第6話
「許嫁…って、どう言うことだ?フアがどっかの国の姫様だってことは聞いていたが…」
流石に俺も動揺を隠せなかった。
「昔の話です。今はフア・スカレムで太刀のもと奴隷です。許嫁は父が勝手に決めた物で、国が潰れた時に取り消されました。」
「でも、貴女はクルセイド家の姫、それは切っても切れない物」
「もう、その過去は捨てたんです。クルセイドと言う独裁者の娘としての名は!」
どうやら、フアはクルセイドと言う名をきらっているらしい、深いわけがあるようだが、深入りはしない方が良さそうだ…
「ですが、貴女との婚約は継続してますよ。
まだ、貴女はクルセイドであり、私の許嫁なのです。」
冷たい目線で不敵に笑いながら、フアを蔑むかのように言う。
ーーああ、こいつは敵だ
どうやら最近、俺はキレやすいらしい。
「お前、いい加減にしろよ…」
俺はクラストの肩をつかんだ。
感情に任せて行動してしまった。
状況的には一番まずいだろう。
「触るな!この汚物が!」
「ブーメランって、知ってるか?」
「どう言う……っく、貴様!」
どうやら意味を察したようで、クラストは逆上した。
「俺に汚物を触れせるような事をしないでくれるかな?」
あえてお願いするように、皮肉気味に言う。
「貴様!こんな事して許されるとでも思っているのか!こっちは国を味方につけているんだぞ!」
どうせ、ハッタリだろう。
そう思ったがあえて俺は怯えるようにした。
「ま、マジかよ…そんな……」
「ふふふ、貴様もその程度さ!そうだな……
許して欲しいならフアをこちらに引き渡してもらおうか」
やはり、そうくる。
なら、ここからが、パクリスペクト祭りだ!
「だが断る!」
驚いてクラストはたじろぐ
「この天野太刀のry」
「くっ!貴様!今の怯えていたのは演技か!」
「ふ…かかったなアホが!」
「くう!人をこけにしおって!」
「やっちゃったぜ☆怒っちゃやだぜ☆」
「覚えておけ!こっちは国を味方につけているんだからな!」
クラストは逃げるようにして帰っていった。
フアに声をかけようとしたが、どうやら相当クラストが嫌いなのか今だに、顔を伏せている。
そして一時間後、俺と葉弥先輩は飲み物を買うために控え室から出ていた。
そして帰って来ると。
「一体、なんなんだこれは…」
控え室の中は荒らされており、クルアや優華ちゃんが倒れていた。
「おい!大丈夫か!クルア!」
「優華!外傷は無いな、気絶させられているだけか…油断していた…」
少しだが煙のにおいがと何か薬の臭いがする。
「そうか、あいつの仕業か…おそらく、相手は本当に国を味方につけているみたいだな…
伝説の傭兵でもやっとったのか?」
クルアと優華ちゃんをソファーの上に寝かせておく。
「他のフアや鍵葉先輩達は?」
「ここにいるわ、なんなのよ…これ…」
話によると鍵葉先輩とフロウはトイレに行っていたらしい。
目覚めたクルアに話を聞くと。
突然スモークグレードを投げ込まれ、混乱してる間に、睡眠薬を投げ込まれ、フアと小雪が連れ去られたらしい。
ーー完全に油断していた。ハッタリじゃ無かった。
国を相手にどう戦えってんだよ…
そこにあったのは完全なる絶望だった。
そして、追い打ちをかけるような放送が流れた。
『決勝戦を行います。選手はって何するんですか貴方!きゃあ!…天野太刀!俺は今ここでフアとの結婚式を上げる。フアは今、催眠術により俺の支持には絶対に従う。せいぜい指を咥えて見ているんだな!』
放送は控え室限定でながれている。
みんなが立ち上がる。
「何…それ…」
優華ちゃんが信じられないと言うように驚愕の声を上げる。
「葉弥!止めないと!」
「わかってる!おい!太刀!行くぞ!」
鍵葉先輩も葉弥先輩も相当焦っているようだ。
「無理ですよ。国を相手に戦うなんて。俺ら完全に悪役でしょう、結婚式を止めに行ったら。」
「でも、こんなのおかしいにゃ!」
「でも…」
俺は動くことが出来なかった。
きっといつもだったらすぐに助けに行っただろうだろう。
しかし、俺はこんな事を考えてしまったのだ。
