豊かな日常の鼓動。 参
「…大罪の巫女とは全員で七人おる」
彼女はゆっくりと話し始めた。
「妾もその一人なのじゃが…2人ほど、一度もその姿を見たことがない奴がおるのじゃ…」
彼女はとても複雑そうな顔をしている。
おそらく、僕の問いかけにできる限り答えようとしているんだと思う。
言葉を少しづつ選んで、慎重に。
しかし、再び言葉を発する前に何者かが遮ってしまった。
「今、いいかな?ダメかな?まぁなんだろうと話始めちゃうけどー!!」
あはははと笑っている、僕らの会話を邪魔したのは身長が170cmくらいの女の子だ。
はじめからそこにいたかと思わせる位、自然にそこにいる。
一体何者なのだ?
考えが頭の中で交錯し、言葉が出ない。
「…こッ…狐咎!?どうして主がここにおるのじゃ!?」
ヘリオは少女を指さして、狐咎、とはっきりそういった。
「なんでだろーねー!不思議だね!でも教えてあげなーい!」
やたらとテンションが高い彼女…もとい狐咎は掴みどころが全くない。
しかしこの感覚は、彼女を知っている気がする。
どこかであったことがある気がしてたまらない、それも十年以上も前の話だが。
十年以上も前?
そんな…まさか…
「…母さん…なのか…?」
「ぴんぽーん!せいかーい!よくわかったねー!すごいすごい!それでこそ我が息子だよー!」
僕は母さんのことをよく覚えていなかった。
幼い頃に母さんは姿を消したからだ。
それからは施設で育てられて今の僕がいるわけだが。
そんなことはわりとどうでもいい!
「うぉらあ!」
僕は勢い良く母さんを殴った。
勿論、腹が立っていたからだ。
「痛いよー自分のおかーさんを殴るなんてひどいよー」
「いや違うね!息子をほっぽって居なくなった母さんのほうがひどいね!!」
「いやー悪いねー許して欲しいなー」
僕は不真面目な母を見て非常に腹が立った。
その苛立ちを放つよりも先に
「誰が許すものか!!」
ヘリオに言われてしまった。
「あー怖い怖い、で、それで、ヘリオちゃんは何が聞きたいのかなー?なんでも答えちゃうよー」
「妾が何を聞きたいのか、それはもう知っているのではないかの、のう、狐咎よ!!」
狐咎と呼ばれた母は不気味に笑った。