31-3 異変調査
星影学園中等部三年の図書委員――天津谷詩織から聞かされた話は衝撃的だった。そのおかげで、このダンジョンは今までのとは完全に別種のものだと認識することができた。
彼女は一から十まで事細かに説明してくれた。
少しでも説明が不足したら、そのたび俺が訊き返してとくると勘付いていたからだろう。
その先読みしてくる感じもまた彼女が年上なんじゃないかと錯覚させる。
まあ隣で莉緒が終始『どゆこと?』と言霊を投げまくっていたのも大きいかもしれないが……。
あのケガをしていた彼らは、異変調査のために特別編成された生徒であり、その班の指揮を執っていたのが倉原先生だった。
調査といっても月に一度の見回りを兼ねた、ただの合同課外授業。参加者は各学年からランダムで決められる。今回1年E組は、その抽選に外れたため誰も参加していない。もし、彼らが参加していたらと思うとぞっとする。いつの間にか仲間意識が芽吹いていることに自分でも驚いてしまう。
またこの合同課外授業は、普段の課外授業よりも数時間早く出発するらしい。
で、彼らはいつもの調子でダンジョンへと向かい、適正の階層に下りて魔物と戦い未知なる戦利品を回収して帰還する。が、そうなることはなかった。その原因は俺達にあった。
あの魔王を模した石像をうっかり破壊してしまったことが全ての始まり。
ダンジョンコア――。
それはダンジョンを維持するために必要不可欠な核となる装置。どんなダンジョンであっても最終階層には必ず存在する。だが、俺は異世界で一度もあんな石像を見たことがなかった。それもそのはず、あちらの世界ではその形状が異なっていたからだ。
異世界でのダンジョンコアの姿は、胸像ではなくて魔物だった。
ラスボスやエンドボスと呼称される最終階層の最奥に出現する魔物、それこそがダンジョンコア。
そのボスを撃破すれば、ダンジョンが消滅するのも得心がいくというもの。
今回はそのダンジョンコアが胸像だった上に、偽物を配置するという罠まで仕掛けられていた。俺達がまんまと引っかかったことで、その罠が発動し倉原先生率いる課外授業班が犠牲となった。
天津谷が言うには、この罠は単発で終わりじゃなくて、段階を踏んで連鎖発動していく類の罠らしい。
まず第一段階は、魔物の強化度合いの大幅向上である。一階層ごとに緩やかに強くなるはずの魔物を五段飛び、十段飛びの勢いで強くなっていく。普段の感覚で次の階層へ向かうと、急激な魔物の強さの変化に驚き困惑することだろう。生徒によってはそれだけで戦意を失うかもしれない。
第二段階は、ゲートの機能が一部制限される。エレベーターのように指定した階層に移動できる階層転移が全面的に使用不可となる。これにより進みにしても戻るにしても、一段一段階段を上り下りするように、各階層を突破しなければならなくなった。
それでもまだ彼らが幸運だったのは、倉原先生が下位階層を選んでいたことだ。理由は不明だが、何か先生のなかで思うところがあったのかもしれない。
第三段階は、ダンジョン内に侵入者が脱出したタイミングで発動する。その内容は、もう一度最初からダンジョンを攻略するというものだ。各階層を攻略したという実績は、消え去り全て無かったことになる。言うまでもなく、それに伴い倒したボスも全て復活している。
もう一度、最初から遊べるドンってことである。
何が恐ろしいかって、ここまではただの序章にしかすぎないということだ。
罠の締め括りとなる第四段階――それだけは、何があっても発動を阻止しなければならない。
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