。クルミが生まれる前なので、戦前の景色がどんなものだったのか分からないが、きっと同じくらい、いやそれ以上に美しいのだろう。
車窓から綺麗な景色を見ながら美味しいお弁当を食べる。クルミにとってこれが旅の醍醐味だった。とはいえこれが初めての旅なのだが。
ヤギ肉弁当に舌鼓を打っていると、列車が大きな渓谷に差し掛かった。もとは『世壊大戦』の影響で発生した巨大な地割れだったが、当時の管理者が壊れた線路の復旧時に、どうせならと観光地にしたのだ。新しい橋のデザインは新進気鋭の彫刻家が行っており。川の水と橋から透ける光の反射が綺麗だと評判が良いのだが、クルミは小さい悲鳴をあげて、下を見ないようにした。
『世壊大戦』の爪痕は思わぬ所で少女を苦しめるのであった。