24-1 真実一端
そんなこんなで蛇足に寄り道が続き、今日はもうミーナから話は聞けないかもと諦めかけた、その時彼女はおもむろに口を開き語り始めた。ダンジョン攻略も捗り、57階層まで足を延ばせたのは良かったかもしれないが、できることなら心のささやきを発動したタイミングで、話してほしかったと思いつつ聞き入る。
「――と言うことがありまして……って、お二方聞いてます?」
「ああ聞いてるよ。聞いてはいるけど、どうしてよりによって、ここなんだ?」
「あ、あああんた、まさか怖いの!? あたあたたあたしは全然平気だけどね!!」
莉緒はサンドイッチの具が飛び出そうなほど、強く握り激しく震わせている。声も上ずり明らかに動揺しているのが見て取れる。そんな状態で俺に勝ち誇ったような顔で言われても何も響かない、それどころか俺の眼には滑稽に映って仕方ない。
「ちょうどお昼時というのもありますが、ここならわたくしの話に耳を傾けてくれるかと思いまして」
「いや……最初から聞く気満々だったし、何ならラジオ気分で聞いて欲しいとか言ってなかったか?」
「そう、なのですが……いざ話そうと思ったら、やっぱりちゃんと聞いていただきたいなという思いが強くなりまして……申し訳ございません。個人的な感情を優先してしまいまして、気づけばこんなに遅いタイミングになってしまいました」
「別に謝るようなことじゃない。なあお前もそう思うだろ、莉緒?」
「モグモグモグモグ――」
莉緒は物凄い速度で咀嚼しながら首を縦に振っている。周囲の雰囲気に気圧されないようにするために彼女が選んだ術がこれらしい。三大欲求の力を借りるのは強ち間違いではない。
俗に言うあれだ霊障的なのが起こりそうな気配を感じたら、エロいことを思い浮かべれば良いという対処法。あれの食欲バージョンだ、まあ魔物相手にそれが通用するのかは知らんが。
そもそも常人であれば、こんな場所で腰を下ろして食事などしたくはないはずだ。なぜならここは、数多の遺体が眠る共同墓地。墓標が碁盤目のように規則よく並び、中央には協会が聳えている。
その一画をお借りして、レジャーシートを敷いて昼食タイムに興じている。太陽が真上にある時間帯ならまだしも、あらぬことが起こりそうな黄昏時、それでも陽の光が完全に消失した丑三つ時に比べれば、まだ幾分かマシかもしれないが、それでも悠長に休憩できる心根をもつ人間はあまりそういないだろう。とはいっても、生成された共同墓地のため、本当にそこに遺体が眠っているかと、言われれば甚だ疑わしいものだが、雰囲気や気配により真実味を帯びさせる。
「つうわけで俺達は気にしていない、続きを頼むよ」
「モグモグモグ、コクコク!」
「分かりました。では、続きをお話いたします――」
…
……
…………
一部ミーナの私情めいたものもあったが、話の内容は実に興味深いものだった。
勇者を喪失した世界、この世界のルール、これから俺達がやるべきこと、特に兄を失った妹の6年間については、わざわざ絵本まで用意して読み聞かせてきた。
そこでいくつかの謎も解けた。
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