23-2 偶発奥義
54階層は砂漠地帯、燦々と輝く太陽と足をとられる砂地により、突っ立っているだけでも徐々に体力を奪われる厳しい環境。
のなずなのだが、莉緒は砂塵をまき散らしながら駆け回り剣を振るい、当たり屋のように魔物を蹴散らしていく。
「元気だな、あいつ……いや、あいつらか……」
その反対側にも同様の光景が広がっている。違う点があるとすれば、ミーナは呪文を行使して魔物を倒している。呪文を唱えて、指揮棒を振るうかのように指を動かす。
燃やし、凍らし、感電させる……etc。
全属性の呪文が使えるミーナは、莉緒に見せびらかすように次々と属性を変えて呪文を放つ。
それに対して莉緒もまた精命力を込めた斬撃を放ち魔物を切り伏せる。
「このサソリはあたしの獲物なんだからとらないでよね!」
「あら、それは申し訳ありませんでした。放置しておりましたので、てっきり譲っていただけたのかと、思っておりました」
「あーそー……じゃあ、代わりにスフィンクスはあたしが貰うわね。はあぁっ!!」
「彼我結さんもお疲れでしょうし、わたくしにお任せください。稲妻……」
莉緒の斬撃が風切り音をあげながら、スフィンクスの頭部と胴体を分断すべく滑翔する。
遅れをとったミーナだったが、焦る様子もなく呪文を唱える。
砂漠の空に雷雲が発生し稲光が走った刹那、スフィンクスの頭上めがけて稲妻が落ちる。
先制攻撃を仕掛けたのは莉緒だったが、今回はミーナに軍配があがりそうだ。
脳内でミーナに一票を投票しつつ後方で腕組し結果を見守る。
「……はわっ!?」
予想の斜め上をいく結果に思わず、素っ頓狂な声を上げてしまった。
すぐさま口を押えて無かったことにしようとしたが、この呪文から逃れることはできなかった。
前方の二人は振り向かず声も出してはいない、無反応を決めている。が、あいつらの両肩が小刻みに震えているのが見て取れる。
完全に俺の失態からきたものだし、そのことで問い詰める気もないが、むこうから何かアクションをとってきた場合は、全力で物申してやる。
(……それよりもだな、こんなことあり得るのか? いや実際にこの目で見てしまっているから、事実だと捉えるしかないわけだが……)
雷撃がスフィンクスに命中したかと思った矢先、空間がねじ曲がったかのように左に逸れた。落雷は地面ではなく空中に落ちた。莉緒が放った衝撃波が避雷針のように稲妻を呼び寄せたらしい。呪文は精命力を糧として発動する、カラドボルグから放たれる衝撃波もまた精命力を糧とする。
それらが干渉し合い引き寄せられたことで、今回のような現象が発生したといったところだろうかそれは何となく理解できなくもないが、そのあとに起こった浪漫については、初見過ぎてどう説明していいのか分からん。
稲妻が重なり混ざったことで透明だった衝撃波は、色鮮やかな青紫に変化し雷鳴を轟かせてスフィンクスに襲いかかる。命中するや否やスフィンクスは光の粒子、塵となる間もなく完全消滅した。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。
特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。
他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。