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アグリ  作者: 佐藤成
『カサロ』の檻
3/3

3)見えない国の中

『カサロ』は表向きでは綺麗で美しい国と知られている。

そして争いの中でも常に強者として恐れられ、力をつけてきている。

だが、その『カサロ』内で権力を奪おうとする動きがあった事を、他の国は知らなかった。


『カサロ』と言う国を作った先代の王『イロアス』。

人々が幸せに、平等に暮らせる国を望んでいた。

その先代が亡くなった後、肉親の息子が引き継ぎ王となる。

だが、その息子『イリニ』は異常なまでに見た目で人を定める性格で、醜い者、気に食わない者を排除していったのだ。

勿論もちろん小規模で内乱が起こったが、すぐに鎮圧される。

軍の力と金の力でその場を鎮め、国は醜い者達を隔離した。

最初は批判が多々あったが、ある条件でその状況を受け入れる事になる。

【1.国の法律、政治を持ち込む事を禁ずる】

【2.互いに干渉する事を禁ずる】

【3.武力の威嚇を禁ずる】と大まかに決められたものだった。

だが、国からの条件は一つ。

【国の者では無いものを全て『アグリ』と呼ぶ】

『アグリ』の中で『アグリ』以外の名前を呼ぶ事を禁ずるという事。

そう、個人的な名前を付けてしまうと罰せられ、追放か処刑であった。

国の法律、政治を持ち込む事を禁ずると決められていたが、人権は含まれてはいなかった。

その瞬間、私達の人としての権利は国によって失われてしまった。

それからは国の中では暮らしているが、人としてではなく『アグリ』というくくりで生きて行くしか無くなった。

それからも醜い者は『アグリ』に送られ、美しく、高貴な者達は国で優雅に暮らしていった。

貧富の差はあったが、互いはその暮らしで満足していった矢先、争いが起こる。


他国の国々が領地を占領していく中、『カサロ』は小さな国と手を結んでいた。

小国ではあるが、凄まじい武力の者達が集まった国。

幾度も他国に襲われるが、戦略で勝利をしてきた国などの強者を集めるのに力を入れていた。

最初は断られていたが、何度が交渉していく内に妥協する形になり、一つになる。

武力の国『イスヒス』の領主『ヴァーム』

知力の国『スキエンティア』の領主『エザニオ』

この二カ国を支柱に収めると共に『カサロ』は大きくなる。

それから数百年の時を経て、今の『カサロ』になっていった。

だが、人の心はいつまでも変わらないとは限らなかった。

野心は誰の心にも潜んでいる事を忘れていた王は、殺されてしまう。



その頃の王を務めていた『ウォーム』はこの国の現状をどうにかしようと考えていた。

何百年前の王が決めたこの国の隔たりを無くそうとしていた。

だが、それを平然と受け止めてしまっている国民をどう納得させれば良いのか悩んでいた頃、一人の娘が生まれた。

妻に似て美しく、輝いていた。さっきまで悩んでいた事など忘れたかのようにその娘をでた。

それから数ヶ月、争いが『カサロ』周辺まで迫ってきていた。

国を守る為、元『イスヒス』の血族、元『スキエンティア』の血族を呼ぶ。

「この国を守る為、互いに力を合わせ戦ってもらいたい」

「王よ、それは勿論でございます」と『イスヒス』

「喜んで、この国の為に力を振るいましょう」と『スキエンティア』の血族が言うと、立ち上がり王の前へと歩み寄る。

咄嗟とっさに兵が止めに入る。

「それ以上、王に近寄るでない。古き盟友めいゆうであっても許されぬぞ」と兵が言った後、人形のように倒れていった。

「な!」王は驚き思わず椅子から立ち上がり、後ずさる。

「古き盟友。そう私達はいつまでも貴方の下、従う者でしか無い」

「何故力の無い者に従わなければならないのか、ずっと思っていた。先代の者達はどうして上へと登ろうとしなかったのか」

二人の目は正気では無かった。いや、あれが本当の正体なのだろう。

誰かに従うのでは無く、従える側へと向かおうとしていた。

異変に気付いた兵達が武器を構え、盟友に駆け寄ろうとするとどこからかの攻撃を受ける。

「ぐああぁぁぁあぁ!!」

「ぎゃあぁぁぁぁあ!!」

一瞬にして玉座が血まみれになり、王を守る者がいなくなってしまった。

「っ!!」

呆気あっけないですね、王よ。こうも簡単に国を乗っ取られてしまうなんて、危機感が無さすぎた。貴方はこの時代に生まれた事が間違っていた。」

「どうして、急に、裏切りなど!」

「急では無いな、ずっと思っていた事だ。この貧弱な国を支える立場を何故俺達が、従わなければならない立場なのかを。力のある者が何故上では無いのか」

溜まっていた不満をぶつけるかのように迫っている。逃げようとするが、体が上手く動けない。

「王よ、この日を忘れはしません。貴方からこの国を譲り受けるこの日を」

『スキエンティア』の血族が剣を振り上げた瞬間、妻の声と姿が見えた。

「貴方!!!」

「逃げろ!逃げてくれぇぇぇぇ!!!」それが最後の肉声であった。

愛した王は目の前で、盟友の手で赤く染められた抜け殻に。

気を失い掛けたが、盟友の目を見て我を取り戻し自室へ逃げた。

生まれたばかりの子を強く抱きかかえ、城を出ようとした。

あちらこちらでは兵達が反逆した者達を抑えている中、人影が少ない方へと逃げていた。

足も血だらけになり、走る気力も体力も残っておらず死を覚悟した瞬間。

どこからか声を掛けられる。

「おい、こっち。早く!!」その姿は汚れており、体も痩せ細った男だった。

一瞬で『アグリ』だと分かった。だが、今はそんな事を気にしている場合では無かった。男の後についていくと広い場所へと抜ける。

「大丈夫か。アンタ傷だらけだぞ」

「はぁ、はぁ・・・。わ、私の事より・・・この子を・・・」

大事そうに抱えていた赤ん坊を手渡した。

「お、おい!この子をどうしろって!?」

「私の代わりに、育てて・・・!』

「代わりって・・・こんな小さな子、俺が育てられるわけないだろう!!」

「お願い!じ、時間が無いの!!」

必死に見ず知らずの男に我が子を託す。今はそれしか出来ない。きっと私も殺されるのだとしたら、きっとこの子も殺されてしまう。それだけは・・・!

来た道を引き換えそうとすると、男に止められる。

「おい!そんな傷でどこに行こうとしてるんだ!ここは安全だ、休め」

「ここにいたら、きっと私達は殺される。お願い、この子だけでも・・・助けて!」

男の腕を力一杯振りほどくと、誰かから逃げるようにその場から消えてしまった。

男は託された赤ん坊をじっと見つめ、泣きじゃくるのかと思っていたが、その子は静かに眠ってしまった。

それから16年、その赤ん坊を俺に託した女が来ることは二度と無かった。

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