僕の夢
1布団王現る
俺は森石太郎。今日は暑苦しく俺の夢を語るぜ。俺のドリームはビックだぜ。俺の夢は夜寝ること。眠れないんだもん、躁鬱病で、不眠症で。だけど今日は何かが起きそうな気分。布団変えたんだよね。
「わしは布団王、布団の国からやってきた。拾って♪」
って、布団が近所の路地に落ちていたから。
「なんだかぼろっちい布団だなあ。大丈夫?」
「布団のことなら全てお任せ、眠りのプロフェッショナルだよん」
「だったら俺を快眠させてくれよ、……ぐう」
安眠、快眠。
次の日。すっきり目が覚めた。しかも朝の6時、体に疲れなし、しゃきーんとした気分。あんまり気分がいいので散歩に出ると美人のお姉さんが犬の散歩してて「おはようございます」なんて挨拶して恋に落ちて早起きは三文の得。腹も手頃に空いて朝ご飯をしっかり食べて、快便。
くー。いいねえ。仕事に行くのも上機嫌。朝の挨拶も心なしか腹から声が出ているねえ。
仕事も心なしか楽しいようなすごくいい気分。
「すごいよ。布団王。麻薬でも打ったのかと思ったよ。安眠快眠はやっぱりすごいねえ。これから毎晩頼むよ」
「あいあいさー」
「他になんかできないの?」
「夢を自由に操れるよ」
「そうかいじゃあ作家になる夢を見たいなあ」
はっはっは。群像で、第一次予選突破、第二次予選突破、最終予選突破!
群像新人賞受賞! 第二の村上春樹か? だって。
本が平済みで本屋に置いてあるよ。ベストセラーになったよ。
しかも芥川賞受賞で目が覚めた。
「ナイスな夢だね。布団王」
「どんな夢でも大丈夫だよん。しかも安眠快眠」
イヤー不眠症がスッキリ治って朝は彼女と犬の散歩でデート。実は彼女なんかできたの初めてだったのさ。
仕事も快調。メンヘルも調子よくって
「あいつ、また休んだのかよ」
「哀れだな。リストラも近いぜ」
って言われてたのが、
「最近元気そうじゃないか」
「使えるようになって良かった。良かった」だって。
上司も問題児が調子がいいので機嫌がいい。この前、酒をおごってもらった。
日本酒なんか注いでもらってね。
「お前もいつか目覚めると思っていたよ」だって照れるなあ。
「布団王、お前のおかげだよ」
「布団として当たり前のことをしただけだよ。夜はぐっすり眠りたいもんね」
いいモン拾ったなあ
「今日は何の夢を見る?」
「迷うなあ」イヤー彼女には悪いんだけどさ。ハーレムを築いてみましたよ。夢だからね
美女を集めてあんなことやこんなこと、何回でも。まあご想像にお任せするよ。
あひゃひゃひゃひゃ。
でスッキリ目が覚めた。
彼女の顔を見るのが恥ずかしかったね。でもたまらん。早朝の澄んだ空気が綺麗で俺の罪を落としてくれるみたいだな。
「布団王、どうしてあんなところに捨てられていたんだい?」
「君が眠れないと、苦しそうにしてたからさ、自分で敢えていたんだよ」
「へえ、親切なんだねえ」
「布団の王様だから」
「王様にしてはぼろいね」
「能ある鷹は爪を隠す」
「なるほど」いまいちわからなかったけどね。まあなんでもいいや
「次の夢は?」
「ぐだぐだ働かずに一年過ごす夢を見たい」
ぐだーとしたね。一年間ぼーっとした。気持ちよかった。そろそろ何かしなきゃなって
思ったところで目が覚めた。これで充電したからまた働けるよ。
起きたらばりばり働いたね。
「次の夢は?」
「『作家でごはん』でコメント100、全部ほめ言葉で」
いや感想返しが大変大変。でも気持ちいいね。いつもひやひやするんだよね。コメント付け―、コメント付け―ッて念力飛ばしているよ。
2大征服
「そろそろ第二段階に入ろうか?」僕は布団王に言った。
「第二段階?」布団王はいぶかしげに尋ねた。
「そうとも布団王。世界征服だよ」
「世界征服ねえ。どうするの?」
「まずは平和の使者だと世界の住民をだますのさ。そして新世界の神になり、そのまま世界を支配する」
「よくわからんがやってみよう」
