9
地上に降りると、オルガとソルのドラゴンが主人を背に乗せたまま、真っ先にこちらへ駆け寄ってきた。
ハルもまだラッチやクロナギと一緒にスライドの背に乗ったままだったが、二頭はどしどしと足音を立てながら遠慮なく顔を近づけてくる。
右側から寄ってきた二頭がハルの右手にぶつからないように、クロナギはさっと自分の腕を出して防御してくれた。
スライドは二頭に押されて「ぎゃうぎゃう」と文句を言い、ラッチはハルの日除けショールに隠れるようにくっついてきた。オルガやソルの後ろにもドラニアス軍のドラゴンたちがたくさんいるので、珍しく緊張気味だ。
「ギャウ!」
「ぐるる……」
ドラゴンの性格はパートナーの竜騎士に似るのだろうか? オルガのドラゴンは元気がよく、強気で、ハルにぐいぐいと鼻先を押し付けてきていて、ソルのドラゴンは無表情だがごろごろと喉を鳴らし続けている。
「よしよし。約束だもんね」
ハルは左手を伸ばして、二頭の頭をなでなでした。一番を取れなかった他のドラゴンたちが、少し離れたところで拗ねているような吠え声を上げ、「うるさいって! 静かに」とそれぞれの竜騎士たちに叱られている。
そしてなでなでが終わると、ハルはクロナギに鞍から降ろしてもらった。ラッチはスライドの頭の上に移動していく。
「生きてたか。どっかで死んでるかと思ったぜ」
同じくドラゴンの背から降りたオルガにハルはほっぺをふにふにと揉まれた上で、頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。乱れた髪はクロナギが即座に直してくれる。
「うん、生きてる。心配かけてごめんね。オルガとソルも元気そうでよかった」
抱擁したい気分だが、右手が酷く痛むのでやめておく。オルガやソルの体に腕を回す事さえ、今は難しそうだ。
ハルは杖を握ったままで、右腕を体の横にだらりと垂らした。曲げたりするより、こうしておく方が痛みが少ない気がする。
血が染みてきているのか、見た目では分からないが、黒い手袋は濡れて気持ち悪かった。
「顔が青い……」
ソルがぼそっと呟くと同時に、クロナギがハルを抱き上げる。
ハルは慌ててクロナギにひそひそと耳打ちした。
「クロナギ、降ろして……! ドラニアスの皆がいるんだから。皇帝になろうとしてるのに頼りないと思われちゃう」
「お、やっと皇帝になる覚悟を決めたのか」
ハルのひそひそ話を聞いたオルガがにやりと笑った。
ハルは何となく照れくさくなる。
「うん、まぁね。だって……皇帝になれるのは私しかいないでしょ?」
「そうだ。よく分かってるじゃねぇか。離れてる間に何があったんだ?」
「色々と。後で話すよ」
「――そろそろ挨拶をしたいんだがな!」
オルガとハルが話していると、そこへ割って入ってきたのはグオタオだった。筋肉をまとった分厚い体を揺らし、ずんずんと砂の上をこちらに近づいて来る。
「ハル様、赤のグオタオ・フェニックス将軍です」
クロナギはそう耳打ちして、改めて彼の紹介をしてくれた。
グオタオはクロナギに向かって「久しぶりだな!」と言いながら力強く肩を叩くと――竜人でも痛いくらいだったようで、クロナギは顔をしかめた――次にはハルを見てドラゴンたちと同じように顔を輝かせた。
「ああ……本当に彼の君によく似ておられる! これほど感動的な事があるか? 今日は実に素晴らしい日だ!」
「将軍、気をつけてください。ハル様は怪我を――」
クロナギの忠告は聞こえていないのか、グオタオはハハハと豪快に笑いながらクロナギの腕の中からハルを奪った。
「わっ」
そしてハルの脇に手を入れると、高い高いをするようにその華奢な体を持ち上げる。
