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レオ・ザ・プライド  作者: ろくみっつ
1章:傲慢の目覚
10/26

第十話 目覚める獅子

お久しぶりです!

今回は諸事情によりレオプラだけ更新です!

詳細は活動報告でします!

 光り輝くのは床に刻まれた不思議な模様。所謂魔法陣と呼ばれるモノだろう。

 その光に包まれている円形の空間の真ん中に俺が立ち、その四方を囲むように四人の天使が立つ。

 前方にはミカエルさん、後方にガブリエルさん、左にウリエルさんで右がラファエルさんという風に位置している。


 四人が四人とも、何かを呟いているのか口が動いているのだが、声は聞こえないし段々と強くなる光のせいであまりよく見えない。


 そうして、あまり長くない時間が流れ光が収まっていく。

 俺の目に再び映ったのは、ミカエルさんの姿ではなくよくわからない紋様の浮かぶ青い壁?だった。


「すげぇ……。なんだ、これ?」


 目の前の光景に感嘆の声が自然と漏れてしまう。


 そんな俺に対し、壁の外からウリエルさんの声が飛んでくる。


「イース!こっちの方は準備が出来てるぜ!あとは、さっき説明した通りだ!!!お前が今一番やりたいこと、成し遂げたいことを強く考えるんだ!!!」


「はい!わかりました!!!」


 俺もまた大きく返事を返し、深呼吸を一つ。


「すぅ……はぁ……」


 そして、考える。

 俺の今一番やりたいこと。成し遂げたいこと。一番強い、願い。


 なんていうことはない既にわかっていることだ。

 それは俺がこの教会にいる理由で、俺が孤児院を離れた理由だ。


「俺の中にある力で、もう二度と家族を傷付けたくない……」


 そして、それだけではない。俺があの日、まだ幼かった俺の目の前で起きた惨劇を繰り返さないために、もしそんなことが起きようものならば……。


「あの日みたいに、言われるがままに逃げるんじゃなくて、俺の大切な人たちを守れる力が欲しい……!」


 そう、それだ。ただ制御するだけじゃない、ただ傷付けないだけじゃない。

 また同じようなことが起こっても、俺が、俺の大切なモノを守れるように。もっと言えば、同じようなことが起こらないようにするために。


「俺は、誰かを守る力が欲しい!!!」


 俺は叫んだ。自分の叶えたい願いを籠めて。何もできなかったあの日ではなく、誰かを守れる未来を願って。


 そして、ソレは起こった。


 まるで俺の慟哭を感じたように。俺の叫びに応じたように青い壁が瞬きだす。

 思わず目を閉じた直後、どこからともなく声が聞こえてくる。


『なるほど、それが貴様の__傲慢か』


 その声は目の前から聞こえた。

 だがそれは、結界の外にいるミカエルさんの声ではなかった。

 全く別人の声だった。ミカエルさんのような優しさを感じる声ではなく、軽蔑と嘲笑を込めた声だった。


 閉じていた目を恐る恐る開けてみると、そこにはソレが居た。


 ソレは全身をうっすらと紫を纏う金の毛で覆っていた。ソレは爛々と眼を光らせて俺を見ていた。ソレはそもヒトではなかった。ソレは、俺の目の前に四足で立っているソレは……。


「ライオン……?」


 そうライオンだ。東洋では獅子と呼ばれ、百獣の王の二つ名で知られるライオンそのものだった。


「なんでライオンが俺の目の前に!?」


 状況がつかめずに狼狽える俺を見て、ライオンは細めていた目をより一層細くし睨みつけてくる。


『ちっ。貴様のような肝の小さい人間が我の宿主とは……。なんと嘆かわしい。いっそのこと今ここで貴様を食い殺してやろうか?』


「な!?しゃ、しゃべった!!!ライオンがしゃべっただ……ん?待て今お前の宿主が俺?どういう……」


『はぁ……まさかまだ状況を把握していないのか。貧弱で鈍臭く肝が小さい。最悪だな、これは……』


 俺が驚き慌て、ライオンがそれを見て何やら呟いている。

 というか、本当にこの状況が理解できていない。まさか、神装の可視化の儀式中にライオンが乱入とか、ありえないだろ!?

