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ヨーグルトは美味しい。

作者: ノペッラ棒

 時は平成、舞台はT市の凡高校。

……だったはずだが、もう既に凡高校ではない。

 今、この高校は北練と南練に分かれて冷戦中だ。北練で構えているのは《プリン国》。そして南練で構えているのは《ゼリー国》。皆はまだこの二つの勢力しかないと思っているがこの小説の主人公である私はプリン国にもゼリー国にも属さない新しいまだ公になっていない国、《ヨーグルト国》の一員である。むしろヨーグルト国のリーダーである。というかヨーグルト国の創設者になる男である。ちなみに拠点地は別館の図書室を使う予定だ。


 そもそもなぜプリン国とゼリー国ができたかというと……いまや知る由もない。

もうすでにプリン国とゼリー国の創設者(私から見て先輩にあたる人)はこの学校における取締役、《教員》の下にひれ伏したのだ。……と言うのは彼らの見栄で、実際はただの退学である。つまり両国のリーダーが違う人に変わっていて、私は退学した創設者とは接点が無いのだ。でも祭りごとが大好きな私はヨーグルト国を考え、図書室を拠点として便乗したのだ。否、今からするのだ。


 以下はこの三国の戦争の様子を見る私の物語である。もし興味があるのならば、読者諸君もこの戦争、《プリン・ゼリー戦争》に加わると良い。できればまだ公になっていないヨーグルト国に入国することをお勧めする。手厚く歓迎をしよう。


 今、私がすべき事……とりあえずはプリン国からヨーグルト国の人へ移転させる必要がある。

プリン国は比較的に大人しい性格の人が多めだ。それに対してゼリー国は性格がややきつめの人が多い。ちなみにヨーグルト国の人は皆天才のうえ、素直でさらに紳士な人しかいない。というか先ほども述べたように私しかいない。ちなみに決してこれは自画自賛の産物ではないから、あしからず。


