36-4 女神遊戯
女神の地位を簒奪し我らの世界を手中に収めたもう一人の女神。
かつては慈愛に満ちた神だったらしいが愛情と憎悪は表裏一体。深い愛情であればあるほど憎悪もまた深くなる。一度でもその軸がブレて疑念を抱いてしまうと、その揺らぎはもう止まることはない。いとも簡単にコインのようにひっくり返る。
初めて管理を任された世界で、人間達は信仰が故に暴走し殺戮を繰り返した。
女神様が異教徒の血を欲していると、勝手に解釈して破壊の限りを尽くした。
環境汚染が広まり地上で暮らせなくなっても彼らは行動を続けた。最後には人類は全滅し荒涼とした大地のみが残った。
その光景を一部始終視ていた女神は心を壊してしまう。そうしなければ彼女はきっと耐えられなかったのだろう。そうして彼女は人間を慈しむ存在から、ゲームのコマとして認識するようになる。
どれほど愛情を注ごうが勝手に動くのであれば、最初からそんな感情を抱く必要などない。これはただのゲーム、彼らは自分を楽しませるだけのコマにすぎない。
その思想を肯定するかのように、次に任された世界では万事上手いこと管理できた。陣営を二つに分けて争わせる陣取り合戦。ルールは簡単、総大将を退場させるか、全滅させた陣営の勝利となる。
その後世界がどうなろうかなど1ミリも興味がない、彼女にとってはあくまでただのゲームなのだから。クリアしたら次のゲームを遊ぶだけだ。
遊び半分で女神は次々と世界を蹂躙して回った。だが、彼女の心が癒えることはなかった。それどころか回数を重ねるにつれて過激なものへと変転していく。
その暴走を見かねた神々により、女神は人類が存在しない世界の管理を任じられる。暫くはそこで大人しくしていた女神だったが、ついに限界を迎える。
女神は禁忌を冒す。
他の神が管轄している世界を乗っ取るという暴挙に出た。その標的となったのが眼前で酔っぱらっている彼女が管理していた世界ツァウベルだ。
奪い取られたのなら奪い返せばいい。事はそんな簡単な話ではない。あまりにも実力差がありすぎるのだ。そのうえ地位も奪われてしまったことで、さらに弱体化しており背伸びしても逆立ちしても到底敵わない。他の神に助力を願おうにも良い返事はもらえない。神同士の争いに部外者が参加するのはご法度。ルールとして厳しく定められている。
さらに女神は禁忌を冒した。
他世界の人間の魂を強奪し転生させた。邪神などと他の神から疎まれる神ですら、その手段だけは用いることがなかった。世界の理から逸脱する危険極まりない行為。
だが、残念なことに現状においては好都合なものだった。被害を受けたということは、その世界を管理する神は部外者ではなくなる。
神の助力を得た酔っぱらいは魔王の魂を呼び寄せた。その目的は、魔王を転生させること。だが、それはツァウベルを取り返す足掛かりとするためではない。かの女神が次に標的とした世界を救うためだ。
こうして魔王は助っ人として天津谷詩織に転生することになる。
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