 俺はそう頭を抱えているがライオンは気にすることもなくしゃべり続ける。


『まぁいい。まだ状況の読めてない愚かな宿主に、我がどういう存在なのかを説明してやろう』


 上から目線な物言いに少しだけカチンとくるところがあるが、自分から説明してくれるらしいのでありがたく聞いておこう。

 そう俺が思ったとき、ライオンは顔を顰めたような気がした。いや、多分気のせいだろう。


『よく聞け愚鈍な宿主。我こそは数多の神装の中で最も力を持った大罪新装(アマルティア)が一つにして、頂点に君臨せし最強の神装!!!七つの大罪が一つ、傲慢を司る神装!!!『傲慢なる獅子(レオ・ザ・プライド)』なり!!!

 そして、その化身たる我が名はレグルス!よく覚えておけよ、我が宿主』


 ――っ!!!

 なんと、このライオンは、自分が大罪神装だと高らかに宣言したのだった!!

 俺はそれに再び驚き、思わずこう返してしまう。


「神装ってのは、喋るライオンの形してんのか!?」


 と。

 ライオンはそれを聞くと盛大にため息をついた!様な気がした。動作からそうなのだろうと思うが、流石にライオンの表情の変化とか機微とかは俺にはわからなかった。


『そんなわけなかろう。普通の神装ならばただの器で、武器だ。喋るのはほんの一握りだ。

 だが、我と我と同種である大罪神装には、疑似的な人格があるのだ。それは司る大罪のシンボルである動物の形をした化身として顕現できる。だからこそ、我はこうしてライオンの姿でお前の目の前にいる。そういうわけだ』


 な、なるほど……。

 つまり、大罪神装にはそれぞれ動物の形をした化身?ってのが付いてるわけだ。んでそれが人格をもってこういう風に目の前に現れる。と……。


「俺、そんな話聞いてないぞ……?まさか、これって意外と知られてないことだったりするのか?宿主以外には見えないとか他人に喋れないとか?」


『惜しいところだ。我は本来こうして顕現できるものではないが、今は結界の影響でこうして出ることができているのだろう。声自体は他人でも聞くことができるがな?お前はその話を説明されていなかっただけだろう。ルイーゼとかいう女は説明しようとしていたようだが、機会を一度逃してしまって言うのをやめたのだろう』


 ロゼ姉が説明しかけた……?あ!あのときか!この教会に来た初日にミカエルさんが突撃してきてロゼ姉の言葉を遮られたときだろう。それ以外にタイミングはなかったし。


「そうだったのか。それで、えっとレグルス?は俺の強い思いに応えて出てきてくれたっていうことでいいのか?」


 応えてくれたということなら、俺はこの大罪神装を使えるようになったりするのかな?と思い聞いてみた。


『……いや、別段そういうわけではない。貴様の強い思いが俺に届いたのは事実だがだからといってそれに我が応えたわけではない。いい機会だったから貴様に少し試練を与えてやろうと思っただけだ』


 返ってきたのは否定の言葉と試練という聞きなれない単語だった。


「試練……?」


『あぁ、そうだ。貴様には我の課した試練をクリアしてもらう。貴様が無事試練を乗り越えれば我は貴様のあの強い思いに応えてやる。もし乗り越えられなければ……貴様を食い殺すとしよう』


 ――っ!?

