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アグリ  作者: 佐藤成
『カサロ』の檻
1/3

1)アグリと言う名前

昔から人は見た目で物事を見る習性を持っている。

それは生きていく為に必要な事でもあるが、全てを見た目で決めることは無い。

人間しかり、食べ物しかり。見た目が綺麗でも中身が腐っていては意味がない。

だが、人は知らず知らず見た目で判断している事を無意識でしてしまっている。

そう、人は綺麗な物に手を伸ばさざるおえないのだ。それが、危険な事だとしても。


まだ世界が自国の領地を広げようとしている頃、私は生まれた。

緑が寒い冬を終え、目を覚まし始めた頃。私は生まれ、捨てられた。

物心がついた頃には両親の顔など覚えていない。何処で生まれたのかも、知らない。

そう、知っているのは私は捨てられたと言うこと。

身寄りの無い私を育ててくれたのは、私と同じように国に捨てられた人だった。

その人の名前は『アグリ』。

この国では醜い者の事をまとめて『アグリ』と呼ぶのだ。

名前を与えられさえしなかった。人として扱ってはもらえなかった。

仕事など与えられず、住む家さえも無い。生きていく為には自給自足しかなかった。

そんな『アグリ』達が住んでいる所で私は育てられ、生きていた。

私は「貴方の本当の名前は?」育ててくれた人にそう尋ねた。

その人は答えてくれた。「私の名前は『アグリ』だよ。この国に生まれた瞬間、そう呼ばれる事を決められたのさ」と。

私はもう一度尋ねた。「私も『アグリ』だよ?それでも貴方は『アグリ』と言う名前なの?」

その人は首を振りながらこう答えた。「君は『アグリ』なんかじゃない。『アグリ』と言う名前は君には似合わない。きっと生きていれば、君に相応しい名前を見つける事ができるはずだ」と微笑みながら答えてくれた。

この集落では皆「おい」とか「なぁ」とは呼び止めるくらいしか言わない。

本当に名前なんて存在しない。『アグリ』と言う一纏ひとまとめの名前しか。

それでも良い。ここの人たちはとても優しい。私を嫌な目で見ないし、無視もしない。

この国からは出たことが無いけれど、きっと他の国も私達は同じ扱いをするのだろう。

きっとそういう運命、人生なのだ。そうだ。きっと・・・。そう自分に言い聞かせる事、16年経とうとしていた。

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