あいつとフアが結婚すれば、あいつは幸せになれるんじゃないかと。
考えてみろ、金があって、イケメンで、国なんて味方があって。
俺なんかよりあいつといた方が幸せになれるだろう。
いや、俺はそれを言い訳にして動けなかっただけだ。
結局、怖いのだ、自分が一番なんだ。
「もういい、行くぞ」
冷たい目線を俺に向け、葉弥先輩は会場に走って行った。
他のみんなも走って行った。
最後に俺と何故かクルアが残った。
「…本当にいいの?」
「ああ、勝てるわけが無いだろ。特殊部隊一つにしても、あいつの腕輪はレベル9だった。そこに現代兵器を加えて。敵チームを咥えてみろ。勝てるわけ無いだろ。」
「……もし太刀がフアがクラストと結婚すれば幸せになれると思っているなら……それは間違い。」
「なんでそう言えるんだよ」
「……フアは…クラストを嫌っている…いくらお金があっても、地位が高くても…好きな人じゃ無いなら幸せになれない…多分太刀は……怖がってる……だけ…でも…思い出して…」
クルアは俺の隣に座って、手を重ねて来た。
「……太刀は…あっちの世界で…奴隷制度をなくすのに……何をしたの……」
「俺は…フアを見て、奴隷制度無くさなきゃと思って、奴隷制度推進国相手に…あ!」
そういえば俺って、大国相手に戦ったんだった。
「……思い出した?…貴方は国を相手に戦ってる…そして今のフアはどんな状況?」
今のフアは…
「操られて、無理やり結婚させられそうで、全部言いなりで……これ…もう奴隷じゃ無いか。」
「ね?」
やっと気がついた事を喜ぶような笑顔だった。
ーークルアの笑顔なんて久々に見たな、やっぱ可愛いな。
「クルア、ごめんな、平和ボケしてたみたいだな、やっぱ、まだまだだな…俺も、ありがとうな、クルア。」
「……よかった。行こう。」
「ああ!」
俺とクルアは会場に向かった。
そこは、死屍累々と言うかなんと言うか。
ボロボロだった……敵が。
観客は人形のように微動だにしない。
催眠術にかかっているようだ。
結婚式はまだ始まってはいない。
ダダダダダダと銃を撃つ音がする。
敵か?と思い構えるが、そこには葉弥先輩が敵から奪った銃を使い魔法弾を連射していた。
「ひゃっはぁぁぁぁぁぁ!」
ーーうわ、こっわ
「おう、やっと来たか、待ってたぞ!」
「すみません。お待たせしました。」
「今度何か奢ればゆるす」
「それは…『やっと来たか』
俺の言葉を遮るようにクラストの声がひびいた。
辺りを見回すと、放送席のところに、クラストとウェディングドレスを来たフアがいた。
「フア!」
俺が読んでも反応が無い。
「抑えろ!」
敵の部隊の誰かが叫んだ。
「がっ!離せ!くっそ!」
フアに気を取られている間に、俺とクルア、葉弥先輩がとりおさえられてしまう。
助けを呼ぼうにも、鍵葉先輩やフロウ、優華ちゃんは他の敵で手一杯。
『さあ、ショーの始まりだ。』
クラストが指を鳴らす。
するとフアが辺りをキョロキョロ見回した後、こちらに気がつき、放送席の窓を叩く。
小さいながら、俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
観客も催眠術にかかっていたのが解けて、騒ぎ出した。
クラストがフアに何か声をかけている。
俺は何と無くで言っていることを読みとった。
「あいつらを殺されたくなければ、俺と結婚しろ。さもなくば奴らを皆殺しにする。」
そう言っているようだった。
ーーくそ!卑怯な。
「ダメだ!フア!」
声が届いたのかこちらを見た。
そして、微笑んでこう言った。
「さようなら」
その頬には、一筋の涙が…
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は魔力を解放した。
いや、したと言うよりは、してしまった。
回りの敵兵が吹き飛ばされる。
葉弥先輩やクルアを抑えていた兵士も吹き飛ばされる。
「あーあ、もう、仕方ないな〜」
葉弥先輩も呆れながらもレベル10を超える魔力を出す。
「クルアはここで待っててくれ。」
「……わかった。…無茶はしないで…」
