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24-3 根源双対

 俺が魔王撃破時に習得した根源(オリジン)に分類される技能(スキル)――異能な技能(イリーガルスキル)

 精命力(アストラル)を一切消費せずに好きなだけ技能を扱える、誰がどう見てもチートスキルだと一目で分かる技能。

 ここ最近は、支援(サポート)ばかりというか、ほぼお手軽収納術ディメンションストレージしか使っていないので、完全に宝の持ち腐れ状態だったりするが、っと俺の話はいまはどうでもいいか。


 莉緒は先の融合技を通じて、根源(オリジン)を習得していた。


 双対術式(デュアルスタンダード)――この根源(オリジン)もまた俺のものと同様に常時発動タイプで、その効果はドイツ語による呪文の発動を可能にするというもの。

 説明だけを聞くとたったそれだけと思うかもしれないが、英語ではなくてドイツ語(・・・・)で呪文を行使できるというのがポイントであり、この技能がチートスキルだということを証明している。本来は、どちらか片方しか扱えないはずの呪文と技能。その両方を扱える人間はおそらく……いや、二つの世界において彼女ひとりしか居ないだろう。異なる二つの世界の記憶を持っている彼女に相応しい技能ともいえる。


 その特異な技能と先ほどの経験により、莉緒は技能と呪文を組み合わせた独自の戦術を編み出した。

 呪文を武具に向けて唱えることでその属性を纏わせる、その戦術を彼女は属性付与(エンチャント)と名付けた。

 実現可能させるためには、カラドボルグまたは同等の能力を保有する武具が必要となる。特殊な武具でなければ、ただ対象に向けて呪文を放ったところで何も起こらないからだ。


 つまるところ、莉緒はミーナと繰り出した融合技? 合体技を単独で行えるようになったということだ。まだ本場の呪文を使えるようになったばかりの初心者(ヒナ)ということもあり、威力や精度はスフィンクス戦に比べると何とも物足りない。それでも各属性を刃に纏わせて戦えるのはアドバンテージでしかない。

 通常、魔物の弱点を突く場合、相手ごとに属性武具(エレメント)を別途用意するか、呪文を行使するほかない。ただどちらもメリットデメリットが存在する。

 前者だと武具を大量に持ち運ばないといけないし、後者の場合だと、そもそも火、地、雷、風、水、氷の六属性を扱える者は極少数。そのため各属性の魔術師を連れて行くか、貴重な全属性が扱える魔術師を頭を下げて同行を依頼するしかない。またこれは異世界(ツァウベル)での話であり、ほぼ使い物にならない英語呪文の場合だと、弱点を突いたところで『効果はいまいちのようだ』と虚しい文章が脳裏に浮かぶことだろう。


 ドイツ語呪文(本場)といえど、諸事情により頭上に『ダメージ10』とか表記されそうな呪文が、カラドボルグと彼女の剣術を合わせることで、目を見張る技へと進化する。


 さらに器用貧乏たる真髄と云わんばかりに、莉緒は全属性を使えてしまう。このまま修練を重ねていけば、ミーナが唱えていた重力アンツィーウングスクラフトのような派生呪文も扱えるようになるだろう。

 さらにさらに驚くことに、この戦術はコスパも素晴らしいのだ。たったの下位呪文一回分の精命力(アストラル)を消費するだけで、莉緒本人が解かない限り永続的に属性が付与され続ける。


 はじめて彼女が刃に焔を纏わした瞬間が、まぶたの裏に焼き付いている。


 術者が触れても熱くなく燃え移ることもない紅く揺らめく炎。剣身に刻まれたルーン文字は青白い輝きを放たず、熱を帯びた赤白(せきびゃく)の光を放つ。付加する属性ごとにルーン文字の輝きもまた千差万別と変化する。


 鮮やかに輝く刃をもって魔物を一閃していく、その姿はまさに勇者と呼ぶに相応しい様であった。


 この世界に勇者という役割が存在するのなら、きっと彼女が、彼我結莉緒(ひがゆいりお)がそうなのだろう。

 こういう人を魅了する戦いができる人物が本当の勇者。俺のように打算的に女神と契約をした名ばかり勇者とは違う。


 莉緒がひとりで戦えるようになって、嬉しいはずなのにそんな嫌な気持ちが水底からチラリと顔を覗かせてくる。俺自身も奇妙に思える不愉快な感情が芽生えたのも、俺が特別だと、俺しか根源(オリジン)を習得できないと、心のどこかでそう思い込んでいたからかもしれない。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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