25-2 特殊生態
生命力と精命力、そのどちらも生物がこの世に誕生した瞬間から宿している未知の力。それらを消費、代償にすることで技能や呪文といった超常現象を顕現させる。後者はともかく、前者は伝説に語り継がれるだけで、実際に目の当たりにしたことはない。
ゲーム的に言い換えれば、生命力がヒットポイントで精命力がマジックポイントとなる。生命力を消費する技能ならあるじゃんって思ったそこの人。俺も最初は同じことを思ったが、よくよく考えてみたら、残念ながらその技能は該当しない。
生命力を他者に分け与える犠牲による癒しは、発動する際に精命力を消費してしまうからだ。発動条件が、生命力ではなくて精命力の時点で対象外となってしまう。
一体何の話をしているんだと、それが先のミーナの話と、どう繋がるんだと思うかもしれない。これもまた同様に俺もそう思ったが、それこそが最も重要な点だった。
最初は意味が分からなかったが、耳にタコができるほど説明を聞きまくったことで、やっと天才の言っていることが理解できた。
肉体を持たない幽霊系の魔物は、他の魔物や人間、通常の生物とは異なり、精命力がHPで生命力がMPと正反対の役割を担っているらしい。それはダンジョンによって生成された場合でも同様のようで、その歪な状態で生存? 存在している。
ミーナが行ったのは、偃月刀を通して自身の精命力を直接魔物に注ぎ込むというものだった。普通に考えれば、犠牲による癒しのように回復を促すような行為にほかならないが、過度な回復は時として武器となる。
生命力や精命力には限界値というのがある。その限界値を無視して回復し続けると、どうなるかという話だが、空気を送り続けられる風船が如く、そのうち限界が訪れてパァーンと破裂してしまう。
ミーナはその要領で限界を迎えるまで精命力を分け与えることで、魔物をパァーンさせている。数十数百という数をそうやって屠っているわけだ。
豊富な精命力を持つミーナだからこそ可能な倒し方。
それでも呪文でサクッとやるほうが楽なことには変わりない。どうしてもこの方法で倒したいのなら、偃月刀を通さずに無手で直接叩きこんだほうが効率がいい気もする。
得物分、攻撃範囲が広がる利点はあるにしろ……言わぬが花か。本人も喜んでいることだし口にするだけ野暮ってもんか。
と、理論としてはそんな感じなわけだが、言うは易く行うは難しってことで、技能や呪文を介さずに精命力に干渉しているわけだが、それがどれほど難しく、どれほどあり得ないことなのか……止めておこう。なんか語れば語るほど、兄としての尊厳が失われるようで悲しくなってくる。
それはそれとして、乙女達のなんかよく分からない仁義なき戦いは、案の定といいますか終始ミーナ優勢のままあっけなく勝敗が決した。
夕日をバックに対照的な姿が映し出される。
崩れ落ち項垂れる莉緒と、青龍偃月刀を高らかに掲げるミーナ。
二人が何を賭けて勝負をしていたのかは、その夜に知ることとなる。
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