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17-3 単眼巨人

 彼女の言葉を疑っているわけではないが、ダブルチェックは必ず行うべきだ。それで命を落とした冒険者が数多くいるのを俺は知っている。

 顔だけ覗かせてボスの正体を確認すると、彼女の言うように単眼の巨人(サイクロプス)で間違いない。


 個体差は多少あれど、巨人の全長はマンション3階と同じ約10メートル。その頂から60センチほど下った位置に右目が一つあった。


(右目ってことはこいつは右利きか……)


 サイクロプスはその名のとおり単眼の魔物。そのため両眼のギガンテスに比べて視覚機能は低下しているが、その代償として各身体能力は脅威の五割増しとなっている。


 そんな単眼の巨人が厄介とされる理由は、その強靭な肉体と凶暴性だ。生物を発見次第、敵味方関係なく襲っては、飽きるまで破壊の限りを尽くす。人類や魔族、他の魔物どころか、同じ巨人種であるギガンテスからも鬱陶しがられている嫌われ者。

 生半可な攻撃では怯むどころか、神経を逆なでしてしまい余計に怒りを買ってしまう。そうなると、相手を血祭りにあげたとしても、その怒りは収まらず周辺が荒れ地になるまで暴れ続ける。

 外界で対峙した個体ですら、それぐらいタガが外れていたというのに、理解が吹き飛ぶダンジョンに出現したら、一体どうなってしまうのか。


 その答えは――いつもより大人しくなる。


 ボスという役目を演じる以上、サイクロプスもまたその制約を受けてしまう。

 そもそもダンジョンにおいてボスの最優先事項は、侵入者が次の階層に行かないようにゲートを守護すること。そのためボスに任じられた魔物は、緊急事態が発生しない限りはゲート前から一歩も動くことはない。

 その緊急事項とは何かというと、侵入者がゲートに触れる、攻撃されるなど色々とあるのだが、それらのなかで一番よく起こり得るのが、目視で侵入者を確認することだ。

 聴覚が発達していたり気配察知能力などを有している魔物がボスだった場合は、目視に加えてそちらのほうも気を付けねばならない。


 ボスを倒さない限りゲートは解放されず使用不可だというのに、ボスを無視してゲートに触れる初心者冒険者は非常に多かった。

 魔物の討伐報告などでギルドに赴くたびに、頭を抱え嘆くギルド職員や先輩冒険者の愚痴を聞かされたことか。と、少しばかり話が逸れてしまった。


 臨戦態勢にならず不動ということは、まだその緊急事項を踏み抜いていないということ。

 それらに気を付けてさえいれば、ボスのほうから仕掛けてくることはない。


(さてと、どうしたものか……)


 隣接する樹木に視線を向けると、莉緒は俺の指示に従い大人しく木陰に身を隠している。だが、その従順な仕草とは裏腹に、双眸は熱く燃え滾り口元は不敵に歪んでいる。

 距離にして2メートルほど離れているにもかかわらず、その手元からはミシミシと得物が軋む音が聞こえる。


 今回、莉緒に貸し与えた武具は、片手で扱えるように持ち手を短くした伝説武具(レジェンド)に分類される手斧で、名を二丁板斧(にちょうはんふ)という。この斧もまたティソーン、コラーダのように二本一対の双斧。

 またトマホークのような投擲斧としての側面が強い。その構造上から重心は、やや刃側に偏ってはいるが、総重量は黄金の剣よりも軽量。リーチは決して長くはないがその分、非常に使い勝手が良い武具となっている。


 その伝説武具が彼女の握力に耐えかねて悲鳴を上げている。


 握り締めた程度で壊れるほど、あの双斧が脆いものではないと信じたいが、それでも少々心配になってきた。これらの武具は、俺と一緒に異世界に飛ばされた同志。その同志が身内の手により砕かれる姿など拝みたくはない。


 どうやらあまり悠長に事を構えている余裕もなさそうだ。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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