第十六話 断罪の時
お久しぶりです!ろくみっつです!
今回も楽しんでいってください!
ウリエルさんから戻るように言われてから数時間。俺はウリエルさんに言われたことについて考えていた。
天使になれるというこのお札。使えば、俺は簡単に大罪神装を御することができるようになるかもしれない。できなくても、一時的に抑制することで対策を練る時間を捻出することができるようになる。だが、使ってしまえば、俺は人間を辞めることになる。
天使になれば人としての規格から大きく外れ、些細な事で苦しむかもしれない。寿命だって大幅に伸びることになる。人間のままであれば俺の方が早く死ぬかもしれないのに、天使になれば施設の子たちの死に顔を視ることになる。
でも、天使になれば俺は力を持てる。それをしっかりと使いこなせば、これから降りかかるであろう厄介事も解決するのが楽になるし、俺の大切な人たちを守れる。
だが、守れたところで時を経ればみんなの前から俺は消えていかなければならない。なぜなら、俺だけ若いままというのは不自然でしかなく、もし俺の秘密がバレてしまえば皆に迷惑がかかるかもしれない。
そんなことをウジウジと悩んでいた。
正直なところ、使ってしまえという気持ちの方が強い。だが、それでも人間を辞めるという言葉はどこか俺の心にしこりを残し、人外の領域へと足を踏み込むことに躊躇いを覚えさせる。
そうやって、悩みながら歩いていると、ドン。誰かにぶつかってしまった。
「す、すいません!」
俺は慌てて謝った。そして、そっと相手の方を見ると、そこにはすごい人がいた。
「ふん。前を見て歩け、馬鹿者め」
そう俺に行ったのは、司祭服をきっちりと着るアリーゴ司教だった。
彼は俺の方を一度だけ睨むとそのまま道を進む。
少しだけムッとしてしまうが、俺の不注意が原因なのだ、歪んだ顔を戻してもう一度謝り進もうとする。
だが、それに待ったをかけたのも、アリーゴ司教だった。
「イース・レリジンだったか?貴様に少し話がある。付き合いたまえ」
「へ?」
「……。早く来い。貴様の中のモノについてだ」
そういうと彼はズンズン進んでいく。
俺は頭にクエスチョンマークを浮かべたままにとりあえず。とついていった。
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アリーゴ司教に連れられてやってきたのは、俺が普段トレーニングに使っているあの部屋だ。
そこのコンソールの前までくると、彼はしゃべりながらもそれを操作する。
「貴様の中になる大罪神装についての話だ」
「は、はい」
「正直に答えろ、貴様はソレを制御できるか?」
ストレートな話題が飛んでくる。理想で言えば、ここで自信をもって「はい」と答えられればいいのだろう。だが、今の俺にはそんな自信は一切なかった。
「……。いいえ、まだ制御できるとはいいがたいと思います。そもそも、レグルスから課された試練すらクリアで斬るとは言い難いので……」
「そうか。試練の内容は、確か『傲慢と覚悟を見せろ』だったか?ふむ、抽象的でわかりにくいモノではあるな。
だが、貴様はその二つを大罪の人格に証明するつもりはあるのか?」
「もちろん!あります、ですが、傲慢を見せるとはどういう意味なのか、覚悟は既に語ったはずなのにソレをみせろ、というのがどういうことなのか。さっぱりです……」
俺は素直に語る。俺には傲慢も覚悟もどういう風に表せばいいのかがよくわからないのだ。ただ他を見下すだけでもダメなのはレグルスの口振りからして明らかなのだが……。
「なるほどな。ならば……貴様には私が引導を渡さなければならんなぁ」
アリーゴ司教はそういうとコンソールをトンと叩いた。すると、トレーニングルームの背景が一瞬にして変わる。
「え?どういうことですか」
と俺が聞くと、そこにはアリーゴ司教の姿がなかった。
困惑して周りを見渡せば、少し先にある丘のような地から俺を見下ろすアリーゴ司教の姿があった。
「正直なところ、私は大罪神装というモノに頼るのは賛成していない立場でね。貴様のような輩を我々天界勢力に加えるのに些か不満があるのだよ?」
と、唐突に彼は語りだした。
「だが、これは上の決定であり我々の崇拝する神の御使いであらせられる大天使様方のご意向だ。一介の司教が異を唱えるわけには行かぬ。
だからこそ、私は初めは貴様と関わらぬように傍観するつもりだった」
「だが、その大天使様から直々に話を聞いたのだ。貴様は大罪を御しきれぬ。と、貴様はこのままでは罪に飲まれ多くの災禍を振りまく。とな?
