表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

コロシヤ 梟

作者: 雪沢 泉


衝動的に書きたくなった短編シリーズその3。






「はぁ、はぁ、はぁ。」



『コツッ。コツッ。コツッ。』



「はぁ。はぁ。なんなんだよ! なんで俺がこんなめに!」



『コツッ。コツッ。コツッ。』



「あんなこと、知るんじゃなかった!」



『コツッ。コツッ。コツッ。』



「はぁ。はぁ。はぁ。ッ!? 行き止まり?」



『コツッ。コツッ。コツッ。』



「嘘だろ? まさか、分かってて!」



『コツッ。コツッ。コツッ。』



「逃げ道! 何処かに逃げ道はないのかよ!」



『コツッ。コツッ。コツッ。』



「さぁ、鬼ごっこは終わりにしようぜ?」


「くそ! 殺し屋を雇うなんて、そんなヤバい秘密だったのかよ!」


「依頼人からは、アンタを殺せとだけ言われたんでね。理由までは知らんよ。」


「なぁ、なんとか助けてくれないか?」


「悪いが、こっちも仕事なんだよ。そうだ、俺は梟。一応、覚えといてくれ。」


「ふ、梟? まさか、ネットで噂のあの(・・)梟?」


「かもな。ま、死に行くアンタには、あまり関係のないことだ。さて、そろそろ覚悟は出来たか? 心の中で、大切な人達にお別れを告げとけよ? 多分、もう二度と会えないからな。」


「ま、待ってくれ! 頼む!」


「………じゃあな。」



『ドンッ!』



表があるように裏がある。


光があるように闇がある。


陽があるように月がある。



この世のなかは、表裏一体が多い。光輝く希望が表の町にあるように、地に濡れた絶望の裏がある。


ま、俺には関係のないことだ。俺はやりたいようにやる。俺は、『コロシヤ 梟』


誰も殺さない殺し屋だ。











『ザワザワザワザワ』



雑多な喧騒を表すとしたら、こんな感じだろうか?



出社に遅れないように駆けていく、眼鏡のサラリーマン



友達と駄弁り、スマホを弄りながら歩くギャルっぽい女子高生



アキバにいそうな、太ったオタク



ブランドもので身を固めた、自意識の高そうな女



日本ファンであろう、外人



様々な連中が集まり、喧騒を毎日のように奏でるここは、トウキョー。


ベンチに座った俺は、何をするでもなく周囲の喧騒に耳を傾ける。



「なぁ、『殺し屋 梟』って、知ってるか?」


「なんだそれ?」


「たのまれたら、前金二十万、成功報酬で三十万で、どんな殺しも引き受けやり遂げる、伝説の殺し屋だよ。」


「へぇー。そんな有名なのか?」


「いや、ネットで言われてるだけなんだよ。なんせ、一度もニュースになったことないし。名前と噂だけ広間ってんだよ。」


「そんなの、誰が信じるんだ?」


「さぁな?」



大学生だろうか? 二人の男の会話に、何時もより長く聞き耳をたててしまった。そろそろ、何時もの場所に行こう。いつ、仕事の依頼が来るのかは、俺の勘でも分からない。


表通りから外れて、裏通りを歩いて行く。


少々耳障りな喧騒も、だんだんと小さくなっていく。耳が痛くなりそうなほど煩いトウキョーだが、静かな所も勿論ある。俺が行くのは、そんな場所の一つだ。



『カラン。カラン。』



「よ、マスター。調子はどうだ?」


「ぼちぼちだよ。お前は相変わらず、無愛想な顔してんな。」


「ほっとけ。顔はもともとこんななんだよ。」



ここは、カフェ“ルフェール”