 私は通りすがりの人に話しかけた。

「ちょっとそこの君おいで」

「ナンスか?確か三年の先輩でしたっけ」

「うんうん、その通りだよ。君はプリン国の人だよね?」

「ええ、そうッスけど」

「やっぱり!プリンを運んでいるから解ったよ。バケツで……」

「なんで倒置法ナンスか?」

「まあまあいいからこっちおいで」

私は図書室の隣にある倉庫の裏に連れ込んだ。ちなみにその倉庫の大きさはというと……六十畳はかるくこせる。あまりにも大きすぎて工事ミスか依頼ミスとの噂も流れていた。

「ん?この匂いはプリンの匂いッスね」

「よく解ったね。実は今日から先輩プリン国に入るのだよ」

もちろん嘘も嘘、大嘘である。

「それで今日はプリン国の人がどれだけプリンを愛しているか調べたいわけ」

「解りましたよ、先輩。とにかくプリンを食べさせる訳ですね?」

「そう、その通りだよ」

「OKッス」

彼はいきなりバケツに入っているプリンを抱えるようにして飲み干した。

「やっぱうまいッス」

彼の目は「極上だ!」と言わんばかりの目だった。

「そうかそうか」

と頷きながら私は倉庫を開けた。中には大量の風呂桶。そして風呂桶の中には大量のプリン。

頭の良い読者諸君はもう理解できただろう。

「さあ、食べたまえ」

「……いただきます」

そう、これは《一週間連続でカレーは流石にきついよ》の法則である。

まず大量のプリンを食べさせ、もうそろそろ限界みたいだと思ったら少しのヨーグルトを食べさせる作戦である。この作戦は、ゼリー国の人にも有効である。

ちなみに戦争の費用は倉庫の中のものを売って作り出したからこんな事ではなくならない。


 少しプリン国とゼリー国のやり取りを見せておこう。あまりのくだらなさに仰天しないように気を付けていただきたい。

 ゼリー国のリーダーが言った。

「お前プリンが一番とか馬で鹿だな。つまりは馬鹿だ。いや、それ以下だ」

それに対してプリン国のリーダーは言う。

「ゼリー?フフフ、何を言ってるのですか。プリンが一番でしょうが」

と、そこに教員が来た。

「君達……いい加減に和解したらどうだね?」

「あの馬鹿が降伏したらな」

「降伏すべきなのは、あなた方でしょう?」

「なんだと?」

「喧嘩でもするつもりですか?殴れば良いじゃないですか」

「やめないか君達!」

その様子を陰から見ていた私は思った。そしてボッソと呟きながら帰った。

「こいつら二人とも阿呆だ」

 時が経ち……といってもまだ三日しか立っていないが、ヨーグルト国の本拠地、図書室はとんでもない事になっている。私は朝学校に来て手を挙げてこう言った。

「おはよう諸君」

その言葉を聞いて図書室にいるだいたい百五十人の(ヨーグルト国の)国民は口をそろえて返した。

「おはようございます!ヨーグルトキング!」

「うむ」

あの《一週間カレーは流石にきついよの法則》を三日間続けて行うと、一人(俺)から一人増えて二人に、二人から四人に、四人から八人に……それを繰り返していけば六十四人から百二十八人になったりと、かなり増やせるのだ。中には同時に3人くらい仲間を増やす国民もいる。しかし当然ながら断られる国民もいる。その結果、必然的にヨーグルト国は公のもになった。しかしそんな事でヨーグルト国の者はうろたえない。いまやヨーグルト国はプリン国やゼリー国に対抗できる力を持っているからだ。ちなみにこの戦争の名前は《プリン・ゼリー・ヨーグルト戦争》に変わった。


 ある日、ついに冷戦状態から熱戦状態になった……と噂された。動き出したのはゼリー国である。プリン国の冷蔵庫の中身をプリンからゼリーに変えたのだ。否、変えようとしたのだ。ゼリー国の使者が北練に忍び込もうとしたのは夜の話で、そのときよく前が見えなかったのか知らないが間違えて職員室の冷蔵庫の中身をゼリーだらけにしたのだ。それにしてもその使者、冷蔵庫の中にプリンがない事に気がつかなかったのだろうか。なんにせよ、厳しい処罰が下されるのは私が天才なのと同じくらい火を見るより明らかである。……再度述べるが自画自賛ではない。



 ゼリー国が動き出してから二日かけて教員が全ゼリー国国民の親に今回の件を連絡してゼリー国は早くも滅亡した。しかし何故だろう。私が教員ならこんな大きな事になる前に戦争が始まった時から直ぐに取り締まるだろう。それに……何故だか教師は注意したくても立場的に注意しがたいと言わんばかりの態度をとっている。まあ、もうじきヨーグルト国が学校を統一するから関係無いといえば関係ないのだが……どうも突っかかる。でも私は面倒くさいので調べる気はない。読者諸君も気にしなくて良いと私は思う。


 ゼリー国が滅亡して二日後、学校にとんでもない奴らと謎の人が来た。というか図書室に来た。そいつらはこの戦争を引き起こした張本人、プリン国とゼリー国の創設者と……誰だこのちょび髭スーツのおっさんは?

「やあやあ君がヨーグルトの創設者かね?」

「ええ、はい」

いきなり話しかけてきたけど誰だ?後ろにいる校長と教頭がぺこぺこしているが……

「ハッハッハ。僕はこの学校の会長だよ」

「へ?会長?」

「うんその通りだよ」

訳が解らない。

「今も昔もずっと同じだねー。ね!校長先生そうでしょ?」

「おっしゃる通りでございます」

突然プリン国の創設者が口を挟んだ。

「会長さん、俺ら本当に必要だったん?」

「必要だったさー。教員が争うなんてまさか茶の間で発表するなんてできっこないもん」

「でもそのおかげで退学ですよ!大金もらったけど」これはゼリー国の創設者だ。

「まあ俺らにとって高校を卒業したということになればよかったんけどね」

本当に訳が解らない。

「あの……私のヨーグルト国に何か用でもあるのですか?」

阿呆か私は。下手に出たらヨーグルト国がつぶされるかも知れないというのに!

「いや、今は特に用は無いよ。ただ……」

「どうされました?」

「いや、気が済むまでやってくれ。処分は先生達がやってくれるから」

完全勝利!でも何故先生が?

