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現実の裏には魔法がある  作者: ロタ
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10話『 特訓 ③ 』

結界術を教わってから3日が経った。

魔力循環の練習も並行しながら、俺は少しずつ結界術の基礎を覚えていった。そして今日、ついに初めて結界術を展開することに成功した。

とはいえ、凛の結界と比べるとどこか頼りない。魔力の圧も弱く、隙間があるような感覚だ。


「思ったより早く発動できたね!」

凛が明るく声を弾ませながら、俺の作った結界をじっくり観察している。


「形はそこそこ良いし、基礎はしっかりできてる。ただ、まだちょっと魔力の流れが不安定かな。これから練習すれば、もっと良くなるよ!」

「一応展開出来たけど、この後も家の中で練習続けるのか?」

俺が尋ねると、凛は一瞬考え込んでから、何かを思い付いたように微笑んだ。


「いや、次からは模擬戦の後、そのまま外で結界術の練習をしようか。広い場所の方が実践的だし、動きながら使う方が絶対に上達が早いからね。」

「外で魔法なんて使って大丈夫なのか?」

俺が少し不安そうに聞くと、凛は自信たっぷりに頷きながら、自分の鞄に手を伸ばした。


「その辺は問題ないよ。このためにちゃんと用意してあるんだから。」

凛が鞄の中を探り、取り出したのは、手のひらほどのサイズの丸みを帯びた装置だった。

金属製で、中央に魔法陣のような刻印が彫り込まれていて、どこか不思議な輝きを放っている。


「これが周囲の人たちから私たちの存在を認識しづらくする魔道具。範囲はそこまで広くないけど、少し魔法の練習をするくらいなら十分だよ。」

「へえ、すごいな……便利なものもあるんだな。」

俺が感心したように呟くと、凛はその魔道具を軽く掲げてみせた。


「これがあれば、外での特訓も安心してできるからね。さっ、次からはこれを使ってどんどん練習していこう!」

俺は少し緊張しながらも、次の練習がどんなものになるのか期待を抱き始めるのだった。


初めて結界術を展開してから1日が経過し、外での結界術の練習が始まっていた。

だが、思った以上に魔法を使うということは難しく、真は何度も失敗を繰り返していた。


「……くっ。」

真は立ち上がり、もう一度集中を試みる。

だが、その結界が上手く展開されたかと思った瞬間、凛が放った雷の魔法が真の結界に向かって直撃した。

「っ!」

真は衝撃を受け、体が一瞬痺れたが、何とか結界を保とうとした。しかし、結界の魔力はそれほど強くない。

雷の魔法が弱まることなく、そのまま真を貫いていく。


「はぁ……!」

真は体をよろけさせながらも、なんとか次の魔法を受ける準備をする。

しかし、凛は容赦なくもう一発、風の魔法を放つ。

「うわっ!」

風の魔法に吹き飛ばされ、地面に転がる真。

「くそ……思ったよりも……防げない……」

顔を上げると、凛は少し心配そうにその様子を見守っていた。


「魔法の直撃、少しずつ防げてきてるよ。どう? 威力、ちょっと下げようか?」

凛は真を気遣うように提案した。


「いや、いい。」

真はしばらく息をつきながらも、力強く言った。


「きついけど、耐えられないわけじゃない。これくらいできなきゃ、魔法なんて使えないだろ。これもあくまで基礎だし、習得するためには実践感も大事だろ。」


心の中で、真は少しだけ苦笑しながら思った。「まぁ、実践なんてまだ俺はどんなのか分からないけど..」


真は疲れ切った様子で息をつきながらも、立ち上がる。そ

の間にも、凛の手から次々と魔法が放たれる。雷、風、また雷――。

その全てを受け、疲労がどんどん蓄積していく。そして、さらに1日が経過した。


再び模擬戦の準備が整い、真は気合を入れて立ち上がる。

今日は昨日よりも明らかに魔力の流れをスムーズに操作できている。

結界術の練習のおかげか、魔力循環の精度が着実に上がっている。


「今日こそは絶対に、一発入れてみせる!」

模擬戦が始まり、真は気合いを入れて立ち上がる。


「行くぞ、凛!」


凛は軽く手を振りながら、少し楽しげに頷いた。


「うん、本気で来なよ」


真はその言葉に反応して一気に前進。

