03
5分間隔でやってくる電車の待ち時間ももどかしく、急いで学校にUターンして、まだ生徒たちが沢山残っているにもかかわらずゴミ箱の蓋を取って中身を探してみたが、キコが捨てた封筒はそこに残っていなかった。
業者が持っていった訳ではない、何故なら他のゴミはそこに溜まったままだったからだ。
ということは、誰かに拾われた、という答えしかない。
キコはいつになく落胆して、暫くその場を動こうとしなかった。
すると、何処からか派手なユニフォームに身を包んだ女子グループ5人がキコの行く手を遮るように現れる。
取り巻きの内の誰かが報告したのだろう、賛善舞美が勝ち誇ったように白い紙を扇子の様に顔の前で躍らせながら笑っている。
「豚みたいに鼻を突っ込んで、何を探していらっしゃるの?」
嫌味な女の皮肉に、仲間の女子たちが勢いよく笑い声を上げる。
キコが彼女の手元を睨みつけたまま無言でいると、女子の一人が同調して言った。
「ゴミ箱マジ似合いすぎだしー。」
女子の一人が茶化す様に言い、またドッと笑いが起きる。
いつの間にか靴箱の周りには女同士の諍いに興味津々のやじ馬たちが集まり、
公開処刑の様だとキコは思った。
「捨てたものを、わざわざ拾う趣味がお有り?
それともゴミ漁りがしたいだけかしら?
――流石、狂犬を野放しにする人間は、汚らしいわね。」
「……そうですか?
自分の兄の服をクンカクンカするブラコンよりはマシだと思いますけどね。」
キコは冷ややかな目で、言った。
口元が歪み、残虐な笑みを形作る。
「従姉はガチのレズビアン、あなたは近親相姦。
そして私が?何ですか?
アブノーマル度合いで言うと、まだ探し物してゴミ漁る方がレベル低いでしょうに。」
舞美がその言葉を聞いて、色を失ったように蒼白になり全身を強張らせる。
取り巻きたちはキコが何を言っているのか一瞬解らない顔をした後、疑う様に張本人を眺め、
その表情を読み取って真実を知ったようだった。
と、硬直したままグラグラ揺れて後ろへ倒れる舞美。
「舞美様!!!!!!」
「賛善さん!!!!!!!」
仲間たちが一斉にその身体を支えて意識を取り戻させようとするが、
今まで他人から攻撃を与えられる事が皆無だったと言ってもいいお嬢様は、秘密をバラされたことが相当ショックだったらしく完全に気絶していた。
キコはその手にしっかりと握りしめられた手紙を今更取り返すわけにもいかず、周囲が舞美に注目する中、
カッとなった頭を冷やすべく足早に学校を去る。
そして、初めて晴と出会った場所
――――晴の住む部屋へと向かった。




