表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/112

05-1 星影学園

 国立・星影学園(ほしかげがくえん)――。


 かつての俺が通っていた文武両道を重んじる全校生徒900人の中高一貫校。

 学園施設には、校舎、校庭、図書館、体育館といった定番のものから、24時間営業のコンビニや日用品雑貨等を購入できる学内売店まである。学内売店という名称だが、一棟丸ごと使いフロアごとに売店を分類配置しているため、ほぼ完全にただのデパートだったりする。


 正直なところここまでならマンモス校だからとまだ納得できなくは……ないが、それは俺が知っている学園での話だ。

 それらに加えて、異世界で見たことがある修練場や訓練場などの興味深い施設が増設されていた。敷地面積の拡大やら諸々で、母校はマンモス校からドラゴン校へと昇格している。しかもこっちの世界だと、なんと学費は全額無償という大盤振る舞い。


 また校門についてだが問題なく通過することができた。ただ罠がどちらの条件で解除されたのかまでは判断がつかなかった。そのあたりは追い追い調べていくとしよう。

 無事に登校できたということは、ひとまず俺はここの生徒で間違いないらしい。

 今朝感じた嫌な雰囲気もしなかったので問題ないとは思ったが、それでも校門を通過する瞬間だけは身体が強張った。


 学園も他と同様に似て非なるものではあるが、とりあえず自分の居場所が、拠り所をできたのはかなり助かる。


 窓際の一番後ろという生徒であれば誰もが羨むであろう優良物件。

 そこが俺の席だった。学級も元いた世界と変わらず1年E組のままで特に変化はなかったが、級友は知らない顔ばかり。その中で唯一俺が知っていたのは30人中のたったの1人だった。

 幸いだったのが、あの時俺に声をかけてきた男子生徒が級友だったことだ。


 俺の知らない友達の名は乾一志(いぬいかずし)

 彼がいなければ、こうやって自席に座り窓の外を眺めることもできなかったはずだ。

 その恩人ともいえる一志の席もまた俺の正面という神の采配のような最高の立地。


 それはそうと先ほどからガラスに反射して薄っすらとだが、日本人とは思えないような顔立ちをした少年が映っている。

 ファンタジーに出てきそうな西洋顔で、将来は勇者として世界を救う旅に出そうな気がする。

 しかも、その少年は不思議なことに俺の挙動を真似ている。


(さてと……何が入っているのやら)


 軽く現実逃避をしたところで、机上に置かれたスクールバッグに目を向ける。


 俺が手ぶらだった理由はもうすでに配達済みだったから? だとしても、登校時に手ぶらだと誰か一人ぐらいは指摘しそうなものだがそれもなかったな。なんかもう色々と気味が悪い……。


 教室には20分前には到着していたが、気づけば朝礼が始まるまで残り5分を切っていた。

 つまるところ俺は席についてから10分以上、何もせずに時間をただただ浪費していた。


 このスクールバッグは俺が教室に来た時にはもうすでにここにあった。

 ご丁寧にファスナートップにタグまで括り付けてある。

 自席にあったことやタグを見る限り俺宛であることには違いないのだが、その名前には違和感しかなかった。


「ルーク・(なぎ)・ランカード……」


 二つの名前が混ざったような不可解な名前が書き込まれていたからだ。


 凪をミドルネームに使用しているということは、少なからずこのバッグを用意した相手は俺の素性を知っていることになる。


(探そうにも当てがない……まずは中身の確認か。さてさてさーてと、鬼が出るか蛇が出るか)


 タグの付いたファスナートップを摘まみ右から左へ引いた。


 中身は学生らしく重厚な教科書やノート、筆記用具などが数点。それらに加えて念願の身分証明書となる生徒手帳。後は迷宮入場許可書と書かれたカードが手帳の間に挟まっていた。

 スマホや財布は入っておらず、内ポケットが定位置だった桜川家の鍵も見当たらなかった。


 生徒手帳を確認したことで分かったことがある。


 俺の名前はタグに書かれていたとおりルーク・凪・ランカードで合っているらしい。

 また証明写真も載っていたのだが、そこに映っていたのは桜川凪ではなかった。

 銀灰色の髪に、瑠璃色の瞳をした少年――異世界での俺、ルーク・ランカードその人だった。

 ただ魔王と対峙した頃よりもいささか幼い気がする。どうやら学年に合わせて20歳から16歳に若返っているようだ。


 目ぼしい情報はそれぐらいで、残りは校則やらメモ欄で埋め尽くされていた。


 これまでに得た情報を整理すると、容姿はルークで年齢は16歳、名前には凪がミドルネームとして採用されている。


 それだけ分かれば今のところは上々なのだが、それとは別に困ったことがある。なぜか住所欄だけが見事なまでに文字化けしていて一文字も読めない。

 不本意ながら住所不定の男子学生という称号を得てしまった。

 誰かの世話になるわけにもいかないし、当面の間はダンジョンが俺の住まいになりそうだ。

 技能を上手いこと活用すれば、生活するだけなら何とかなりそうだしな。


 旅をしていた頃を思い出すな、まあ幾分もいまの方がマシだけども……。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