「神はまだ地上におられた! 我ら竜人を見捨てなかった! 皇帝の血は途絶えていなかったのだ!」
「あ、あの……」
グオタオの頭よりも高く抱き上げられたまま、ハルは赤面した。こんなの、子どもがあやされているみたいだ。
「よくぞ生きて、我らのもとに現れてくださった!」
盛り上がっているグオタオを前にハルは困惑した。喜んでくれているのは嬉しいが、恥ずかしくもある。
助けを求めてちらっと周囲に視線をやると、ソルは動く気配がないしオルガはニヤニヤと笑っているだけだったが、クロナギはすぐに止めてくれた。
「将軍、ハル様が困っておいでです」
「おお、そうか。つい興奮してしまった」
グオタオは大人しくクロナギにハルを渡すと、少しかさついた大きな手をハルの頬に当て、まじまじと緑金の瞳を覗き込んでくる。
ハルがじっとグオタオを見返すと、嬉しそうに頬を緩めて頭を撫でた。
そしてそんな事をしているうちに、他の将軍たちもこちらへ近づいて来た。先頭には厳しい顔をしたレオルザークがいて、その後ろにジン、サザ、ラルネシオが続いている。
ハルは深呼吸をし、クロナギの腕から降りた。やっぱり初対面の場面で抱っこされたままでは、どうにも締まらないと思ったのだ。
魔力不足と暑さとで少しふらっとしたが、自分の足で地面に経つと、しっかりと砂を踏みしめた。
レオルザークと将軍たち、そしてその後ろの竜騎士たち、皆に向かってはっきりとした声で言う。
「初めまして。私、ハルです。ハル・リシュドラゴ」
あえて父の姓を名乗った。
レオルザークの眉間の皺は深いけれど、怖くはなかった。
「皇帝になるために、ジジリアから来ました」
本来の目的はラッチを故郷に帰すためだったが、ハルの口からはそう言葉がこぼれていた。今の気持ちとして、嘘はない。
どんな反応をされるかとドキドキしていたが、三人の将軍たちはあっさりとハルの不安を消してくれた。
「歓迎する」
一番に返事をくれたのはラルネシオで、余裕ある態度のままニッと口角を上げている。
「ドラニアスの新たな希望だ」
サザは賢者のような穏やかな笑みを浮かべて言った。
「クロナギには褒賞をやらねばな」
そしてジンは腕を組んだまま、ハルを見つけたクロナギを称えた。
ハルはぱちぱちと瞬きして、思った以上に柔軟に自分を受け入れてくれた将軍たちに驚く。そんなにあっさりと認めてしまって大丈夫なのだろうかと逆に心配してしまう。
もう少し話をして、様子を見られたり、試されたりするかと予想していたのに。
けれどやはり、レオルザークはそれほど簡単ではなかった。一歩前に進み出ると、厳しい顔でハルを見下ろして言う。
「ただの人間として育ってきたお前が、ドラニアスの皇帝になると?」
その威圧感に気圧されつつも、ハルも負けじと胸を張る。
「そうだよ」
「皇帝になるにはそれなりの努力が必要だと分かっているのか。ドラニアスのために、どれほどの事ができるというのだ」
「何でもできる。これから勉強だって頑張るし、行儀作法も身につけないといけないなら、それもする。自由がなくなるのも覚悟してる。皇帝になったら今までみたいに勝手に外へ出たり、遊びに行ったりできないっていうなら、それだって受け入れるよ」
「ならば命は?」
獅子のような強い瞳で、レオルザークはハルを見据えた。
「命?」
「何でもできるというならば、ドラニアスのためにその身を捧げられるか?」
ハルはすぐに頷いた。そんな当たり前の事を改めて尋ねられるとは思わなかった。
「もちろん」
しかし少しも迷いのないハルの応えに、レオルザークは不満なようだ。
「普通、人間は自分の命というものを何より大切にするものだ。今までドラニアスとは何の接点もなかったお前が、何故ドラニアスのために命を懸けられるというのだ。生まれ育った故郷でもないのに、本当にそこまでできるのか?」
