表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+++インカレイド序章〈或いは無花果に爪先〉+++  作者: 音羽
とりかえせないきみへむけて。
32/44

05


その反応を見て、晴は心底感激したように瞳を輝かせ、ややあって擽ったそうに笑った。


「では、要件も済んだし帰るとします。」

一方キコはいつもの様に冷静さを取り戻して螺旋階段の手すりを掴む。


「えっ?あ、あー、うん。じゃあね。」


晴は何か言いたげだったのを押し込めて、キコに手を振る。





 帰ってきた自室で晴から貰った包みを開け、キコは思わず目を細めた。

小さなころからの大好物であるチョコレートブラウニーが、可愛らしくラッピングされて入っている。

しっとりとした触感に次いで、ほろ甘いチョコレートが舌の上に溶け、沢山混ぜ込んである香ばしい胡桃も丁度良いアクセントになっていた。


「こういう時……"普通の友人"なら、ラインのひとつもするのでしょうが。」


キコは行儀の悪さを自覚しながらも服のままベットに横たわり、天井から吊り下げられたペンダントライトを眺める。

しかし晴は携帯を持っていなかった。

固定電話があるのかさえも定かではない、というか、それを聞いてすらいないのだ。



 単純で、従順で、犬の様に素直な晴の求めているものが何か。


キコにはソレが解らないほど馬鹿ではない。


欲しい言葉も知っていた。



"ありがとう"と言っただけで、尻尾が生えていれば千切れそうなほど振り回しているだろう喜び様だった晴の顔を、回想する。



それは、キコがまだ今の名前ではなかった頃に、

あの男から向けられたリアクションと被るところがあった。





「ほんと、簡単で………



恐いです。」





それが正直な感情だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