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03-2 朝方景色

「ふあぁぁ~いい天気。やっぱこれが有るのと無いのとだと利便性が雲泥の差だ」


 一度でも攻略したことのある階層なら転送門(ゲート)を通じて階層転移(ワープ)を行うことで、任意の階層または出口に瞬時に移動できる。今回はそれを使って外に出た。


 蛇足だが階層転移はテレポート、転送門にはポータルと別称があったりもするが、俺は断然ワープ、ゲート派である。地下迷宮にもラビリンスという別称があるが、そっちも勿論ダンジョン派だ。


 外界は夜が明けていた。

 ググっと背筋を伸ばし空を見上げる。

 オレンジ色の太陽と薄明りの空との対比がとても綺麗だ。


 日光浴の時間帯にしてはまだ早いかもしれないが、それでも地下迷宮の歪な太陽光に比べたら天と地ほど心持ちが違う。


 地下迷宮に隣接する学園の校舎時計を見やると時刻は朝の5時頃を指し示していた。

 早朝ということもあってか、往来する人は見当たらない。


 あのまま魔物を殴り殺して30階層を目指しても良かったのだが、学園での情報収集も疎かに出来ない。

 登校するにしても少し早いかもしれないが、一生徒として堂々と入れるのならそれにこしたことはない。

 せっかく制服も着ていることだし使える物は使っていかないと損ってもんだ。


 周囲を囲う鉄格子は例の技能で通り抜けた。それに加えて転送門を通る前にもう一つ技能を使っておいた。


 不可視的歩行(インビジブルウォーク)は歩行中に限り他者から見えなくなる技能。3分間という時間制限はあるが、歩き続けている限り何にも感知されない。


 鉄格子に重厚な扉、各種センサーや監視カメラを設置した場所を、技能も使わずに素通りする勇気はない。


 生物以外にも効果があるとは思ってもいなかったが、一応試してみるもんだな。

 それに夜目が利くように技能を使っておいて良かった。じゃなければ、センサーがあることに気づかず、侵入を感知されて警報が鳴っていたことだろう。


 円を描くように右回りで歩きながら二割ほど開いた校門に目を向ける。

 外からでも確認できるほど校内は静寂そのもの。


「校門が半開きの場合って、もう中に入っていいのか? たぶん大丈夫だよな?」


 校舎の各教室にも明かりは点いていないし、体育会系の部活がよくやっていた朝練をしている雰囲気もない。先生も生徒の誰一人として見当たらない。


(学園には学寮もあるし、この時間帯に校内をウロウロしても何ら問題ないはず)


 いざ校門前まで移動したところでピタリと足が止まる。


 何か嫌な予感が、胸騒ぎがする。


(どこかで経験したことがあるような……)


 顎に手を当て思考を巡らせる。


 あっ……思い出した。


 誰も見ていないから今なら侵入できるぞと、わざとらしく中途半端に開かれた校門。

 宝箱だと思っていたものが、実はミミックでしたというあの感覚に似ている。


 息をひそめて獲物を罠にかかるのを今か今かと待っている。場と状況は似つかないが、漂う雰囲気がまさにそれだ。

 トリガーとなるのは校門を通るか否かといったところだろうか。

 あえて罠にかかるのも一つの手かもしれないが、この世界の全体像をまだ把握できていない現状、迂闊に飛び込むのは危険だ。


 まあそれでもゴリ押しで行けないこともないが、ここは一旦退避した方が無難。


(そうなると、何して時間を潰そうか……またダンジョンに戻るのもなぁ~)


 特にやることも思いつかなかったので、登校時間になるまで久方ぶり故郷をほっつき歩くことにした。


 後頭部で手を組み踵を返し誘う校門を後にした。


 あの罠が解除される時間帯となれば、学生が校門を通り抜ける登校か下校の時間ぐらいだろう。

 これはあくまで時間による解除条件であればという短絡的な作戦。部外者を対象とするような指定条件だったら、完全にお手上げである。

 後者だった場合は、例の技能を使ってのいつもの不法侵入をするほかない。


 3時間近く町中を見て回ったことで、少し分かったことがある。


 結論から言えば、この朝月町(あさづきちょう)はやっぱり桜川凪()の知っている町じゃない可能性が非常に高い。

 祖父の道場があったはずの場所は空き地になっているし、住民の移動手段だった駅は閉鎖しなんか知らない店に変わっている。他にも色々と気になることはあったが、その中でも一番驚いたのは隣町との境には百メートルを優に超える巨大な壁が建っていたことだ。

 その壁は異世界の金属で建造されていた。灰色のザ・コンクリートという見た目をしているが、その強度はタングステンに等しく加工も簡単という優れもの。

 地下迷宮に出現する魔物を倒すと手に入る、名も無き2センチ角の金属片。魔物であればどんな魔物でも量に差があれ、必ずドロップするため異世界で最もポピュラーな素材の一つ。あちらでは火にくべて石炭のように燃料として使用されていた。

 ただ町全体を囲うほどの量ともなれば、数千人単位で何十年もの間、不眠不休で地下迷宮に籠り続け魔物を狩り続けなければ建造するのは難しいだろう。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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