ハルは少しだけムッとして返した。
「できるよ! 自分でもよく分からないけど、ドラニアスの事は故郷のように思ってる。確かに生まれ育った場所とは違うし、まだ足を踏み入れた事すらないけど、父さまの事を聞いてから段々親しみが湧いてきて、今ではもうドラニアスをただの異国だとは思えない。――あれは、私の国だよ」
ぽろりと出てきた最後の言葉に、ハル自身もびっくりした。自分の声であって自分の声ではないような、不思議な感覚。父や、あるいは歴代の皇帝が乗り移って、ハルに言わせたかのようだった。
レオルザークもハルの口から出た言葉に驚いたようだったが、すぐにまた眉間の皺を深くすると、低い声で言った。
「それでもやはり、違う国で育ってきた混血の皇帝を信用する事はできない。ドラニアスが窮地に陥れば、あっさりと逃げるかもしれない」
「そんな事ないよ」
「口では何とでも言える」
拗ねたように唇を尖らせて、ハルはレオルザークを睨んだ。
レオルザークはずっと厳しい顔をしていたが、その緑金の瞳と視線がかち合うと気まずげに横を向いた。
「子どもの喧嘩か」
ラルネシオが諌めるようにレオルザークの肩を叩いて、ため息をついた。
ハルは気を取り直して、今度はグオタオに向き直る。レオルザークを説得するには時間がかかりそうだから、先にアナリアの事を片付けてしまおうと思ったのだ。
「あの、グオタオ、将軍、さん」
呼び捨てではまずいかと思ってどんどんと付け足していったら、片言で話しているようになってしまった。
「グオタオで構わん。将来の皇帝だ」
「じゃあ……グオタオ。あのね、知ってるかもしれないけどアナリアが――」
「そうだ! わしはアナリアを助けねばならんのだッ!」
グオタオは思い出したように、急に大きな声を出した。ハルは驚いてビクッと肩をすくめる。
「おい、お前たち、急いでドラゴンに乗れ! 我が娘を取り返しに行かねば!」
どすどすと砂を踏んで自分のドラゴンのところへ駆け戻ると、赤の部下たちにそう指示を出してから自分も騎乗する。
「俺も行く。アナに術をかけた野郎、ぶっ殺してやる。ソル、お前もここにいたってする事ないだろ。ついてこいよ。ハル、後でな」
「うん。アナリアを捕まえたらここへ連れて来てね。私が解術するから」
オルガは怖い顔をしてソルと一緒にグオタオを追った。そして赤いドラゴンの一団と空へ飛び立ち、ラマーンと交戦中のサイポス軍のところへ向かっていく。
これだけ竜騎士たちがいれば、アナリアを確保する事はできるだろう。そうしたら後は自分が解術を施すだけ。
アナリアを助ける算段がついてハルが少し安堵していると、今度はレオルザークが無言でドラゴンに乗ろうとしていた。
当初の目的通りルカを殺しに行くつもりなんだと気づいて、ハルは慌てて走り出す。
「ハル様!」
しかし疲れの溜まった体で砂漠の上を走ったら、砂に足を取られて転んでしまった。
杖を握ったままの右手を自分の体で押しつぶしてしまい、声にならないうめき声を上げる。今ので縫ってもらった傷が開いたかもしれない。
冷や汗をかきながら、痛みが収まるまで転んだ格好のままで固まっていると、クロナギがそっと抱き起こしてくれた。
「次期皇帝は具合でも悪いのか?」
「腕が痛むのだろう、さっきから庇っている。見せてみろ」
「クロナギ、お前がついていながら何やってんだ」
サザ、ジン、ラルネシオが順番に言いながら、心配そうにわらわらと周りに集まってきた。
「血の匂いがするな……」
しゃがんだジンがハルの黒手袋を取ろうとしてきたので、とっさに拒否する。