 俺はレグルスの言葉に体を強張らせた。

 試練をクリアできなければ俺を食い殺す。まるでおやつでも食べるような感覚でそう言われたようだった。だが、その言葉が嘘ではないことは自分の身にひしひしと感じるプレッシャーで感じ取ることができる。


「そ、その試練っていうのはどういう、ものなんだ?」


 恐る恐る俺が聞き返すとレグルスはニヤリと笑うようにその鋭い牙の生えた口を開く。


『なに、簡単なことだ。貴様は我に覚悟と傲慢を見せればいい。我が司る大罪は傲慢だ。何よりも驕り、誰よりも過信し、全てを見下す。コレができなければ我を制御するどころか満足に使うことすらできないだろう。だから貴様は我を使いこなせると我に見せればよい。相応の覚悟を持ってな?』


 その言葉はひどく抽象的に聞こえた。どうやってその傲慢を見せればいいのか。よく理解できない……。


「どうしろっていうんだ?傲慢を示せって、俺が他人を見下し続ければいいってことかよ!」


『貴様がそう思うならばそうすればいい。我は貴様の傲慢さを我の基準で見定めるだけだ。思うように行動し態度で表せ。

 我は貴様のあがく姿すらも評価に入れるつもりである』


 そう言ってレグルスは大きく欠伸をする。

 まるで、先ほどの問いは見当違いで面白みのない回答だというように。

 俺はどうすればいいのかわからずに固まってしまう。見かねたのかレグルスはこう切り出す。


『別段、我を無理矢理従わせてもよいぞ?貴様のバックに付くモノ共はそういうことができるはずだ。

 ま、そうなれば我は虎視眈々と貴様の命を狙わせてもらうが。我はライオンだがな?フハハハハ』


 自分の笑えないジョークにひとしきり笑い、レグルスは俺に近づいてくる。


『期限は二週間としておこう。それまで貴様は悩み、考え、行動しろ。

 貴様の覚悟も傲慢も、貴様の胸の内にあるモノだ。それを我に投げつけろ。我はそれを受け止めてやる』


 そう言いレグルスは消えていく。


「どういうことだよ……どうしろっていうんだ?」


 俺は消えていくレグルスを見ながらそうつぶやく。その場に佇み考えていく。何をすれば正解なのかを……。


 そして、それからどれくらいの時間がたったのだろう。俺は物思いにふけったままずっと立ち続けていた。

 そんな俺に声が掛けられる。


「おい!イース!聞こえてるか!?」


 その声にハッと気づき辺りを見渡す。

 レグルスは消え去っていて、辺りにはうっすらと薄れながら消えていく結界しかなかった。

 そして、俺は声の聞こえたほうに顔を向けると、ウリエルさんが結界を割いて俺の方に駆け寄ってくるところが見える。


「無事だなイース!?お前、あの獅子は大罪神装の人格でいいんだな!?何を言われた!!!」


 ウリエルさんは若干興奮したように俺の体を揺さぶってくる。


「え、えぇっと。自分を使いたかったら試練をクリアしろ。みたいなことを……」


「試練!?試練だと!……今までに見たことのない例だな……。というか、大罪神装の人格が表に出てくるだなんて……どうなってやがるんだ?」


「あ、それについては結界の影響って言ってました?」


「なるほど、結界の影響で……。興味深いな……」


 とウリエルさんは俺に怒涛のように質問をしてきて、俺は困惑しながらとりあえず答えていた。

 そしてすぐに後ろから声がかかる。ラファエルさんの声だ。


「ウリエル!いきなりすぎますよ!!!イース君が困っているじゃないですか!!!いったん落ち着きなさい!今しなければならないのはイース君に異常がないかを確認することでしょう!」


 ウリエルさんはその声にハッとなり俺のほうを向く。


「す、すまんかった。つい興奮しちまった……。それで、イース。お前の体とかに異常はないか?」


「えぇ……問題はないです」


 そう伝えると、ウリエルさんは俺から離れていった。

 そしてミカエルさんが近づいてきてこう言った。


「お疲れさまでした。イース君。今回の事はいったん置いておきましょう。色々聞きたいことがありますが、君が無理をしてはいけないので、まずは休憩です。話はそのあとに」


 ミカエルさんは俺にそう微笑んだ。

 俺もうなずき儀式の部屋から出ていった。考えていたのは、レグルスに言われた試練についてのことだった。

如何でしたか?

次回からは悩めるイース君を見守ってやってください()

では、ここらへんで!ノシ

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