俺はまず中東問題を解決した。
神となり降臨し、イスラエル用の陸地を海の中から隆起させて、神通力で豊かな土地にし、ユダヤ人をそこに住まわせた。パレスチナはアラブ人に返し、両者に和平を結ばせた。そして神の権威の元世界の人々を支配したのだ。
スッキリと目が覚めた。
ああいい夢だった。第二段階と言うにはあっさりだけど。
「ねえ布団王、これじゃ世界征服しても永遠に支配できないじゃん」
「そりゃ夢だからいつかは覚めるよ」
納得できないなあ。良いのかなあ。第二段階って書いたのに。
「でも中東問題も解決したし、いいんじゃない?」
布団王がかわした。
「まあねえ、でも現実には夢だよね。世界征服も。世界平和も」
「僕も布団王じゃなくて本当の神様だったらいいんだけどねえ」
ああ追い詰め過ぎちゃいけないな。こいつにはまだまだ働いてもらうさ。
「そうもいかないよ。まあ君の存在は貴重だよ」と俺はおべんちゃらを言った。
「そうか、えへん」
「次はどうする」
「桶狭間の合戦で勝ちたいな」俺は信長好きでねえ。
「任せとけ」
我は織田信長、今川義元の伸びきった軍団を横撃し本陣を突かん。
なりきりましたよ。
『義元の首のみ狙えい。音を立てず進軍しろお』
『オオオオオオ!』
雨の中、猛撃する織田軍団。壊滅する今川軍団。
『今川義元討ち取ったリー』
で目が覚めた。
ああ気持ちがいい。ちょっと好奇心が起きた。
「たまには悪夢も見せてくれよ」
「もう見ているよ」
「え?」
「君が見ているこの世界は幻。布団王なんていないんだよ」
「えええええ?」
「なーんてね、短編ならここで終わり」
と言うところで目が覚めた。布団王。布団王はどこだ?
うわああ、布団王が消えたあ。
と言うところで目が覚めた。
「どうだい悪夢は?」
「うわあ、布団王」
「ハハハ、しがみつくなよ」
3見たい夢
「今度の夢はどうする」夢を見るのが当たり前のように布団王が聞いてくる。見透かされているなあ。
「今日は快眠だけでいいや。夢を考えるのが疲れる」
「ハハハじゃあ見たい夢を見せてやろう」
僕は見た。見たい夢をそれは布団王の世界にずっといたいという夢だった。
夢の中ならば、嫌な現実に戻ることもない。生きづらいよな。本当に。
スッキリと目が覚めた。現実も調子がいい。快食・快便、以下省略。だがあの夢が頭から離れない。
「布団王。罪な夢を見せるなよ」
「ハハハじゃあ今日はその夢の記憶を消そう」
これでスッキリ元通り。
「今日はうまもんたらふく食いたいな」
世界中の美味珍味をばくばく食べたよ。キャビアをフカヒレのスープに入れて飲んだりした。
そして翌朝は彼女とデート。うっかり食い物の話ししたら今度おごってね、だって。
失敗したなあ。
でも人間の欲望って限りがあるんだね。稿次々と欲望を満たすと逆に毎日何をしていいか迷うよ。悟りを開いてみたい。
「布団王頼むよ」
「おおっし気合いを入れるよ―」
俺は悟った。人生の目的に気づいた。
うーんスッキリ目覚めたら、忘れているんだけどね。これが。
メンヘルの治る夢も見た。でも起きたら元通り。
うまくいかないなあ
「平凡に生きることだよ」と布団王は言う
「平凡じゃ作家になれないよ」
「じゃあこういう夢を見よう」
作家になって締め切りに間に合わず何も思いつかない夢だった。
目覚めが悪い。非常に焦燥感があるって言うか、絶望感と逃げ出したいような気持が
折り重なって、目の前が真っ暗。
「これは苦しい」二度とごめんだと俺は思った。
「わかったかい? 安眠快眠になるように現実のいいところだけ取っているんだよ。現実はどれも厳しいよ。だから夢を見て調節するんじゃないか」
「その通りだ」合理的に言いやがる。
「まあ周囲を見てご覧よ。君のほしいものがわかる」
部屋の中を見渡すと本が目に入る。
これが俺の欲しいものか。
「布団王、名探偵になって事件を解決したい」
