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09-1 口頭注意

 俺はいま職員室のとある席前で佇んでいる。

 眼前には脚を組み射殺しそうな眼で俺を見る担任が席に座っている。

 授業中のため俺達以外には教師も生徒もおらず、完全に一対一(サシ)でのやり取り。

 俗に言う……呼び出しというやつだ。もちろん呼び出された件については思い当たる節しかない。


 莉緒を助けるためとはいえ、俺は命令を無視して身勝手行動をとった。それでも彼女を見殺しにするぐらいなら何度だって同じ道を選ぶ。とはいっても、それはあくまで俺の都合であって今継先生の都合ではない。


 今継先生の叱責を一字一句逃すまいと耳を澄ませる。

 ここまで真剣に怒ってくれる教師は生徒にとって貴重な存在だ。怒るのだって疲れる……それが妊娠中ともなれば尚更だ。彼女が慕われている理由が、ただ戦闘能力が高いからだけじゃないことがよく分かる。


「――って、聞いているのかランカード?」

「はっ! しっかりと胸に刻み込んでいるところです!」

「そ、そうか……ならば良い。詳しい話は来週にでも聞かせてもらうとして、今日はもう早退しろ」

「えっ、いいんですか?」

「ああー今日は色々と疲れただろうしな。ちゃんと彼我結(ひがゆい)を家まで送って帰れよ?」

「あー……はい、分かりました。お先に失礼します!」


 反省文やら最悪の場合、許可証剥奪や退学処分まで考えていたが、まさかの口頭注意だけで済んでしまった。

 これなら三バカもそこまで厳しい処罰を下されることはなさそうだ。すでに委員長からそれ相応の愛を受けて猛省しているわけだし、俺も莉緒もそこまで望んではいない。


 また29階層のボス(ケルベロス)を倒さずにいた理由も直接担任の口から聞くことができた。

 俺の予想どおりで、生徒が無断で30階層に行かないようにするため、あえて倒さずに放置していた。

 そのたかだが1階層差によって、出現する魔物が桁違いに強くなるからだそうだ。

 実際に戦ってみた個人的な感想を述べるとすれば、それほどまでに差異があるようには感じないが、支給品の武器だけしか使ってはいけないという制約がかかると、少々厄介かもしれない。


 担任に深々と頭を下げ職員室から出ると、スクールバッグを取りに一旦教室に寄ってから、莉緒が休憩している保健室に向かった。

 教鞭をとる教師に早退する旨を伝え、授業の邪魔にならないように二人分の荷物を回収し足早に教室を後にした。

 莉緒の分は同姓である委員長に頼んでバッグに詰めてもらった。その間ずっと一志は教科書を立てて死角を作り、サムズアップしながら微笑んでいた。なんかイラついたので、奢り返す際はデザートは無しの方向でいくとしよう。


 本来であれば今日は丸一日課外授業の予定だったが、件のこともあったため午後からは教室で授業を受けることとなった。今回は進捗に遅れが生じている英語に時間を割くようだ。

 こんなバイリンガルな名前や容姿をしているけど俺は日本語しか喋れない。平均点が取れる程度の学力は持ち合わせてはいたが、それだけで日常会話なんて夢のまた夢である。


 異世界(ツァウベル)で生活していた時もそれで何の問題も無かった。当時は気にも留めなかったが、今になって思い返してみるとおかしな点だらけだ。

 彼らが話す言葉も文字、そのどれもが俺の知る日本語だった。自分の名前を書く時も普通にカタカナで『ルーク・ランカード』と書いていた。

 実際には異世界言語を話し書いていた可能性もあるし、転生ボーナス的なあれで日本語に自動翻訳されていたかもしれない。

 まあこれらの仮説が正しいかどうかなんて調べようもないし、今になってはもうどうでもいいことだ。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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