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33-4 新生部隊

 担任の今継先生が持ちかけた提案、それは1年E組を先行部隊に組み込めというものだった。


 俺達四人だけに任せるのは不安だとか色々と口実をつけてきた。だが、その言葉の端々には俺達を心配したり一緒に戦いたいという心情が感じ取れた。

 あの時、俺に向けていた眼はその思いやる気持ちが昂りすぎて、殺意めいた眼になっていた。そう勝手に解釈し胸の内にしまっておいた。


 その場で承諾せずに一度持ち帰りミーナ達に彼らの思いを伝えると満場一致で賛成。


 こうして1年E組を加えた総勢33名の先行部隊改め新生遊撃隊が完成した。俺達のほうが吸収合併されてないかと一瞬そんな野暮な考えがよぎったが、これもまた心底に埋めておいた。


 さすがに激戦が予想されることもあり、今継先生は後行部隊に編入することになった。正直な話、部隊うんぬんじゃなくて大事な身体なんだから、この機会にダンジョンから脱して安静にしてほしい。

 ただそれと同時に思うこともある。最後まで部隊は異なれど一緒に戦おうとしてくれる、見届けてくれるその姿勢が最高で最強の励みとなる。自分自身に立てた誓い、それをさらに強固なものにしてくれる。


 担任不在は指揮官がいないのと同義なため倉原先生が代わりに同行してくれることとなった。

 倉原先生の傷は犠牲による癒し(サクリファイスヒール)で完治させた。自信を持ってそう断言できるが、まさか今日中に前線復帰するとは予想だにしていなかった。例え復帰したとしても、戦闘とは直接関係ない後方支援と思っていたからだ。


 それとは別に、今継先生が交渉してくれていたこともそうだが、倉原先生が目覚めたことすら知らなかった。少なからず交渉については、ダンジョンで合流するよりも前じゃないと難しいはずだ。後者についても目覚めたとしても、あの空間からどうやって抜け出したのか、色々と理解が追いつかない。


 家屋の戻り相談した際に、天津谷が簡潔にその謎を説明してくれた。


 倉原先生を囲っていた結界は、1年E組がダンジョンに到着したタイミングで解除したらしい。

 ダンジョン内から外界の動きを感知し発動した呪文を遠隔で解除する。信じがたいことを平然と口にしていた。考えれば考えるほど頭が痛くなるので、彼女ならそれぐらいやるかってことで、無理矢理納得することにした。




 午後9時00分、俺達はゲート前に集合し最終チェックを行っていた。


 特に重点的にチェックしたのは彼らが手にしている武具だ。学園生徒に支給される標準武具(ノーマル)。オーガを一度斬っただけで使い物にならなくなった、あの日本刀と同列の武具。

 本当に不思議に思う。先生も生徒もなんであんな頼りない武具に命を預けられるのだと。だけど、それと同じくらい不思議に思っていることもある。


 なぜ彼らの標準武具(ノーマル)は、俺の標準武具(日本刀)のようになっていない(・・・・・・)のだろうか、と。12階層から使い続けているというのに、剣は刃こぼれしていないし、槍の矛先も歪むどころか欠けてもいない。ほぼ完璧な状態を維持していた。


 その違いは一体何なのか、どこに違いがあるのか思案を巡らせる。すると、点と点がつながり線となるように気づいた。全ては俺が原因だったということに。


 伝説武具(レジェンド)などの高品質な武具にかまけて粗雑に扱うようになっていた。その感覚で標準武具(ノーマル)を振るえば、どうなるかなど微塵も考慮していない、乱暴な太刀筋だった。武具にはそれぞれ適した使い方がある。それを俺は忘れていたようだ。

 標準武具(ノーマル)とはいえ現代では再現不能な未知なる戦利品(アーティファクト)なのだから、性能強度は折り紙付きだというのに。


 武具は大切に扱いましょうってのを復習したところで、俺は武具の博覧会を催すことにした。

 お手軽収納術ディメンションストレージから級友が持っている武具と同じタイプのものを適当に選んでは取り出していく。


 その様子を終始、目をまん丸にし口をあんぐりさせて見守る1年E組(あいつら)の顔だけは一生忘れそうにない。


 ひと通りピックアップしたところで彼らに声をかける。


「これを貸してやる。だから絶対に生きて俺に返しに来い! って、あれ、みんな……聞いてる? 俺結構いい感じのこと言ってたと思うんだけど……」


 女性陣が我先にと武具を手に取り使用感を確かめる。バーゲンセールに群がる猛者を彷彿とさせる。一志を筆頭に男性陣は、彼女達が選び終えるまで遠目でその光景を眺めている。


「いつの時代でもこれは変わんないだな……」

「ああそうなのかもな。親父もこんな感じで時間潰していたなー」

「一志んとこもか、俺んとこもそんな感じだったわ」

「お前んところもか、やっぱどこの家も同じなんだな!」

「だよなぁ―!!」


 こっちはこっちで、そんな感じで哀愁漂う話で盛り上がっている。


 生きて帰ろうと誓い合い仲間との結束を強める。少年漫画定番のムネアツ展開。だけど、思ってたんとだいぶ違う。あまりにも淡白すぎる、俺の頑張りを返せ……このやろう。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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