豊かな日常の鼓動。 伍
まだ序盤。
いつ終わりを迎えるのかわからないくらい先が長い...
10章ワンセットで...6...が...で...だから...
おっと、手が滑ってしまった。
飛び降りた母は地面にぶつかる前に消えた。
僕は窓を割る必要があったのか、そう思いながら窓の外を眺める。
窓の外に広がるこの世界は狭い、ここからでも全ての境界が見える。
全ての境界へは徒歩で2時間位の距離しか無い。
時間で表してしまうととても短く感じてしまう。
しかし、これだけしかない狭い世界がどうして存在しているんだろうか。
他の世界もここと同じように、狭いのか。
そして、どこか寂しいのか。
まぁ、僕がどうのこうの言っても仕方ないかな。
心の中でそう呟くと、後ろからギュッとヘリオが抱きついてきた。
僕は動かずただじっとして、しばらくの間ヘリオの好きなようにさせた。
しばらくしたら離れてくれたが、やばい、足痛い。
流石に10時間ずっと立ちっぱで何にもしないのはキツイ。
ヘリオはというと、とてとて歩いて寝室へと向かっていってそのまま帰ってきていない。
いや、まさかとは思いますけどね、まだ昼ですよ?
いや、もしかしたら昼寝って可能性もありえるよな、そうだよな、そうであれよ!?
寝ている可能性もある彼女がいる寝室へと足音を立てないようにゆっくりと近づいてゆく僕、別に自分の家の寝室に行くだけなのになぜか緊張してしまう。
寝室の前に着いたが入るのが怖い。
しかし!
ここまで来たのならばもう、男として逃げることはできない!
ドアノブに手を掛け、ゆっくりとドアを開ける。
その先にはダブルベッドがある、しかし、肝心のヘリオがいない。
どこにいるのかと思い、ゆっくりと部屋へと入ると勢い良くドアをが閉じ鍵が締まる。
「イギャァアァァァァァァ!!」
びっくりしてベッドまですっ飛ぶ僕。
「そこまで驚く必要はないじゃろ...」
隅にちょこんと体育すわりで座っているヘリオがそうつぶやいた、そんな彼女の表情はどこか沈んでいる。
「どうしたんだヘリオ?」
「黙秘するのじゃ」
「何か言ってくれないと何にもわからないよ」
...返事がない。
良く見ると彼女は軽くうつむきながらも、顔を真っ赤にしてチラチラと視線をこちらに向けているのが確認できる。
やはりかわいい。
やっべぇドキドキしてきた。
もしかして部屋の隅で待ってんの?
僕が来るの待ってんの?
なんでさっきっからチラチラこっち見てんの?
僕獣だよ?
ガオーってやっちゃうよ?
いいの?
近寄ってガオーって言ったら滅茶苦茶怒られました。