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♪エッサエッサホイサッサー、おサルの駕籠屋だホイサッサ。
チンピラ二人に車へ運ばれる、伸びたデブを見送りながら、キコの脳裏で愉快なメロディが紡がれる。
「ああなってしまうだなんてね…」
瀬野宮両親の乗る車も遠ざかっていく音を聞いてから
曾祖母が隣で嘆くように呟く。
「私たち、振り回されてしまいましたね。」
「――でも、それも終わったこと。
あの子は…残念ではあるけれど、もう再びこのようなことは起こらないでしょう。」
「……そのことなのですが、お婆様。」
キコは先を進む曾祖母へ続き、扉を締めながら呼びかける。
曾祖母は、改まった口ぶりに身体を反転させて向き合い、真剣に話を聞く態勢を整えた。
「御覧の通り、私は自分の身は自分でしっかり護れるようになったつもりです。
なので、まさかとは思いますが、護衛などは……必要ありませんので。」
すると曾祖母は鳩が豆鉄砲を食ったように目を見開き、笑いだした。
「そんな、心配をしていたの?無用ですよ。」
「そうですか?でも、」
「大丈夫。貴方のプライベートを邪魔して嫌われることはしたくないわ。
もう中学生、ですものね。」
「でも…お婆様、察しがよくて、たまに驚いてしまう事があります。」
「修羅場を複数回掻い潜ってきた、オニババの勘を見縊ってもらっちゃ困りますよ。」
曾祖母は笑いながら何時もの和室へ戻る前に台所へ寄って、熱い湯を薬缶に沸かす。
「おやつの時間の仕切り直しにしましょう。
ケーキじゃないけれど、二人でクリスマスの残りを祝いましょうか。」
キコは疑惑の念を払拭し、祖母を手伝い盆や茶器を用意した。
オニババの勘の鋭さは実はエスパーの能力だと言われても、
今日実際に本物の魔法使いを目にした彼女は信じてしまうだろう。
でも、曾祖母はキコに嘘は絶対に吐かない。
「本当に、今日はとても大変な一日でした。」
だけどこの後、キコにはもっと大変な事が起こるのだ。
彼女はしかしこの瞬間、こんなヒッチャカメッチャカなことがいっぺんに起こったのは一生の内で今日だけだろうとタカを括っていた。
明日からは、平穏な元の地味な中学二年生の日常。
平均よりも下位に属する、冴えない外見、内向的な性格。
それを気取って生きていく。
しかし、まさかそれすら崩壊させられるとは、この時一ミリも思っていなかった。




