32-4 作戦詳細
ミーナ達が会議を行っていた間、そのわずかな時間、俺は級友らと話に花を咲かせていた。実時間だとまだ2時間しか? 2時間も? 経っていないというのに、酷く懐かしく思えた。
そこで学級委員長から衝撃の事実を聞かされた。
級友含めた全生徒はこの厄災が訪れることを知っていたというのだ。
それどころかこの学園に通っていて知らないほうがおかしいらしい。
入学式に校長から『来たる未曽有の厄災に備えて鍛練に励め』と一喝されるから、嫌でも脳裏に刻まれてしまうとのことだった。
あの時、教室にどよめきが起こりはしたが、誰一人としてパニックに陥らず冷静だったのは『その時が訪れた』と理解していたからだ。あまりにも覚悟決まりすぎだろ。
また厄災が発生した原因や条件については伏せられているようで、異世界同様に『自然現象』ということになっている。
初見初耳みたいな顔をしていた莉緒は本当に覚えていなかったようで、あとでコッソリとそのことを耳打ちしてきた。
級友の前で普通にいえばいいのに、そこだけなぜか羞恥心が芽生えていたようだ。その程度で莉緒が築き上げた地位が失墜することなどあり得ないだろうに。てか、別に俺に言わずとも黙っていてもよかったのでは……。
それとは別に気になることもあった。それはいつどのタイミングで莉緒は、彼らが加勢しに来てくれることを知ったのかということだ。
俺と莉緒は今朝から今に至るまでほぼ蚊帳の外状態だった。魔物大進軍という未曾有の危機が差し迫っていることも、天津谷が話すまで知らなかったし、増援が来ることは教えてもらっていない。
俺達四人は常に一緒で別行動をとることもなく11階層まで来たのに、なぜ俺だけ知らなかったのか。別に今さら知ったところで何がどうなるというわけでもないのだが、モヤっとしてちょっと気になる。
作戦名――はじめてのおつかい。
第四段階こと魔物大進軍が起こるよりも先にダンジョンコアを破壊する。
詳しい作戦内容はこうだ。最高戦力である俺達四人を極力温存するため、各学年より集められた総勢600名の生徒と各担任が各階層を踏破していくというもの。
そのうちの約半数330名が、先行部隊としてボスを撃破しダンジョン攻略を目指す。残りの270名は後行部隊となり、先行部隊が倒し損ねた魔物を殲滅しながら追いかける。二重掃除を行うことで魔物が階層を下ってくることを阻止する。
本来なら半々の300人ずつに分ける予定だったが、俺んとこの級友もとい担任の我儘により、先行部隊の人数が気持ち増加している。
また先行部隊と後行部隊には、それぞれ第一から第三の中隊があり、さらにそこから三つの小隊に分けられる。90×3の270名と30×3の90名。小隊は一クラスのことを指し、中隊とは三クラスのこと。余った一クラスは予備戦力、つまるところ交代要員だ。負傷者や休憩が必要な小隊の代わりに戦線に参加する部隊。
さらにイレギュラーな存在である1年E組は遊撃隊となっている。どうせ言ったところで聞く気ないだろうってことで、校長から好き勝手動いていいという指示を受けているらしい。一クラス少ない後行部隊は、担当を持たない先生数名が予備戦力として待機している。
全校生徒は900名を超えるが、さすがに中等部一年二年は、まだ未熟すぎて戦力に数えられないようで彼らはお留守番。普通に授業を受けている。
学園関係者ではないが、実力のある御伽適応者も今回の作戦に参加している。彼らは最終防衛ラインとして一階層で陣を張っている。中等部三年もここに組み込まれている。
この作戦を知った時の莉緒の表情ときたら、それはそれは凄まじいものだった。
絶望に満ちた顔、瞳の輝きは消えて口は半開きになり、歩く時も愛剣を担ぐことも頬ずりすることもなくガリガリと引きずっている。
思う存分カラドボルグを震えると思っていた矢先に、戦うなと命令を下されたのだから狂戦士してはたまったもんじゃないだろう。
ボロボロの精神状態だというのに、例の尋問だけは忘れることなく続行してきた。
それとこれとはまた別の話のようだ……ほんとどういうことなの。
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