俺は頷き葉弥先輩と走り出した。
「ここは通さない!」
敵チームの奴らが出て来る。
「邪魔だ!」
回し蹴りを腹に打ち込む。
そして、吹っ飛んで行った。
「ブレイクグラウンド!」
魔法を使って来たが。
「効かないね!」
葉弥先輩が術者にチョップをし気絶させる。
「なんだこいつら、話が違うぞ!」
敵チームは慌て出し、逃げる物もいた。
「馬鹿め、俺に勝てるものか!」
大柄な奴が前に出てくる。
2人で蹴りを入れるが、
「何!効かない!」
「俺の能力は硬質化、その程度効かないのさ!」
足止めが入る、まずい。
急がないと。
「ここは任せろ!」
後ろから誰かが飛びかかる。
それは、敵のチームリーダーのフリューゲル・クルペインだった。
「すまない!恩に着る!」
「こちらこそ、弟がアホなことをした。だから、止めてやってくれ!」
「もちろんだ!」
再び走り出した。
そして
「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」
2人で放送席に突っ込んだ。
中では、
長い間クラストが長々とプロポーズをし、返答がないまま勝手に誓いの言葉だかなんだかまでやっときていた。
「時間がないので、略します。ええと、フア・スカレム・クルセイドはとりあえず、誓いますか?」
適当だな…とフアは思った。
半分諦めていた。
間に合わないだろうと、そして後悔もしていた。
思いを、伝えておけばよかったと。
重い口を頑張って開き、口にしたく無い言葉を言う
「…誓いま「せぇぇぇぇぇん!」
言葉を遮って入ってきたのは、ずっとフアが待っていた。
天野太刀だった。
転がり込んで早々にクラストをぶん殴った。
そう、反射的に。
「太刀!」
「フア!何かされて無いか!?」
「はい!今の無駄に長いプロポーズを延々と聞かされてやっと誓いまで言ってもうダメかと思ったところを助けてもらったので大丈夫です。」
ふぅ、と安堵の息を付く。
「フアが何かされたら、国を潰すとこだった」
「ええ!ダメですよ!そんな事しちゃ!」
「はは、冗談冗談」
笑いながら、フアを諭す。
「でも…嬉しかったです!ありがとうございます!」
フアは顔を真っ赤にして笑っていた。
流石に素直に褒められると恥ずかしい。
「おーい!二人ともとりあえずこいつをとっちめるよ」
葉弥先輩に呼ばれはっとする。
「すみません!…それで、どうします?こいつ?」
「どうしようにもな〜気絶してるし…」
クラストは殴られたまま吹っ飛んで、壁に逆さになって倒れていた。
歯は何本か折れ、鼻血も出ている。イケメンが台無しだ。ザマァ。
司会と言うか式の進行役みたいな人はいつの間にか逃げていた。
「これじゃ、攻撃してもね、とりあえず脱がして連行するか」
俺は葉弥先輩の案に賛成し、服を脱がして二人で担ぎ上げた。
外では戦闘は終了し、部隊も引き上げていた。
「はいよ!弟さん一丁!」
葉弥先輩はクルア達と片付けをしていたフリューゲルにクラストを投げ渡した。
「本当にすまなかった!うちの弟が!この詫びは後日きちんとする!本当に申し訳ない!」
フリューゲルは何故かクラストの上に乗って土下座をした。
「いやいや、いいですよ。フアは無事だし、皆久々に暴れられたし。な、フア」
「はい、大丈夫です。」
「恩に着る。ありがとう。」
フリューゲルは深くお辞儀をした…クラストの上に乗りながら…
それから一週間後、俺らはいつも通りに暮らしている。
誕生日プレゼントでは、フリューゲルにお願いして調理器具を準備してもらった。
まあ、何故か俺の渡したぬいぐるみの方が喜んでいたが…
皆に手伝ってもらって選んだおかげかな?
クラストはフリューゲルに毎日犬のように働かされているらしい。
多少は反省したと聞く。
そして、俺と葉弥先輩の能力レベルは元に戻されてしまった。
今日ものんびりダラダラと皆で過ごしている。と思う。
無理やりな締めになってしまいましたかね?
それと、読みやすいかと思って少し間隔を開けるようにしましたが前のとどちらが良いでしょうか?