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現実の裏には魔法がある  作者: ロタ
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18話『3ヶ月の戦略』

「…さて、これで少しは伝わったかしら?」

師匠の声が響く。


俺はその迫力に唖然としつつ、ただ真剣に耳を傾けるしかなかった。

次の瞬間、師匠が軽く手を振ると、体全体にまとっていた魔力が音を立てるように大気へ解き放たれる。

まるで雷が身体から拡散していくような感覚とともに、師匠の姿は一瞬にして以前の穏やかな雰囲気に戻った。


「あれが、王石(オーバーイン)融合(テグレーション)…」俺はその光景に見惚れていたが、師匠は静かに口を開いた。


「君が一月と少し前まではただの学生だったこと、そして秋華魔道祭のために実力を上げたいのも聞いている。」


俺は頷きながら、その一言一言を噛み締めた。

「けれど、はっきり言わせてもらうけどね――たった3ヶ月で同学年の魔法使いたちに追いつくなんて、本来なら不可能だ。」


その言葉に、俺は胸が少し縮む思いだった。だけど、師匠はそこで言葉を切らなかった。


「だが、君は普通の魔術師じゃない。王石所持者(クラウンホルダー)である君なら、可能性がゼロじゃない。

いや、私はむしろ、やるなら他の誰よりも目立てる存在になってほしいと思っている。」


「目立つ、ですか?」


俺が思わず聞き返すと、師匠は笑みを浮かべた。


その笑顔は、どこか挑発的で、俺の中に燃え立つような何かを呼び起こした。

「そうだ。どうせやるなら、みんなにあっと驚かれるような実力を見せつけたいと思わないか?」


「……はい!」

気づけば、俺は強く頷いていた。その言葉に、俺の中の迷いが消えていくのを感じた。


「よろしい。なら、この3ヶ月、死ぬ気で王石融合をモノにしなさい。

王石融合を使える状態で戦えば、同学年に敵はいない。」


俺は思わず「はい!」とやる気に満ちた返事を返した。



王石融合の修行が始まって1時間。俺は全くコツを掴めずにいた。


それもそのはずだった。

師匠によれば、るな師匠自身が当時これを完全に習得するまで1年以上かかったという。

そして師匠はその前から精霊術師としても活動し、すでに似た精霊(エレメンタル)顕現(アウェイク)という高度な技術を持っていたらしい。


「どうやら私も読みが甘かったみたいだね。」

るな師匠が俺を見ながら呟く。


「くそっ、どうすれば……!」

俺が額に汗を滲ませながら魔力を操作しようとしていると、るな師匠が口を開いた。


「真少年、悪いけどさ。王石融合以前の問題かもしれないな。」


俺は驚いて師匠を振り返る。

「どういうことですか?」


「君の魔力操作の技量は、この年齢にしてはかなり優れている。

普通の学生ならそれだけでも十分評価できるレベルだし それを2ヶ月足らずで体得しているセンスは私が花丸満点をあげる...。」


「でも?」


俺が続きを促すと、師匠は少し言葉を選ぶようにしてから答えた。


「王石融合はね、王石の莫大な魔力を引き出して使う技術だ。

だが、今の君が引き出す魔力量じゃ、王石融合が出来ても魔力が足りず維持することができない。」


「……!」


言われてみれば確かにそうだ。

俺が引き出せる王石の魔力は、師匠のそれとは比べ物にならないほど少ない。

それに、今の訓練でもすぐに息切れしてしまった。


「王石融合は、身体への負担も大きい。それを軽減するには、王石の莫大な魔力量、それを正確に調整できる技量が必要だ。」


俺は唇を噛んだ。簡単に習得できる技術じゃないことは分かっていたが、ここまで厳しいとは思わなかった。


「だから、まずは基礎からだ。」

師匠の声には決意が込められていた。


「君には、王石の魔力量を引き出すトレーニングを徹底的にやってもらう。

それと同時に、模擬戦で実戦経験を積んでもらう。戦うことに慣れておかないと、秋華魔道祭では生き残れないからな。」


「模擬戦……ですか?」


俺が問いかけると、師匠はニヤリと笑った。


「そうだ。そして最後は、遺跡(ダンジョン)での怪物(モンスター)討伐だ。」


「遺跡って……学生は行けないんじゃ?同伴者がいれば良いとか?」


「その通り、基準を満たした同伴者がいればいい。私は八強者でもあるが同時に遺跡探索者(ダンジョンウォーカー)としての最高ランクであるSランクの資格も持っている。君を連れていくくらいはお茶の子さいさいだよ。」


「君が3ヶ月でやることは、主に3つだ。」


るな師匠が指を一本立てる。

「一つは、もちろん王石融合の特訓。」


「次に模擬戦だ。実戦経験を積むために、私や蓮、蓮の妹ちゃんとひたすらに戦い続ける事。」


「最後は遺跡探索と怪物討伐だよ。」


俺はその話に驚きながらも、覚悟を決めた。


「この3ヶ月で、死ぬ気でやり抜きなさい。」


「はい!」


俺は元気よく返事をしたが、この時の俺はまだ、この3ヶ月が想像を遥かに超える過酷さを秘めているとは今はまだ知らなかった…。

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