「あいあいさー」
古くさい洋館。大広間。住民が皆集まって
「犯人はあなただ」と推理を展開するところで目が覚めた。
うーんスッキリ。快食快便以下省略。
「どうだい探偵は?」
「面白かったよ」
「次はタロットの本だね」
「ああ、シンボリズムの探求の夢でもお願いしようか」
僕は潜ったシンボルの奥底にそしてその本質を十分見た。
スッキリと起きた。シンボリズムの本質は忘れてしまった。
でもスッキリ。快食快便以下省略。
「次は新人賞の本だね」
新人賞の小説の描き方を理解する夢を見た。
あ、そうかー描写のバランスってこれで良いんだ。
スッキリと目が覚めた。だが新人賞の描き方は忘れてしまった。
「布団王、なんだかうれしいけど、ぬか喜びだなあ」
「だってこれは夢だから」
「夢だけどさ」
「だからしょうがないじゃん」
「まあその通り」
次は料理の本。
料理を全部覚えて、全部忘れた。
スッキリ。快食快便以下省略。
次は流行ヘア。
全部試して、朝は寝癖だ。
スッキリ。快食快便以下省略
次は経済学の雑誌。
全部理解して、全部忘れた。
スッキリ。以下省略
次は産業の業界地図。
全部覚えて、全部忘れた。
スッキリ。以下省略
次はテニスの本。
全部覚えて、全部忘れた。
スッキリ。以下省略
次はバンドスコア。
全部覚えて、全部忘れた。
スッキリ。以下省略。
次は道路地図
全部覚えて、全部忘れた。
スッキリ。スッキリ。スッキリ。スッキリ。スッキリ。スッキリ!
うわああああああああああああああああああああああああ
旅に出たくなった。
「布団王、旅に出たい」
「あいあいさー」
こうして俺は夢の中で旅に出た。
医者にインドは止められているが、インドに行った。最高にカレーがうまい。指でナンをつかんで食ったよ。
スッキリと起きなかった。布団王の夢の中にとどまったんだ。
でも布団王に起こされた。まだここに来ちゃいけないと。
僕はスッキリと目を覚ました。そして意味もなく泣いた。
「太郎君。太郎君。現実にはやることがたくさんあるよ」
「しかし現実はつらいじゃないか。俺の弱い心では対抗できないよ。退行するだけだ」
「うまい座布団一枚ではなくて、ならば心を鍛えればいい。眠りながら心を鍛える方法が
あるんだよ」
「なんだよ。早く言ってくれよ」俺は布団王にパンチを入れた。
「布団だから痛くないよ。それに必ずしも効き目があるわけではないんだ」
「そんなことはわかってるよ」俺はメンヘルを直すためなら何にでもすがりつきたくて言った。
4心を鍛える
「心を鍛えるにはまず眠る。催眠だ。本当には眠らない。それで太郎君の心をイメージしてください。何が見えますか?」布団王が言った
「海の中に山が浮いてます。山は横が削れていて崩れそうです。山の中心に小さな猿がいて。その猿が山を両手でよろよろ支えています」
「重傷ですね。山は何でできていますか?」
「塩です」
「では塩で山の削れた部分を直して、猿を助けてください」
俺は塩を盛った。だがなかなか山の崩れは治らない。
「焦らず何日も繰り返しましょう。そうだ助っ人を頼みましょう。信長くーん」
巨大な猫のぬいぐるみの信長が塩を運んできた。
「太郎君。太郎君。助太刀するよ」信長が塩を大漁に運んで山を修復した。
「ばんざーい。穴がふさがったぞ。猿を助けろ」
「これを繰り返しましょう。どうせすぐに穴が開くから」布団王が言った。
「これで本当に心が強くなるのかい?」
「一種の暗示だよ」
「一発で治らないの」
「余り私が外界に影響を及ぼしたくないんだ」
「けち」
「ごめんねえ。夢で欲望のオンパレードで気を晴らしなよ」
「それじゃあ今度はワインだ」
「『神の雫』だね」
俺は夢を見た。すばらしいワインを飲みまくり。お、おお、なんてすばらしいんだ。
こりゃたまらんわいと思ったところで目が覚めた。
うーんスッキリ。快食快便。以下省略
