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無色の僕と世界の原色  作者: 木絨羽
第二章
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第2章 10 : ケーキ、私も食べたいな!

「デボ弟!——やっと帰ってきたな!」


花生とフレディヴィアが屋敷に入ってドアを閉めた途端、目の前のアドライトがデボを力いっぱい抱きしめていた……いや、これは抱きしめるというより、もはや絞め落としに近く、デボの顔は真っ青、息ができずに必死にもがいている。だが、力ではアドライトにとても敵わない……


「おい!離せ、バカ!俺の先生が窒息しそうだろ!」


花生は怒鳴りながらアドライトの腕を叩いて引き離そうとした。 ようやくアドライトは手を離したが、デボはしばらく息を整える必要があった。


「おっと、悪い悪い、幼なじみに会ったら、つい調子に乗っちゃってな……ところで、今『先生』って言ったか?」


「そ……そうだよ……花生が俺を魔法の先生にしようって言ってさ…しかしアドライト兄貴、三……三年ぶりに会ったのに、なんでそんなに腕っ節強くなってんだよ…」


床に座り込みながら、 デボは少し途切れ気味に説明した。


「ほぉ?そりゃあめでたいな!お前の夢は『黒瞳の力を手に入れる』ことだったよな?今やもっとすげぇぞ、本物の黒瞳人の先生だ!ははははは!——」


アドライトの豪快な笑い声が屋敷いっぱいに響き渡る……確かに、出会ってから、この人の大笑いを一度も聞かない日はない。


「(……だけど、なんでこの笑い声を聞くたびに背筋がぞっとするんだろ……)」


「まあ確かにそうなんだけどさ……アドライト兄貴……あの話は、人前では控えてくれ……」


デボが照れくさそうに頼むと、アドライトは軽く——


「おぉ!あの試験畑で『俺様はブラックアイズになる!』って叫んだ事件か、了解了解!……えっ?」


アドライトは言ってしまってから口を押さえた……もちろん、一度口に出た言葉は取り消せない。


「こらああ!——」


もともと知られたくなかった恥ずかしい過去の言葉。それに加え、目の前にはまさに黒瞳人花生がいるという現実……デボの羞恥心は爆発し、怒りに任せてアドライトに飛びかかる。二人はまるで取っ組み合いの喧嘩のように絡み合った……いや、本当は昔ながらの友人同士のじゃれ合いだ。


「(あれ……この騒ぎの構図、どこかで見たような……)」


「あっ!このケーキすっごくおいしい!〜フレディヴィアお姉ちゃんも食べてみて!」


「ええ……いただきま〜す…」


そう声をかけたのは、食卓の椅子にちょこんと座っていたリテル。フォークを手に幸せそうな顔でケーキを頬張っていた。やっぱり子供は美味しいもので簡単に幸せになれるなぁ……。


「おいコラ、橙の髪のガキ!うまいもんがあるなら呼べよ!」


突然、テーブルの脇にひょいっと姿を現したのはあの緑と黒の髪の少女……そう、さっきのスイカ娘、フルーシだ。試験畑で「ボンッ」と消えたと思ったら、いつの間にかこっちに来ていたらしい。


「(……ってことは、こいつ、自由に出没できるのか?すげぇ……なんでだろ、ちょっと羨ましい気も……いや、俺何考えてんだ?)」


「うんうん、もちろん!はい、この一切れあげるね!」


フルーシのやや毒舌な物言いにも、リテルは笑顔でケーキを切り分けて差し出した。


「へっ?……ま、まあいいや、じゃあ遠慮なく!」


「おいしい〜!」


三人は声をそろえて歓声を上げた。


「(いい光景だなぁ……本当にすぐ仲良くなるんだな)」


花生の視線は再びアドライトとデボの絡み合っている姿へ……


「(あ、やっぱり……この喧嘩、さっきフルーシとリテルがやったのとソックリだ……)


食卓へ歩み寄りながら、ケーキを頬張る三人をこっそりと見てしまう。


「(ちくしょう……なんでこんなに食いたくてたまらんんだ……俺、もう十代も後半の男だぞ……)


しかし、ケーキはもうその場にいない三女の前に無造作に置かれているだけ。 何しろ相手はついさっき知り合ったばかりの少女たち。さすがに「ちょっとくれ」と厚かましくは言えない……。


「(……よし、認めよう。実はフルーシにビビってるだけだって!)」


「え?花生、どうしたの?何か探してるの?」


「あ、いや……別に……晩ご飯まだかなーなんて思って…ははは」


キッチンから出てきたルシアに声をかけられ、咄嗟に言い繕う花生。


「お腹空いてるの?大丈夫、まもなくだから。」


そう言うなり、ルシアはその様子を少し見た後、ふと後ろの三人の方へ目をやった——


「あ〜、もしかしてケーキが欲しかったの?」


「やめてくれええ!言わないでよ〜!」


ルシアの直球にたまらず、思わず彼女の口を押さえてしまう。しかし、すぐに無礼に気づき手を離した。


「あ、ごめん……」


「平気平気……実はね、ここに『ナイトベリーケーキ』が少しだけ残ってるの。よかったら夕食のデザートに出してあげようか?」


ルシアは何だか楽しそうに言った。はっきりした理由はわからないが、少なくともこのひそかな願いは叶いそうだ。


「ほ、本当に?じゃあ……よろしくお願いします!」


「お任せあれ!」


ルシアは小躍りするようにキッチンへ戻っていった。


「(……って、ナイトベリーケーキって何?夜のベリー?ちょっと怖いような……でも……)」

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