「待って。触らないで。今はだめ。アナリアを助けてからでないと」
右手は少しでも動かせば電撃が走ったように痛む状態なので、今、手袋を外し、杖を離してしまったら、再び握るのは難しい。しっかりした手当てを受けるのはアナリアを助けてからだ。
「レオルザーク」
ハルは痛む右手を庇って青い顔をしたまま、ジンとラルネシオの間から、少し離れたところにいるレオルザークを見た。
彼はまだ出発しておらず、ドラゴンの横に立ったままこちらを見ている。険しい顔をしているのは、もしかしたら少しはハルを心配してくれているのかもしれない。
「ルカを殺さないで」
クロナギに支えられて砂の上に座ったまま、ハルは言った。
「ルカはラマーンの人たちと一緒に私を助けてくれたの。それに魔術を教えてくれたし、だから私はアナリアを助ける事もできる。ルカがいたから私はドラニアスと向き合う事ができたし、父さまの後を継ぐ決意ができた。それに……」
そこで息が続かなくなったので、一呼吸置いてから続けた。
「ルカはラマーンの王様になるんだよ。彼は父親のようにはならないし、ラマーンにはもう彼しかいない。ドラニアスに私しかいないように。だから殺しちゃいけない。父さまを殺された事が許せなくても、落とし所を見つけなくちゃ」
喋っていると疲れからか眠たくなってきて、ハルは目を閉じた。まぶたが重くて持ち上げていられない。
ラルネシオはクロナギに向かって小言を言っている。
「クロナギ、どういう事だ。なんでうちの次期皇帝はラマーンの王子に心を砕いてる。何故二人を接触させた」
「クロナギのせいじゃない……」
まぶたを持ち上げるのが億劫で、目を閉じたまま訴える。
ラルネシオがいる方へ左手を伸ばし、抗議のために服を引っ張っると、彼はその手を取って自分の手で優しく握り込んだ。グオタオほど熱くはないが、やっぱり大きい手だ。
「オルガからも少し聞いたが、クロナギが知っている事も詳しく説明してくれ。彼女とラマーンの王子はどこで出会った?」
サザが静かに尋ね、クロナギが説明を始める。赤い飛竜に攫われたハルを見つけて助けたのが、どうやらとある集落に身を隠していたルカだったらしい、というところから。
(やばい、寝ちゃう……)
クロナギの声は落ち着くのだ。子守唄のように眠りへ誘ってくる。しかしここで眠ってしまえば、丸一日は目を覚まさない自信があるし、そうなればアナリアに解術をかけるのが遅れてしまう。
「レオルザーク……」
レオルザークがルカを殺しに行かないか気になって、ハルは再びその名を呼んだ。するとラルネシオが気を利かせて、ハルの左手を軽く持ち上げ、からかうようにレオルザークに呼びかける。
「レオルザーク、手を握っててやれ。お前が王子を殺しちまわないか心配しているようだ」
目を閉じていたのでレオルザークがどんな顔をしたのか分からなかったが、ドラゴンに乗って飛び立つ音もしなければ、こちらに近づいてくる足音もしなかった。どうしていいか分からずに、そのままその場に留まっているようだ。
ラルネシオが冗談交じりに言う。
「ああいうレオルザークを見るのは面白いな」
サザたちとフッと笑い合ってから、またルカの話題に戻る。将軍たちはルカの人となりを知らないようで、本当にハルが言うような人物なのかとクロナギに尋ねていた。父王や他の王族の事を反面教師にしているのなら、処刑までしなくてもいいのではないかと話し合っている。
「次代が言ったように、落とし所を見つけるのも大切なのかもしれないな。末の王子に限ってはラマーン国民から愛されているようだし、あまりやり過ぎると遺恨を残す」
「残ったところで我々に不都合はない」