ああワインと言えば聖書に出てくるあのワインも飲んでみたい
神のワインを飲んで
うーんスッキリ。快食快便。
次は『ベルセルク』かあ
こりゃつらそうだな。止めておこうか。
異世界ファンタジーものだけど厳しいんだよね。戦いが。
でもやってみよう苦痛だらけだが化け物をぶち殺せ。
暴れ回って快食快便。以下省略
『夜王』ホストの話だ。
「布団王。俺を日本一のホストにしてくれ」
「あいあいさー」
俺は一流のホスト。女性に奉仕するだけの存在だけど、
結構いい気分。
スッキリ目が覚めた。快食快便以下省略
5さようなら布団王
「さて太郎君、僕は地下の布団王としての役目がある快眠布団残していくから、さよならを言わせてくれ」
「え、突然だなあ。じゃあね。さようなら」
「余り悲しまないね」
「君はまた帰ってくるね。作者がこのパターンを使ってみたかったのが見え見えだよ。ほら次の行でもう帰ってきたぞ」
6帰ってきた布団王
「やあ、太郎君。帰ってきたよ。仕事は娘に引き継いだ」
「帰ってきてくれたんだね。布団王。お使いみたいなもんだね」
「昔ドラえもんと言うマンガがあったけど同じパターンだね」
「布団王。もう離さないぞ」と一応抱きつく。
「僕ももうここで余生を過ごすよ」と一応布団王も言う
「俺なんかお願いしていかない夢が思いつかないんだ」
「それ君が鬱だからだよ」
「躁鬱病、治せないかな?」
「無理だ。影響力をそんなにこの世に残せない」
「病気は友達。怖くはないさ」
「今夜は快眠だけでいいかい?」
「いや普通の体になった夢を見せてくれ」
「あいあいさー」
うーん夢の中で僕は目を覚ます。これが普通か。最近調子がいいから何も変わらないな。
だけど薬もやたら混んでる病院もない。
バカヤロー。僕は叫んでいた。
スッキリ目が覚めてまた一日が始まる。
気分を変えよう。『デトロイト・メタル・シティー』と言うデスメタルマンガでクラウザーさんにメタルで勝ってやる。
夢を見た。でも全然かなわなかった。
「彼は本当の悪魔だ。かなう相手じゃない」布団王を燃やされた。
ひどくおびえて目が覚めた。
「大丈夫、布団王?」
「夢だけど、残念。相手は本物の悪魔だったね」
布団王にもできない夢があるんだ。
そうおもったらなんだか気分が少し軽くなったよ。
誰にだってできないことがある。
ストレスがたまったのか布団王は今日は世界を滅ぼす夢にしようと言った。
俺は夢を見た。
オバマ大統領がとち狂って「核軍縮なんか止めマース。核戦争デース」
と全面核戦争。俺もあっという間に蒸発したよ。
ああスッキリ死ぬのもなかなかいいじゃないか
そう思ってスッキリ起きた。
その日首を吊ろうとしていると布団王に謝られた。
記憶を夢で消した。
スッキリ目が覚めた。
今日も一日が始まる。彼女にメンヘルって言おうかな?
「なあ太郎君。太郎君が死んだら夢も見れなくなるよ。だから生き抜いてほしいんだ」
布団王がくれるのは夢。そして僕が待ち受けたのはメンヘルをばらして彼女に振られる悲しい現実。でもいいんだ。俺は強くなる。病気は友達。怖くはないさ。
「今日は将棋の夢でも見よう。女を断ち、ひたすら勝負に書けるのだ」
「あいあいさー」
俺は将棋で対決した。こんな脳の使い方をするのは初めてだった。確かにこいつはすごいや。
俺は勝ち、スッキリと目を覚ました。
彼女のことは消えていた。
と言うことにした。がんばれ。がんばれ俺は強くならなきゃならないんだ。
今日は医者の夢でも見よう。人の命を助ければ自分の命の重みもわかるさ。
俺はバチスタ手術の執刀を行い、無事成功させた。
と言うところで目が覚めた。
俺はまたスッキリと日常に戻った。
「今度はF3レーサー」
これは体に負荷がかかり大変だった。でも表彰台に立ってシャンパンを振りかけると
すべて忘れた。
スッキリと目が覚めた。
7夢の奥に
そう言えば、心を鍛える夢はどこへ行ったんだろう?