ダンディーなおっさんマスターが店主の、客は常連だけが来る隠れ家てきな店で、俺が普段からよく入り浸ってる場所だ。



「注文は?」


「んー。カフェラテと、日替わりパフェで。」


「今日はメープルパフェだがいいのか?」


「あぁ、ハズレじゃないみたいだから、いいぞ。」



ここの日替わりパフェは、たまにハズレがあるから困る。


注文の品がくるまでの間、ネット小説を読む。



「…………(コト)」


「お、ありがとな唯一名(ユイナ)。」


「………(コクコク)」



シンプルなワンピースに、この店のエプロンをつけた無表情の少女こと、唯一名がカフェラテとパフェを持ってきてくれた。



「相変わらず喋らないし、なんか距離を感じるぞ。」


「そりゃ、あんなひどい目にあわされたらな。」


「それは、俺か? 俺のことか? あれは仕事だから、唯一名も気にしてないよな?」


「………(ふる……コクコク!)」


「今、一瞬首振りかけたな。」


「マジかー。」



ま、結構怖い目にあわせちゃったしな、しゃあーないか。



『カラン。カラン。』



「いらっしゃい。」


「………(ぺこり)」



どうやら、客が来たようだ。


店内に入った客は、落ち着きなく周囲を見渡した後、俺の隣に座った。



「お客さん、ご注文は?」


「あ、あぁ。それでは、コーヒーを一杯。」


「あいよ。」



パフェをつついていたら、隣の男が此方に紙を渡してきた。


仕事かな? 紙を開くと、文字がかかれており、気の弱そうな男の写真もついていた。



『この男を殺して欲しい。』



殺して欲しいか………


まぁ、仕事の依頼はしっかり受ける。



『前金二十万。それさえ貰えれば、受ける。』



そう書いた紙を渡すと、厚い封筒を渡してきた。中には、一万円札が、二十枚。さて、お仕事といきますか。



「んじゃマスター、また後でな」


「おう。」



男から貰った紙には、男の特徴が色々とのっていた。これなら、アイツに頼ることなく探し出せるな。


そうして俺は、裏へと消えていく。仕事のために











『ドンッ!』



行き止まりに追い込んだターゲットに、銀色に輝く愛銃の引き金を引いて、弾丸を撃ち込む。



「ひっ!……………あれ? 死んでない?」


「いや、お前は死んだ。俺が殺した。」


「でも、身体はなんとも……」


「それでも、死んだ。なぁ? 人はいつ死ぬと思う?」


「え?」


「俺の恩人がな、大昔の有名マンガのセリフを真似て、こう言ったんだ。



『人に忘れられた時、人は死ぬ。』



なんで俺がこんな話をするかというと、今現在、お前を覚えている人間はいない。」


「え?」


「誰も知らないだけで、この世界には科学で証明出来ないモノ、人智の及ばないものがある。俺は、人の記憶を殺す事が出来る。」



死ヲ変エル者(メモリーキラー)



生まれつき俺が持っている能力。俺は、物理的に人を殺す事が出来ない。俺が人を殺すと、世界中の人の記憶から、その人の存在がなくなる。思い出の中のその人は、別の誰かになり、薄ぼんやりとしてしまう。



「信じるも信じないもお前の自由だ。」


「え?」


「俺に依頼した奴も、お前のことを忘れている。後は自由に生きろ、何か困ったことがあったら、カフェ“ルフェール”に行けばいい。お前と同じ境遇の奴がいる。」


「俺と同じ……」


「どうする?」


「連れてってください! なんでもします!」


「それは、店主に言ってくれ。」



ソイツを連れて、再びカフェ“ルフェール”に戻る。



「あ、梟さんこんにちは。」


「よぉ、夢雲(ムクモ)………何見てるんだ?」


「何って、スノウ様のライブの様子だよ!」


「あぁ、最近人気の………なんて言ったっけ?」


「『Miracle World Online』だよ。梟さんもやってみない?」


「んー。どうかな~。というか、この娘見たことあるような?」


「まじで?」


「んや、気のせいかも。」



というか、今はそれを気にしても仕方ない。



「マスター、こいつここで働きたいってよ。」


「お、なんだ? お前も殺られたのか?」


「は、はい。今さっき。」


「そうか。俺はここの店主だ。マスターと呼んでくれ。んで、あっちにいるのが、元ハッカーの夢雲。」


「やっほー。梟さんに殺られてからは、梟さんの仕事手伝って、情報収集してるよ。」


「んで、唯一名!」


「………(ひょこ)」


「新入りだ。色々教えてやってくれ。」


「ど、どうも、射月(イツキ)です。」


「…………唯一名、宜しく。」


「「「喋った!?」」」



嘘だろ? 唯一名喋れたのか!?



「………(ちょい、ちょい。)」


「おっと、新入り、唯一名が呼んでるぞ、行ってこい。」


「あ、はい。」



どうやら、上手くやれそうだな。



「唯一名さん? えっと、なんで迫ってくるんですか? あの……なんだか嫌な予感がするんですけどって、え、ちょ、ア゛ーーーーーーーーー!!!?!?!?」



新入りくん。南無。



さて



(ウツツ)があるように、夢がある


白があるように、黒がある


生があるように、死がある



しかし、それは本当に表裏一体なんだろうか?


表と裏は、誰が決めるのだろうか?


俺の仕事は、人を殺すこと。


感謝され、憎まれ、恨まれ………今まで沢山の人間を殺してきた。


俺は、死ぬまでこの仕事を続けるだろう。それは、偽善でも、悦楽のためでも、金のためでもない。


ただ、この仕事で何かを得られそうだと思ったから、それは、もう得られたのか、得られていないのか分からないが、分かるまでは続けていく。


それが俺のエゴだから。






分かったと思いますが、『Miracle World Online』と同じ世界です。しかし、雰囲気は殆ど違いますがね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