「いや、不都合なら少しある。王子を殺せばラマーンから恨まれるだろうが、いずれこの子が――次代がそれに対処しなければならなくなる時が来るかもしれない。殺されたから殺してと、ずっといがみ合っていくのではなく、どこかで終止符を打たないとな」
サザ、ジンに続いて、ラルネシオが発言する。一方、その三人とクロナギに囲まれて目をつぶっているハルは、うとうとと眠りに落ちようとしていた。
(だめだ、起きないと。せーのでまぶたを持ち上げよう。せーの……)
と自分で掛け声をかけつつも、朝、ベッドの中でまどろんでいる時と同じように、なかなか目を開けられない。
「お、早いな」
するとその時、ラルネシオが空を見て呟いたようだった。たくさんのドラゴンたちの羽音が聞こえ、それと同時に男の悲鳴がハルの耳に届く。
「ひぃ、やめろ! 助けてくれっ!」
ハルはぱちっと目を開けた。この声は知ってる。
上半身をしっかり起こして、ハルも空を見た。赤いドラゴンの一団が、もうアナリアを見つけて帰ってきていたのだ。
先頭を飛んでいるグオタオは拘束したアナリアを抱えていて、オルガのドラゴンは三つ編みの魔術師を足で掴んでいた。体を縛られて杖も取り上げられているのか、魔術も放てないようだ。
ヤマトとコルグも、赤の竜騎士と二人乗りして無事に戻ってきた。
「アナリア、ヤマト、コルグ!」
ハルはクロナギの手を借りながら立ち上がった。グオタオたちが着陸したところへ、今度は転ばないようにしながら急いで向かう。
「離して!」
「じっとしていろ、アナリア。暴れんでくれ」
アナリアは体の後ろで手首を縛られていて、グオタオはおろおろと太い眉を下げてアナリアを諌めている。
しかし何を言っても無駄だ。今のアナリアはグオタオが自分の父親である事すら分かっているかどうか。
「てめぇも大人しくしてろ。みっともなく泣き喚くくらいなら、最初から竜人に手ぇ出してんじゃねぇよ」
オルガはいつものような陽気さを捨てて、地を這うような声で三つ編みの魔術師に凄んでいた。
「ひッ……! アリシュネフィト! 早くこいつらを何とかしなさいっ! 私を助けるのです、早くッ!」
拘束されたまま、魔術師は砂漠に膝をついた格好で叫んだ。必死の形相で、暑さのせいか冷や汗をかいているのか、前髪は濡れて額に張り付いている。
しかしこんな情けない姿を見せていても、今のアナリアにとってはこの男が主人なのだ。アナリアは三つ編みの魔術師の声に応えて、グオタオの腕の中でさらに暴れ始めた。
「黙れ」
オルガが殴ると三つ編みの魔術師は倒れたが、アナリアは制御できないままだ。
「ああ、アナリア、なんという事だ。竜人の誇りを思い出せ」
「グオタオ、今のアナリアに説得は通じないよ。精神力だけで術は解けない」
「おお、次代よ、アナリアを助けてくれ……。わしは魔術はさっぱりだ」
駆け寄ってきたハルに、グオタオは弱々しく訴えた。娘の事となると動揺してしまうようだ。
魔術師をソルに任せて、オルガもこちらへやってくる。彼の頬には赤い線が走っていた。
「それ、どうしたの?」
「アナに切られた」
ハルの問いに、オルガは明るく笑って答えた。少し嬉しそうなのは何故なのか。
「ところでハル、お前、解術するっつってたけど本当にできんのかよ。お前が魔術使ってるとこなんて見た事ねぇぞ。あの魔術師を殺した方が早ぇんじゃねぇのか?」
「魔術師を殺してもこの術は解けないよ。まぁ見ててよ。大丈夫だから。練習したの」
「練習したって、お前……」
魔術初心者であるハルが本当に解術できるのかオルガは不安なようだったが、ハルは自分に自信があった。一度掴んだ解術のコツは、成功から数時間経ったくらいでは忘れそうもない。
「アナリア、すぐに元に戻してあげるからね」