ならば、私のすることは決まっておるであろう。例えその行いが大天使様の命に反することであっても、我が教会と天界勢力を陥れるわけには行かん」
そう言いながら彼は何処からともなく杖を取り出し、それを地面にたたきつける。
「よって、今から貴様を、ここで私が。断罪する」
突然浮かび上がる不思議な模様。彼の背後に何個もそれは現れる。いわゆる魔法陣と呼ばれるようなものだろうか。
「ちょ、ちょっと待ってください!断罪ってどういうことですか!?」
俺は慌てて聞くが、彼は聞く耳を持たぬと言うように杖を俺の方に向ける。
「罪は贖える。本来ならばな。だが、貴様の罪は大罪であり、人間の持つ七つの罪源が一つ。『傲慢』だ。それを贖うには、死をもってするしかないと私は考える。他への影響を出さないためにな」
「死!?俺を殺すってことか?!ふざけんなよ!」
死という言葉に驚き、言葉が乱れる。だが、俺の動揺を無視するように彼は態度を変えずに言葉を続ける。
「すまないとは言わん。なぜなら、貴様の死は貴様の不出来が原因であるからだ。もし貴様が大罪を御し、正しく使いこなせるというなら私は貴様の罪を贖うチャンスを他に設けることもできただろう。だが、貴様には御することができないと、自身が言ったであろう。つまり、そういうことだ。悪く思うな」
彼は杖をスッと下げる。すると、背後の魔法陣が一斉に輝き、俺に向かって何かが飛んでくる!
俺は咄嗟に頭を庇い身を丸めることしかできなかった。
ズガガガガガという音を俺の体に何かが当たる音、そして俺の悲鳴が空間に響く。
「がああぁぁぁぁ!!!」
その衝撃は重く重く俺の体を打ち付ける。暫くすれば攻撃が止んだが、絶え間ない痛みの次には消えることのない鈍痛が俺を襲った。
「い、いってぇぇぇぁぁあぁああぁぁ!!!」
痛みに体をねじれば、更に激痛が走り、身を動かさなければ鈍痛は鋭い痛みへと変化していく。
言葉にならない悲鳴を上げながらもその場をグルグルと気を紛らわす様に転がりまわるしか、俺にはできなかった。
「哀れだな。神装を使えれば、貴様は痛みを受けることもないだろうに。だが、貴様の実力不足だ。かみしめて死ね」
「ふ、ふざけんなぁ!!!てめぇ!!!!」
俺の叫び声を無視してアリーゴは次々に光の玉のようなモノを放ってくる。
身体に着弾すれば、鈍痛を与え地面に当たったとしても爆風と石の破片で俺の体を滅多打ちにしてくる。
そうして何秒何十秒がたったのだろうか。
立つこともできず、うめくことしかできず、目の前がもうろうとしてくる。
「最後だけは、苦しまずに逝かせてやろう」
その言葉すら聞こえなかった。
真上から差す光に目の前が真っ白になる。ギュィンという何かがエネルギーを溜める音が空しく響く。
あぁ、死ぬんだな。俺はそう確信した。
死にたくない。そう思う。なぜ俺が、そう思う。だが、思うだけで俺の体には力は入らなかった。その場から引くことすらままならなかった。
最後に出た言葉は……。思い浮かんだヒトは……。
「ごめん、ロゼ姉。皆を守りたかったのに。姉ちゃんや孤児院の奴らを守りたかったのに……。ごめん、ロゼ姉……」
俺は、そのまま光に飲み込まれる……。
如何でしたか?
来週は遂に!イース君に変化が……!!!
ご期待ください!!!
それと、もう一作の方も投稿し終えていますのでよろしくお願いします!
では、今回はこの辺で!ノシ