君の瞳に映る色
あぁ、今日もカッコイイ。
そんな事を想いながら私は、一番前の席に座ってる彼を見る。
私の席は彼の席から真っ直ぐ斜めにあり、丁度、境目になっていて他の生徒達の隙間から彼が見える。
私が彼に恋をしたのは一年前の五月。
蝉の泣き声がうるさい公園で、私は友達の前で彼に告白した。
もちろん、返事はすぐにはもらえなかった。
一日が過ぎようとした頃。
彼は私に一枚の紙を差し出した。
“syo-ta.522@xxxx.xx.xx”
書かれてたのは、彼のメールアドレス。
(メール、してもいいのかな?)
『杏です。』
何気なく一文・・・送ってみた。
・・・30分考えて、こんな一文しか送ることができなかった。
♪ピロリーン♪
・・・・・ドキッ。
私はケータイを開く。
“メインフォルダ”に新着メール一件。
こんなの初めて。
ただメールを開くって簡単な動作のはずなのに、
彼からのメールを開けるのはこんなにも難しい。
・・どうしちゃったんだろう。
胸の鼓動が鳴り止まない。
私は震える指でなんとか彼からのメールを開いた。
彼からのメールも一文だけだった。
でも、その一文だけで、私の顔は喜怒哀楽・・・
涙がこぼれた。
『付き合ってもいいで』
涙って、うれしい時もでるんだ。
悲しい時、悔しい時、怖い時・・・
涙にはそれぞれの意味がある。
私は改めて実感した。
それから一週間。
「翔太!遅いよ。」
「ごめんって・・・」
私は彼に向かって顔を膨らます。
彼はちょっと困った顔で必死に謝る。
私には、それすらも幸せで。
このまま続けばいいなって。
続くって勝手に思い込んでた。
「お邪魔しま~す・・・」
私は彼の家の玄関で小さく呟いた。
「あら。いらっしゃい。」
「こんにちは」
彼のお母さんは私を見てちょっと驚いた顔をしたけど、にっこりと笑って家に招き入れてくれた。
「母さん、勝手に部屋入ってくんなよ」
「はいはい、ごゆっくり。あ、後でお菓子と飲み物持って来るね」
私は彼のお母さんに軽くお辞儀をした後、彼が居る部屋に入った。
「ぅわぁぁぁあぁぁ~」
初めて入る彼の部屋。
彼の香りでいっぱいだった。
彼は座ってゲームをしだした。
私は彼にくっつくように隣に座る。
「何のゲーム?」
「・・・喧嘩番長」
「へぇ~・・・おもしろいの?」
「・・・やってみる?」
「ぇ!?・・・ううん。下手だし・・・」
コンコン
ノックの音がする。
彼のお母さんが入って来て、机にお菓子と飲み物を置いて出て行った。
私は、緊張のせいか喉が渇いていた。
さっき彼のお母さんが出してくれた飲み物に目を向ける。
(・・・飲んでも・・・・いいよね?)
私はコップを手にとり、カルピスウォーターを飲む。
彼は未だにゲームをしている。
私はさっきの位置に戻って、彼がしてるゲームを横から見ていた。
なにもしないで時間は過ぎた。
ゲームの音だけが部屋に響く。
「テレビゲーム、2人で出来るやつする?」
彼が手に持っていたゲームの電源を切り、テレビの電源をつけた。
「操作の仕方は・・・」
彼が丁寧に教えてくれたけど、私の耳には届いてなかった。
だって、大好きな人がここに居る。
そう思うと、なんにも集中できなかった。
時間は過ぎ、とうとう帰る。
彼は家まで私を送ってくれた。
彼と私の家は徒歩で20分、自転車で10分くらいの所にある。
彼と私は、そんなに会話しないまま家に着いた。
「じゃぁな」
そう言って戻ってく彼。
「また明日、学校で」
彼は笑って手を振った。
私は彼の背中が見えなくなるまで眺めていた。
これが、そう
初めてのデートだった。