1.お嬢様がおかしくなった
わたしの名前はリディア・シュメルツ。出自は平民で、お嬢様のお父様に拾われてきた、メイドである。
そんなわたしがお仕えするお嬢様は高慢で、ワガママな自由なお方。
貴族界においては、悪女として名高い方であった。名前はエリザベート・グランツ様。
そんなお嬢様にお仕えしているわたしであったが、学園に入学してしばらくした日のこと。突然、死を覚悟するほどの高熱にうなされた。
いくら発汗しても熱は下がらず、苦しそうに眠っている。わたしはどんな形であれ、死なないでくれと願っていた。
悪女と言われ、わたしのことを虐め(意地悪)ていたが、わたしはお嬢様に感謝しているのだ。だから、どうか、どうか、とわたしは神様に願った。そして、祈った。
それから数日。
お嬢様の体調は回復した。熱は引いて、苦しそうだった表情も今は気持ちよさそうなものに変わっている。
どんな夢を見ているのか知らないが、きっと楽しい夢でも見ているのだろう。眠っているお嬢様のお世話をしながら、わたしはそんなことを思っていた。
あとは、目を覚ましてくれるのを待つだけ。
だったはずなのに……、
「わたくしの名は、漆黒の薔薇ルシファリスッ!」
「ああ……漆黒の魔眼が疼きますわねッ……!」
「や、闇がッ! 闇が! 闇が囁いていますわッ……!」
この通り、目を覚ましたお嬢様はなぜか中二病になってしまった。
高慢でワガママな悪女と名高かった、あのお嬢様はもうどこにもない。今やとても痛々しい残念で黙っていて欲しい性格に成り果ててしまった。大体、お嬢様の瞳は黒じゃなくて青ですよ。漆黒というのは、わたしの瞳のような色を言うんです。
「……はあ。なにが原因でこうなったのでしょう?」
「なにがですの?」
「お嬢様についてですよ、全く……」
わたしは深いため息を吐く。
頭を抱え、眉間を指で抑えながら、どうしてこうなったのかを思い返す。
とりあえず、わたしがお嬢様と出会ったところまで思い返そう。
きっとそうすれば、なにか答えは見えてくるかも……しれないし。
ご覧くださりありがとうございます。
カクヨムにも投稿しております(現状、進みはそっちの方が若干早いです。こちらは加筆して投稿しています)
「ブックマーク」「評価」でぜひ応援してください!