「あの島の夢を見せてくれ」
「あいあいさー」
「島が溶けている。それに犬がいるぞ今度は。数匹いるがみんなぐったりしているな」
「取りあえず島を修復しよう」
「うわ熊がいるぞ。犬が戦っている」
「傍観していよう」
「犬が熊を倒したぞ」
「でもここは犬の住処になるのか? 犬より猫の方が好きだけど」
「太郎君の職場への服従度だな」
「やれやれ、労働者はつらいよ」
「えさをもらえるだけいいだろう」
「犬にえさをやろう」
信長君、えさを運んでくれ。
巨大猫のぬいぐるみがえさを運んでそれを犬が食うというシュールな絵になった。
「島は海の中に立っているね。海中で壊れているのかもしれない。見てみよう」
俺は海の中に潜った。
うわあ島がぼろぼろだ。早く島を直さなければ。海の中だから塩が溶けるが何とか島を修復した。
「これで、心が本当に治るのかなあ」
「わからん」布団王が言った。
「無責任だなあ」
「治る人もいれば治らん人もいる。遊びじゃないんだ」
「懐中の柱で魚がどっさり死んでいるよ」
「きっと他人との接触で嵐が有ったからだろう。埋めてやりなさい」
「光が魚の体から光が懐中へとしみ出してる」
「魂だよ。海中は魂で満たされた。やがて塩になる」
魂は蛍の光のように光り泳ぎ続けたがやがて崩れた
「今日はこのくらいにしよう」
8癒し
僕は癒されている感覚はなかった。むしろ寂しくて切ないものだった。
ハーレムを作ってくれ布団王。
ハーレムの方が癒された。
「それはね。君がスケベだと言うんじゃなくて、求めているものがハーレムだからだよ。塩の山は形に過ぎない。夢というものはそんな形ではないんだ」
「つまりハーレムこそが男の夢。塩の山は偽物の僕の心か」
「そうかもしれない。君がほしいものはハーレムなんだね」
「あと飯も食いたいうまい飯も食いたい。夜はぐっすりと寝たい。やりがいのある仕事に就きたい」
「すべて夢でならかなうよ」
「かなえてくれ」
塩の山は海中に溶けた。僕は人でなくなった。
そして癒された。
人間であることが不幸の根源かもしれない。
海になっていると気持ちがいいよ。
でも人間は簡単に止められない。
また塩の山ができて、俺は人間に戻った。
畜生ピアノでも弾かせてくれ。
ピアニストになる夢を見た。とびきりの名演奏をした
拍手でスッキリ。
ああ俺は夢を見る人形じゃないか
不思議と欲望がかないすぎると心がすさむ。
快眠のみを布団王に頼んでしばらくの間、俺は寝た。
すると癒された。
何もないのが一番かもな。
でもハーレムの夢を見ると楽しい。
ハーレムで順々に美女たちと口づけし交わると楽しい。
でも俺が本当に見たい夢って何だろう?
やっぱり病気の治る夢?
でも起きると虚しい。治っちゃいないんだ。
夢の中に居続けられない、死んでしまうから。
だから、適度な夢をぼちぼち見るのが一番だ。それと欲望には限りがある。
じっと欲望をためる時間も大切だ。そう言うわけでハーレムの夢を見てまた眠る。
今では夢のあることが虚しく感じるときもある。
夢の中でしか満足できない。現実は不満の山じゃないか。
「そうはいってもねえ僕は布団王だし」
「快眠布団を不眠症のみんなに配れないだろうか?」
「それならできるよ。やってみよう」
世界中の普通の布団に快眠成分を浸透させる。
これでみんなぐっすり。
「少なくとも、現実を少し変えたね」
「やった甲斐があったじゃないか」
今日はいい夢が見れそうだ。サッカーの夢を見よう。
その日俺はゴールを量産した。
そうか僕は現実を変えたかったんだ。子どもの頃共産主義が成功すると思っていた。
でも現実には一億とも言われる犠牲者の元での失敗。資本論を読んだけど間違えてるよ。
すべてのもうけが搾取じゃないさ。これじゃ失敗するわけだ
夢はすぐに覚める。
大きなものも小さなものも。
集合的無意識ってものもあるけど外で会っても中で溶けても「何をするか」が大事なんじゃないだろうか。
「布団王、今日は夢はいいよ」
普通に夢を見たらたぶん僕の胸はつまるだろう。
「太郎君そう言うときにはこの夢だよ」
俺は夢の中でカレー味のうんこを食べた。いけるいける。世界の中心で俺はくそったれと叫び続けていた。