39-3 女神断罪
首無し赤子は泣きじゃくり四肢をバタつかせている。
「……ひっく、ひっく……う、うええぇぇっぇぇん!!!!」
例の小並感を抱いたことで、いくつか感情も取り戻すことには成功した。が、あり得なさすぎる現状を飲み込めずにいた。
首チョンパしたのに駄女神は死んでいない。それどころか首と胴が離れているにもかかわらず、つながっていた時よりも元気な気がする。手足の動きにラグも感じない。
それを見てどうしても確かめたい疑問が浮かび上がってしまった。
気になったらもうやってみるほかない。好奇心の赴くままに行動に出る。
釘打ち機を収納し左手を解放する。両手ともに自由になったところで、ギャン泣きする駄女神の脇下めがけて滑り込ませた。
「びえぇぇん……ひやっ!?」
駄女神は即座に泣き止み真顔でこちらに視線を向ける。暴れまくっていた四肢もピタリと停止する。
「えっ……あの何をなさるおつもりですか?」
「何って、そりゃ実験とお仕置きに決まってるだろ?」
「よろしければご説明いただけますと、非常に助かるといいますか……」
「いやなに……この状態でも神経って、つながってんのかなって思ってさ。もう一個のほうは、俺の制服をビチャビチャに濡らし罰だな。せっかくミーナが乾かしてくれたってのに」
「それは申し訳ありません。あの……最初に私が反応した時点で、勇者様は神経がつながっているの気づいてますよね……?」
「何事も実際に試してみないことには分からんよな~」
わしゃわしゃわしゃわしゃ。
指先を小刻みに動かしつつ優しいタッチでさする。
「あ、やめ……お願い……私、そこ弱いいいいい! あはははははぁぁぁっはは……はぁはぁ……あひゃあははははは……ゆる、ゆるし……いひいひひひひ――」
懇願する駄女神の言葉に耳を貸さず、休憩なしで一旦10分間くすぐり続けてみた。
駄女神は「ゆるひて、ごめなしゃ、もうちません」と呂律も回らないなか、何度も謝罪の言葉を口にしていた。
口角は引きつり焦点は合わず眼も虚ろ。息も絶え絶えで身体もビクンビクンと痙攣しているが、別段気にすることもない。
首と胴がつながってなくても、正常どおり神経伝達は行われているのが分かった。まあつっても、駄女神の言うように最初から気づいていたけど、やる理由はあってもやらない理由はなかったので実行に移した。思いのほか興が乗ってしまいやり過ぎた気もするが反省はしていない。
完全に抵抗の意志を削いだところで、駄女神の肢体に目を向ける。切断した頭部と胴体からは一滴の血も流れていない。本来見えるはずの断面は絵の具で塗りつぶされたように黒一色だ。物理的な方法では、駄女神を完全に殺すことはできないということか。
俺達と同じ容姿で流血もしたから弱点もまた同じだと勝手に思い込んでいた。
どれほど似ていようが全くの別物。世界の管理者たる神を殺すには一筋縄ではいかないか。
首無し騎士のように元から頭部の取り外しが可能な魔物とはまた別種。首を切り落としても死なない魔物と戦ったこともある。あの時は、確か原形を留めないほど細かく斬り刻んだら倒せた。
その魔物の名は吸血鬼。噛みついた相手を眷属にする能力を持つ。不死者のくせに敗戦濃色となれば蝙蝠に変化し逃走を図る。何とも情けない魔物だった。
(一撃目は血が出た……血が出るのなら殺せるはずだ……)
ふと駄女神と目が合った。
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