「校長先生、教頭先生。これが君達のした事だからね」

「……返す言葉もございません」

「……まったくでございます」

「よし、それで良い」

会長が私の方を向いた。

「でも君、やりすぎたら叱って良いと二人に言ってあるから気をつけてね」

「あ、はい」

 会長と校長と教頭は校舎の奥に行った。ただ、全ての元凶であるプリン国・ゼリー国の二人は残っていた。

「あの……御二人方退学させられたのでしょう?」

「あ?おう。まあね」

「なんでここに?」

「懐かしいからだな」

「それだけですか?」

「それだけ。だよな!」

「おう、そんだけだな」

「ところで君、飯でもどうだい?取って食いやせんよ」

私は少し緊張したが了承した。別にそこでは本当にご飯を食べるだけだった。正直言ってつまらなかった。もう一緒に生きたいとは思えなかった。


 次の日、なぜだか気分が良かった私は覚悟を決めてプリン国を滅亡させる事にした。作戦はこうだ。プリン国の冷蔵庫の中に《一週間連続でカレーは流石にきついよの法則》の時のあまったゼリーを夜中に北練に進入して入れまくるのだ。あれ?この作戦どこかで聞いた事があるぞ。まあいいか。国民三人に任せよう。

 次の日、図書室に教員が侵入してきた。

「どうされました?」といったが最後、校長先生は溜め息を付いて

「また同じ事がおこるとは……」

と、言った。訳が解らず私は聞いた。

「なにがです?」

「職員室の冷蔵庫の中に」

私は唾を飲み込んだ。

「大量のゼリーが……」

「へ?」

 次の瞬間、ヨーグルト国は滅亡し、この戦争の勝利者国はプリン国に決まった。

家に帰ったら親にこぴっどくしかられた事はもはや語らずとも分るであろう。


これでこの戦争《プリン・ゼリー・ヨーグルト戦争》は終戦となった。


次の日、またプリン国とゼリー国の創設者に呼ばれてご飯を食べる事になった。もちろん始めは断ろうと思っていたが、面白い話をしてくれるそうなので承諾したのだ。


「……という事があって、滅亡しちゃいました」

「それは残念だね」

「それで、面白い話とは?」

「そう、そのことだけど……教員の態度気にならなかったかい?特に校長と教頭」

「ええ、まあはい」

「実は…………」

創設者二人の説明があまりにも下手すぎたので私が解説をしよう。

 一昨年、つまり私が入学する前の事だ。

校長と教頭がレモンティーとミルクティーどっちがいいかという話で争ったそうだ。途中で全教員も分かれる事になって、なぜか授業もできないほどに職員室内で争いを続けたらしい。これを当時は《レモン・ミルク教員戦争》と呼んだらしい。その話が今のプリン国とゼリー国の人によって会長の耳に届いたとき、会長はひらめいたらしい。

『そうだ、生徒達に飲み物じゃなくて半固体を推進するグループを作らせて、馬鹿馬鹿しさに気付かせれば良いね!』と。

そして全生徒が半固体国を作って教員達にやめてもらう事が出来た。しかし、半固体国のときから既にプリンとゼリーで小さな争いがおきていたのだ。そして半固体国はプリン国とゼリー国に分かれて戦争を始めた。ちなみにその日のうちにプリン国とゼリー国の創設者は退学する事になったらしい。その報告を受けた会長は二人に大金と「卒業しましたよ」と言う証を渡したそうだ。

そして今に至る。

 私はこの話を聞いたときに、会長の馬鹿馬鹿しさと、校長と教頭への親近感が芽生えた。

こんどまた校長と教頭にあったときは深く謝罪をし、雑談でもしよう。


 これでこの物語に幕を降ろすとする。

最後に読者諸君に言っておく事があるとすれば、「ヨーグルトはうまい」の一言だな。

それでは、さらばだ読者諸君。


 ちなみにこのあと倉庫の中を見られたときに大変な事になったのはまた別の話。


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― 新着の感想 ―
[一言] とても楽しく読まさせて戴きました! ありがとうございますo(^-^)o
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