18-2 稲妻一閃
莉緒が手にし振るった武具の名前はカラドボルグ――。
この武具は神話武具に分類される直剣で、黄金の双剣のような煌びやかさもない、パッと見はただの平凡な西洋剣。
標準武具の中に紛れ込んでいても、誰も気づかないぐらいシンプルなデザインをしている。そのため、この剣がどういうものか事前に知らなければ、他の剣よりも少しばかり頑丈な剣と勘違いしたとしても何やおかしくない。
その量産品な見た目の剣に隠された能力こそが、カラドボルグと呼ばれる由縁。
カラドボルグは使用者の精命力を糧として、斬撃を衝撃波として放つことができる。その威力や射程距離は精命力に依存する。
精命力を込めた量に応じて、剣身に刻まれたルーン文字が青白い輝きを放ち浮かび上がる。込めた精命力が多ければ多いほど、その輝きは鮮やかさを増していく。
遠く離れた場所を落雷のように攻撃できることから、この剣は稲妻の剣と名付けられた。
で、莉緒がこの剣を振るった結果、透明な刃は飛翔しサイクロプスの両腕ごと首を斬り飛ばしてみせた。両腕を十字に交差して守備に徹していた巨人を嘲笑うように見事な一太刀だった。
木陰から目に見えぬ飛ぶ斬撃で目を潰して視界を奪う。あとは、遠方からサイクロプスが消滅するまで一方的に斬り刻む。
それが彼女にカラドボルグを手渡すと同時に伝えた作戦。
本来は、そういう感じで防御姿勢に入る前に奇襲を仕掛ける手筈だったのだが、前述のとおり新武具を手にしたこと、やっとボスと戦えるという気持ちが先行したことで、戦国武将が如く高らかに名乗りを上げて出陣していた。結果オーライではあったが、さすがにその場面を目の当たりにした時は、開いた口が塞がらなかった。
それはそれとして、やはり俺の目に狂いはなかった。
このカラドボルグをプレゼントに選んで正解だったと、心からそう思う。
そう自画自賛してしまうほど、ピタリとハマったんだから仕方がない。
まず第一に重要視したのは、莉緒のテンション上がる武具であること。課外授業の時、黄金の剣を見た時もそうだが、彼女はどの武具もそつなく扱えるが、剣を手にした時と他武具の時とでは明らかにテンションが違った。今回はプレゼントも兼ねているため、どうせ贈るなら彼女が今後も使いたいと思えるものにしたいってことで、数ある種類の中から剣種を選択した。
次はその中からどれにするかという話になるわけだが、そこで閃いたのが彼女の特技である器用貧乏。
莉緒は剣や槍といった近距離武具以外にも、弓矢などの遠距離武具も問題なく扱える。遠くの標的を射てるということは、空間認識能力も長けているということ。
近遠距離戦闘どちらにでも対応ができる武具があれば、莉緒なら完璧に扱えるのではないか。ということで、形状が剣であり遠方も狙い撃てる武具を探していたところ、このカラドボルグが目に入ったというわけだ。似たような性能をした武具が他にもないことはないが、彼女が片手でも両手でも扱える丁度いい大きさの剣となると、この一本しかなかったりもするのもまた事実。
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