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現実の裏には魔法がある  作者: ロタ
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11話『星慧学園』


特訓を始めてから、今日でちょうど3週間が経った。


1週間ほど前の模擬戦までは、凛の攻撃に対応しきれず、いつも吹っ飛ばされるのがオチだった。

けれど、今では結界術の精度が上がり、彼女の攻撃を何度か耐えられるようになってきた。

それに、魔力循環の感覚も掴めてきたおかげで、身体能力が明らかに向上しているのが自分でもわかる。


だからこそ、さっきの模擬戦では、これまで以上に善戦できた気がする。

もちろん、凛が手加減しているのはわかっている。

それでも、自分が成長している手応えは確かにあった。


それだけじゃない。

夕方までは模擬戦と基礎練習、夜は家での特訓だ。

王石の魔力を引き出す練習も始まり、自分の限界を知りながら少しずつそれを広げていく。


火魔法の魔法陣を覚えるのもその一環だ。

この魔法陣に王石の魔力を流すと、単なる基礎魔法でも数倍の威力になると凛が教えてくれた。

それを聞いたときは半信半疑だったけど、実際にその片鱗を感じたとき――正直、震えた。


そして、模擬戦が終わったばかりの今。

俺は地面に座り込み、荒い息をつきながら額の汗を拭った。

体中が鈍い痛みを訴えているが、不思議と気分は悪くない。


「やるじゃん、真くん。今日の動き、かなり良かったよ!」

凛が満足そうな笑顔でそう言う。


「まあな……でも、それでもまだ凛には全然追いつける気がしない。」

俺は息を整えながら答えた。

そう言いながらも、胸の奥にほんの少しだけ達成感があるのは、自分でもわかっていた。


凛は少しだけ肩をすくめて、にっこりと笑った。

「まだ学び始めて3週間でこれなら、十分すごいと思うよ。」


そう言いながらも、凛は内心で考えていた。1か月前までは普通の学生だったんだもんね。

格闘センスが抜群ってわけじゃないけど、動きに無駄が少なくなってきてる。

飲み込みも速いし、王石の力を除いても、きっとかなり強い魔術師になりそうだね。


そんなことを考えながら、凛は少し微笑んだ。同い年で、こんなに成長している真を見ていると、なんだか楽しみになってくる。


最初はお姉ちゃんに面倒なことを頼まれたんだと思ってたけど、真くんに教えているうちに、彼がどんどん成長していくのを見ていると、なんだか嬉しくなってきた。

自分が教えたことで真くんが少しずつ強くなっているのを感じると、自然と楽しい気持ちになった。


その心情描写が終わり、凛と真は夕飯を食べながら会話を楽しんでいた。

夕食はさっぱりとした和食で、真は凛の言葉を待ちながら箸を進める。


「明日は学園に行くよ。」


凛が、箸を置きながら、何気なく言った。


「え?明日って学園行くのか?」と真は思わず顔を上げ、少し驚いたように言う。


「確か、一昨日くらい、学園編入自体は結局もう1週間後って言ってなかったか?」


凛は少し考え込み、そして小さく笑う。


「確かに編入自体は再来週に決まったけど、その前にお姉ちゃんが真くんに会ってみたいんだって。」


「お姉さんが?」と真は少し驚きながらも、凛の表情を見て何かが気になり始める。


「どうしてだ?」


凛はそのまま少し考え込みながら答える。

「ここ最近、お姉ちゃんに真くんの成長ぶりを話してたから、編入前に実力を見てみたくなったんじゃないかな?」


「実力って?」真は目を瞬かせた。

「まさか、お姉さんと模擬戦…?」


「う〜ん、分からないけど…」凛は少し曖昧に言いながら箸を持ち上げ、「お姉ちゃん戦うの結構好きだから、そうなるかもね。」と口を開いた。


真はご飯を食べながら、その言葉を考えた。

以前、凛から聞いた話が頭をよぎる。


冬川蓮、凛の姉であり、若干27歳という年齢で魔法を教える専門学校『星慧学園(せいけいがくえ)』の学園長を務める人物。