魔力循環を意識し、全身に力を行き渡らせながら拳を放つ。

だが、凛はその拳を軽やかにかわし、真の隙を見逃さず反撃に転じる。


「うん、早くなってるね。」


凛は素早く踏み込むと、真の腹部を狙って蹴りを放つ。

しかし、真はその攻撃を予測し、腕で防いでみせる。


「よし!」 


真はそのまま勢いを活かして、低い姿勢から反撃を放つ。

しかし、凛はその攻撃を微妙にかわしながらも、真の拳がわずかに凛の服を掠める。


「おぉ、さらに早くなったね。」


凛は驚きつつも、軽く笑いながら言った。

少し嬉しそうに、でも冷静な口調で。


真は一旦数歩後ろに下がり、体勢を立て直して次の攻撃に備える。

今度こそ、と胸の中で決意を固め、更に魔力を全身に巡らせながら距離を詰めるべく隙を待つ。

攻撃は少しずつではあるが、前回よりも速く、精密になってきた。


その時、凛が素早く手をかざし、雷の魔法を放った。練習時と同程度の基礎魔法だが、真にとっては油断ならない攻撃だ。


「来た!」と真は冷静に叫び、すぐさま右手に小さな魔法陣を展開して結界を張る。

雷の魔法が結界に当たると、電流が弾けるように広がり、結界はしっかりと防いだかに見えた。

しかし、次の瞬間、結界の中心から決壊が始まり、端までそのひび割れが広がる。


「くっ…!」


結界が完全に破れたが、真はあえて後退せず、前進して接近。

少しでも防げたことを噛み締めながら、冷静さを保ちつつ、攻撃を仕掛ける。

その攻防の中で、魔力循環の速度や量が徐々に増し、身体能力の上昇も更に感じるようになった。

凛もそれに合わせるように、少しずつ手を抜かずに動きが鋭くなっていった。

彼女の攻撃が更に強く、速くなる一方で、真もその速度に対応するために循環の魔力量を更に増やそうとする。

そして、真はここだと思ったその瞬間、一気に拳を繰り出す。

しかし、凛はその攻撃を受け流し、真の一撃を避けると同時に、真の腹部に風魔法を放った。


「っ――!」


強烈な風が真の体を打ち、無力化されるように吹き飛ばされる。

地面に叩きつけられた真は、しばらく動けずにそのまま倒れ込んでいた。

痛みが走る中、やはり凛の強さを痛感し、今の自分ではまだ及ばないと感じた。。


ちょっとして、凛が真の元に歩み寄る。


「お疲れ様。たった10日でかなり腕を上げたね。」


真は息を整えながら答える。


「いや、まだまだだよ。」


凛は少し笑みを浮かべ、肩をすくめた。

「まぁ、私と比べたらまだまだね。でも、いい感じだよ。」


その言葉には、凛自身がまだ本気を出していないという余裕のある雰囲気が漂っていた。


「でも、2つの基礎は最低限コツは掴んできたし、あとは残りの期間、練習あるのみだね。」と凛は言いながら、真を見守った。


真は頷き、さらに気を引き締めた。


「うん、まだまだやるべきことがいっぱいだ。」


凛はその答えに満足そうに微笑んだ。


「うん、それくらいの向上心は大事だね。

残りの期間、このまま2つの練習だけで終わるのはあれだから、次は王石を使って特訓をしようか。」


真はその言葉に驚き、目を輝かせた。


「王石…!?」


凛はその反応を見て、少しだけいたずらっぽく笑った。


「もちろん、私も王石についてそこまで詳しくもなければ感覚的な面を教えることはできないけど、少しはその力を使う練習もしないとね。」


真はその言葉にワクワクしながら王石を手に取った。

手のひらに伝わる王石の魔力を感じながら、次のステップへ進む決意を固めた。

   今回登場した魔道具について軽く紹介


        〈隠蔽する球(ミスティック・ボール)

形状は野球ボールより一回り大きく、丸い金属製の装置で、中央には結界術と闇魔法の陣が複合的に描かれています。この二つの魔法が融合し、独特の効果を発揮します。

その主な効果は、結界内に入ると外部からの認識を阻害すること。

結界内で起きていることを、周囲の人々は感じ取ることができなくなります。

さらに、この魔道具は起動させると空中に停滞します。と言っても、発動させた高さのままで浮かび、手元で発動させた場合はその高さで留まります。

安物なため、精度や範囲に限界はありますが、特定の目的には十分な効果を発揮するアイテムです。

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