お姉さんは、魔法において並外れた実力を持ち、学園内外から高く評価されているらしい。凛が言っていたが、ある遺跡で非常に強力な怪物を単独で撃破したこともあるらしい。

その実力だけではなく、冬川家という名家で育ち、信頼できる人物としても広く認められているということだ。

そんな若くして学園長になれた理由の一つは、前任者の推薦だという話。

前学園長は年齢的に隠居を考えており、彼女を後任として選んだんだとか。


「俺も会ってみたくはあるけど…」と真は小さくつぶやいた。

「凛は手加減してくれるんだろうけど、果たしてそんな人の手加減が、俺にとって本当に手加減になるのか、少し怖いな。」


凛は少し笑みを浮かべながら言った。

「でも、学園にはちゃんと興味あるんでしょ?楽しみにしてるんだよね?」


「まあ、確かに。」真は少し頷きながら答えた。

「学園には興味もあるし、楽しみではあるかな。」


「てか学園に行くって事は、明日7時とか早めに起きた方がいいか?」


「8時に起きれば十分だよ。」凛は自然に答え、食事を終えた。



その日のうちに、真は翌日の準備を整えて早めに寝た。翌朝、アラームが鳴り、真はその音で目を覚ます。けれど、まだ少し眠気が残っていたため、アラームを止めて二度寝しようとした。

その瞬間、布団がめくられ、凛の声が響く。


「二度寝しようとしない!」


「うーん…」真はまだ眠そうに目をこすりながら、ため息をつく。

凛はすでにほぼ準備を終えており、笑顔で言った。


「朝食できてるよ。」


真はそれを聞いて、急いで布団から出て、サッと準備を整える。


真は食事を急いで終わらせ、準備を整えた。

二人は玄関に集まった。


「じゃあ、行こうか。」凛が準備を終えて玄関に立っている。

「うん、行こう。」真もそれに応じて立ち上がり、二人で家を出る。


ドアを開けると、朝の冷たい空気がふわっと頬に触れる。歩きながら、真がふと思い出したように言った。


「そういえば、学園って都外にあるんだよな?」


「うん、だから事前にお姉ちゃんが誰に頼んだかは知らないけど、少し出た所に車を出してくれているはずだよ。」


凛が答えると、真は少し歩きながら頷いた。

しばらく歩いていると、凛が足を止めて言った。


「あ、あった! あの車だね。」


真は凛が指差す方向を見た。大きな車が停まっており、その横には身長が170センチくらいの高い女性が立っている。その女性が凛を見て、少しフランクな感じで声をかけてきた。


「久しぶり。待ってたよ、凛ちゃん。」

「あっ、お久しぶりです、夏希さん。」凛がにこやかに返す。


真は二人のやり取りを見て、どうやら知り合いだということを悟る。

夏希さんが真の方を見て、少し興味深そうに尋ねた。

「少年が蓮の言っていた王石所持者(クラウンホルダー)かい?」


「あぁ、はい。」真は少し戸惑いながらも頷いた。


「一月前まで一般人だったと聞いたけど、なかなか

いい顔してるね。」


夏希さんは軽く笑みを浮かべて言う。


「よし、車乗って。」と夏希さんが言うと、凛と真は車に乗り込む。

車が少し進んでから、真が凛に尋ねた。


「夏希さんとはどういう関係なんだ?」


凛が窓の外を見ながら答える。

「夏希さんはお姉ちゃんの同級生で、昔は家にも遊びに来たことがあるんだよ。」


「へぇ〜、そうなんだ。」真は少し驚きながらも、朝で眠いのかボーッとし始める。


それに気づいた夏希さんが振り向いて、優しく言った。


「少年、眠いなら寝ていてもいいよ。もちろん、凛ちゃんも眠いなら寝てていいよ。」


夏希さん曰く、50分くらいはかかるとのことだったので、僕はその言葉に甘えて寝ることにした。


しばらくして、真は心地よく眠っていたが、凛の声で目を覚ます。


「もう着くよ、真くん。」


窓の外を見ると、都内とは違う、広がる自然の景色が広がっていた。その中に、異様に大きくて綺麗な学校が鎮座している。


「よし、ついたよ。」夏希さんが言うと、真と凛は車を降りる準備をする。


「降りていいよ。」


三人は車を降り、学園の中へ向かって歩き出した。






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